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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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207/653

示し

 松山城陥落に間に合わなかった上杉輝虎。『見殺しにした。』とも言える今回の失態により、このままでは今は上杉方となっている関東の勢力の支持をも失い兼ねない状況に追い込まれた輝虎が放った次なる一手それは……。


真田幸隆「輝虎は今。自らが関東不在の間に北条方に鞍替えした連中の城を攻めています。」

私(村上義清)「『私を裏切ったらどうなるかわかっていますよね。あなたたちを攻め潰すことなんか造作もないことですからね。』」

真田幸隆「ただ本人が居ないとそんなに強くはありませんが……。」

私(村上義清)「そうなんだよね。それが今回わかってしまったんだよね……。」

真田幸隆「ですから殿も狙い目でありますよ。」

私(村上義清)「でも輝虎が春日山に帰って来た瞬間に終わりを迎えることになるけどな。」

真田幸隆「それが狙い目ですよ。」

私(村上義清)「お前のか?」

真田幸隆「いえ。信濃の総意であるかと思います。」

私(村上義清)「利権のほとんどを認めてやってるんだぞ。」

真田幸隆「でも殿が居なければ全てを得ることが出来ますよ。」

私(村上義清)「安・全・保・障って言葉知ってる?」

真田幸隆「しかしもし輝虎が本気で信濃を狙って来ましたら……。」

私(村上義清)「……誰も俺の話なんか聞いてくれなくなるよな……。」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「お願いだから俺の名前使って(上杉陣営の)上野を攻めるのだけはやめてください。」

真田幸隆「(上野の)連中との付き合いは……。」

私(村上義清)「それは続けておいて。越後からの流れが寸断された時の保険になるかもしれないから。」

真田幸隆「わかりました。」

私(村上義清)「それで戦況の方はどうなっておる?」

真田幸隆「はい。輝虎に攻められた城は、特に抵抗することなく再び輝虎の軍門に降っています。」

私(村上義清)「それに対して輝虎は?」

真田幸隆「許しています。」

私(村上義清)「領土の割譲は?」

真田幸隆「ありません。」

私(村上義清)「城主に責任を取らせるとかは?」

真田幸隆「皆。ピンピンしています。」

私(村上義清)「輝虎の兵を城に入れて監視しているんだろ?」

真田幸隆「いえ。そのようなことは無く、北条方から上杉方に変わった以外。降伏前と全く同じ状況にあります。」

私(村上義清)「このいくさの費用って?」

真田幸隆「勿論輝虎の自弁であります。」

私(村上義清)「越中から急ぎ越後に戻って準備をし、大雪の山を越えて関東に入っていくさをして勝ったにもかかわらず。」

真田幸隆「はい。上杉方に入ってくれればそれで善しであります。」

私(村上義清)「でもそれだと……。」

真田幸隆「えぇ。彼が帰ったらまた北条方になると思います。」

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