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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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良かれと思って

私(村上義清)「まだ(関白が輝虎の居る越中に)移動中の可能性もあるだろ?」

真田幸隆「そのことなのでありますが、今回の件。関白様が輝虎に宛てた手紙により発覚しました。」

私(村上義清)「置手紙か何かか?」

真田幸隆「それでありましたら出発地点が(輝虎の本拠地)春日山でありますので、どの船を使ったのかを掴み、追い掛け。引き戻すよう手配すれば済む話なのでありますが、どうやら今回の手紙は関白様が京に戻られてから認めたそうであります。」

私(村上義清)「輝虎が越中に向かったのが7月で。」


 手紙が届いたのは8月11日。


私(村上義清)「結構な強行軍だったな……。」

真田幸隆「手紙が届いた瞬間。春日山では『えっ!関白様越中では無かったの!?』と大騒ぎになったとか。」

私(村上義清)「だろうな。しかし関白も酷いことをやったよな。留守と世話を頼まれた奴らが、このあとどんな目に遭わされるのかわかってやっているよなあいつ……。」

真田幸隆「結果的に逃亡の手助けをしてしまったものもいるでしょうし。」

私(村上義清)「外出の許可を出したばかりか、船の手配もしてしまった。」

真田幸隆「当然、関白様の護衛の任務も命じられていたと思われます。」

私(村上義清)「『これはコッソリ越中に行って、輝虎を驚かせるためだから。』と言われてしまったらどうすることも出来ないからな……。」

真田幸隆「船も輝虎が商売で使っているような正式なものでは無いものを用意させたかもしれませんね。」

私(村上義清)「『費用はこっちで持つ。あとのことは私から輝虎に伝えておくから心配なく。』」

真田幸隆「本来居るべき場所である京に戻るなりネタばらし。」

私(村上義清)「『騙された!』では済まないだろうな。春日山の連中は……。」

真田幸隆「関白様の世話が出来るものとなりますと、当然朝廷とのやり取りが出来るような教養のあるもの。加えて越中遠征に帯同していないと言うことは槍働きでの出世は難しい人物が務めたものと思われます。そんな彼らからしますと、今回の世話役は立身出世の願っても無い機会。関白様の要望に最大限応えるべく励んだ結果が……。」

私(村上義清)「どうするんだろうな。輝虎は?」

真田幸隆「関白様に追っ手を差し向ける?」

私(村上義清)「そんなことをすれば輝虎がどうなってしまうのかわかっているから、関白はあんな行動をとることが出来たのだろうに。」

真田幸隆「関白様に騙された留守居役ですよね。」

私(村上義清)「怒った輝虎が何するか……。」


 小田原城を攻め落とせなかった輝虎は、行く先々で八つ当たり的な略奪を繰り返しながら退却。


真田幸隆「朝廷とのやり取りが出来る人材は貴重でありますので、命が。とはならないと思います。ただ出世につきましては……。」

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