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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
甲斐の虎

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始業時間は朝6時

 村上義清の朝は4時に始まります。

「年寄りだから?」

では勿論ありません。家臣達が朝6時前に出勤して来るからであります。

「朝6時から仕事なんて、家臣に対する嫌がらせにも程があります!!」

いえいえとんでもありません。家臣は毎日城に来る必要はありません。城で仕事をする時にだけ出てくれば良いのであります。それに比べて私はどうでしょう。職場は城です。その城に私は住んでいます。住居と仕事場が同じと言うことは理想的な環境と言えるかもしれません。家族に仕事をしている様子を見せることが出来るため、たまの休日に疲れをとっているだけなのにもかかわらず

「いつも寝転がっているだけで何もしてくれない。」

などの偏見の目に圧し潰されることもありません。ただそういう目で見てくれるのは家族だけでありまして

「家臣はそうは見てくれません。」

少しでもだらけた姿を見せようものなら舐められてしまうことになります。故に私は今日の仕事に備え、家臣が出勤する前に全ての準備を整えておく必要があるのであります。

「それでもスタート時間が早過ぎるよ!!」

と思われるかもしれません。確かに早いかもしれません。しかし今から言うことを聞いたらどう思うでしょう。それは……。

「終業時間は午後2時であります。」

1日2食でありますので昼休みはありません。それでも8時間で仕事は終わります。

「そう言いながら午後2時の少し前に急な仕事を言いつけて帰ることが出来ないようにするのでしょう。」

いえいえそのようなことは致しません。ここは城です。私の住居です。本来でありましたらリラックスすることが出来る場所であります。でもそれを妨げるものがあります。それは家臣の存在です。

「彼等が居る。」

と言うことは、いつなんどき私の部屋にやって来るか分かりません。彼らが訪ねて来る時は仕事で来ます。仕事で来る彼らにぞんざいな扱いをすることは出来ません。正直な話をしますと

「早く帰って欲しい。」

 

 城を出た後の家臣は自由時間となります。翌日、城に来なくて良いのであれば多少の夜更かしも許されます。勿論自己責任であることは言うまでもありませんが。一方、私はどうでしょう。毎日必ず家臣が出勤して来ます。それに私は対応しなければなりません。そう。仕事が終わった瞬間に翌日の準備が始まるのであります。そのためにも私は夜の8時には床につき、翌朝の4時に起き。6時前にやって来る家臣を迎えるのであります。


 こう書いていきますとここはホワイト企業の鏡。と思われるかもしれませんが、21世紀の今と異なる点があります。それは何かと言いますと

「自分が失敗したしないにかかわらず情勢の変化により、簡単に自分の首が飛んでしまう。」

ことであります。これは比喩ではありません。文字通りであります。人材募集しております。


 朝6時から打ち合わせ。そこで一頻りやりとりをしました後、私は朝食の時間となるのであります。

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