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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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隙あらば

 今川氏真の三河入国以来、松平元康との戦闘が激化する東三河南部。そこで気になるのが、東三河北部奥三河地域の動向。隙あらば領国信濃と接するこの地域を狙おうと目論む村上義清でありましたが……。


春日虎綱「奥平親子は共に今川方に留まっています。」

私(村上義清)「6年前のようにはなっておらぬか。」

春日虎綱「はい。」


 遡ること6年前。三河において織田と今川の代理戦争が勃発。この影響は奥平家にも波及。当主の定勝は今川に忠誠を誓うのに対し、嫡男の定能が反逆。一時、定能は高野山へ追われる事態に発展したのでありました。ただ翌年、定能は赦免され以後、親子共々今川方の一員として活動を続けて来たのでありました。


私(村上義清)「直接いくさの場とはなっていないからな。」

春日虎綱「いえ。そうとも言えないところがあります。」

私(村上義清)「なんだ?申してみよ。」

春日虎綱「はい。奥平の本貫地は作手ほか奥三河にありますが、そのほかに今川から山中郷を付与されています。」


 山中郷は今の愛知県岡崎市南東部に位置する地域。


春日虎綱「その山中郷は今。松平元康が実効支配しています。」

私(村上義清)「飛び地の管理はなぁ……。」

春日虎綱「義元が健在。もしくは三河が安定していればそれで構わないのでありましたが、元康がああなってしまいましたし、その元康の本拠地があろうことか岡崎でありますので。」

私(村上義清)「横領された側(奥平)が横領した側(松平)の味方になることはあり得ないな。」

春日虎綱「はい。この事態に氏真は奥平親子に対し、替地を用意した模様であります。」

私(村上義清)「直轄領から供出したのか?」

春日虎綱「いえ。松平方に寝返った領主の飛び地から捻出したようであります。」

私(村上義清)「そういう支配の仕方もあるのか……。」

春日虎綱「(変な知恵を植え付けてしまったかな?)加えて先年寝返った前歴があります定能に対し氏真は栗毛の馬を与えています。」

私(村上義清)「繋ぎ止めに躍起になっているな。」

春日虎綱「それだけの経済力が氏真にあることを奥平親子に示しているのかもしれません。」

私(村上義清)「同じことを元康が行う力は無い?」

春日虎綱「氏真方優位に進んでいる状況で、奥平が要求してくるであろう山中郷の返還を元康が呑むことは出来ないでしょうし、それどころか今川方にその山中郷の百姓を調略される始末でありますので。」

私(村上義清)「うちが奥三河に入り込む隙は?」

春日虎綱「山中郷規模の耕作地を用意することが出来れば不可能ではありませんが、そんな土地を用意することが出来るのであれば。」

私(村上義清)「今居る家臣の給与を上げてやれ?」

春日虎綱「そこまでは申しませんが、現状。奥平が今川方に留まっていること。うちと今川の関係が可もなく不可もないこと。今川と松平のいくさがどうなるか見えないことを勘案しますと、今手を突っ込むことは得策では無いと思われます。」

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