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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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甲斐の国

 1559年に発生した水害により甲斐の国では飢饉が発生。


私(村上義清)「そんなに厄介なのか?」

春日虎綱「はい。甲斐の国の中央部に大きな盆地がありますが、どうやら昔。そこは湖であったそうでありまして、いつどこが水の被害に遭うことになるのかわかりません。それ故定住が困難な場所でありました。」


 平安時代。甲斐は河内、伊賀同様朝廷から「堤防料」が支出されていた国。


春日虎綱「信虎様が国を統一し、国の中央部に位置する今の躑躅ヶ崎の館に拠点を移してから治水整備を始め、晴信様。今の義信様へとその事業は引き継がれています。」

私(村上義清)「20年か。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「それだけの月日を掛けても今回の水害を防ぐことは出来なかった。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「割に合わない気がしないのでもないのだが。」

春日虎綱「否定はしません。否定はしませんが、甲斐には特産品となるものがありません。カネの力でよそから物を買い入れるための原資がありません。」

私(村上義清)「自給しなければならない。」

春日虎綱「はい。ただ甲斐には広大な平地が広がっています。しかも水が豊富に存在します。」

私(村上義清)「その豊富な水が……。」

春日虎綱「そうです。その水を制御をすることが出来ていません。」

私(村上義清)「費用もバカにならないだろう。」

春日虎綱「はい。しかしそれをしなければ生まれて来る子全てを生かすことは出来ません。やらざるを得ません。」

私(村上義清)「その原資が金であり、外に領地を求める要因となった。」

春日虎綱「はい。しかし殿に敗れて以降、外征は行っていません。ひたすら領内の整備に充てていました。」

私(村上義清)「それが2年前の水害で頓挫した。」

春日虎綱「治水事業は続けていく模様であります。ただそれだけではやっていくことが出来ないことも痛感していることかと思われます。」

私(村上義清)「それが今回の武蔵遠征であり、箕輪衆への調略に繋がった。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「隙を見せたら攻めて来るな。」

真田幸隆「そうですね。ただ武田の家中を探ってみますと当主の義信及び重臣の飯富も含め、こちらの領土を奪おうとはしていない模様であります。南は同盟者である今川に東も同盟者である北条。西は我らとなりますと、進出するなら西上野。」

私(村上義清)「輝虎が居るよな。」

真田幸隆「彼が居る時は良いのですが、居ない時は正直大したことありませんので。」

私(村上義清)「どうする?」

真田幸隆「お手並み拝見で宜しいかと。ただ武田が上野を目指すとなりますと……。」

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