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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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平和を謳歌していたわけでは

私(村上義清)「気になる動きとはなんだ?申してみよ。」

真田幸隆「はい。氏康が反転攻勢を仕掛けている部隊に、武田の軍勢が加わっています。」

私(村上義清)「武田は輝虎が小田原を包囲した時にも援軍を出していたと思うが。」

真田幸隆「そんな見せかけの規模ではありません。」

私(村上義清)「当主自ら?」

真田幸隆「いえ。それはありません。ありませんが。」

私(村上義清)「ハッキリ『私は北条方です。』とわかるだけの軍勢が関東に入っていた?」

真田幸隆「はい。ただそれだけでしたら武田と北条は同盟関係にありますのでわからないこともありません。同じく北条と同盟をしている今川にしましても三河の情勢が落ち着いていましたら援軍を出していたことと思われます。」

私(村上義清)「それならば別に構わないのではないのか。こっちの領土を狙っているわけではないのであるから。」

真田幸隆「そうとも言えない事情がありまして。」

私(村上義清)「なんだ?申してみよ。」

真田幸隆「武田が(西上野の)箕輪衆を勧誘している模様であります。」

私(村上義清)「それは本当か!?」

真田幸隆「はい。どうもその中心となっているのが飯富虎昌とか。」

私(村上義清)「領土の拡大を狙っている?」

真田幸隆「はい。」

私(村上義清)「(武田と隣接している)諏訪やお前のところはどうなんだ?」

真田幸隆「問題があるとするならば私になるかと。」

私(村上義清)「……わかった。仮にいくさになった場合の備えはどうだ?」

真田幸隆「(武田と戦った)10数年前とは情勢が異なります。その間こちらは信濃統一を目指し実戦を重ねて来たのに対し、武田は平和を謳歌していましたので攻めて来られましても問題はありません。」

私(村上義清)「平和を謳歌したとなれば、いくさにお金を費やさなかった分を軍備の増強に回すことが出来たとも考えることが出来るのだがその辺りはどうだ?」

真田幸隆「甲斐は水害が頻発する場所。しかも稲作を基盤に置いていますので、なかなか蓄えを増やすことは難しいと思われます。」

私(村上義清)「そうか?虎綱。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「金を産出することが出来てもか?」

春日虎綱「はい。金は治水対策に使われることになります。ただ治水対策をしたからと言ってすぐに収入が増えるわけではありません。治水対策は何事も無ければ収穫を維持することが出来るようにすることが目的でありますので。そこから新田を開発し、富を増やすことに結びつけるのには、かなりの年月を要することになります。」

私(村上義清)「まだそこまでには至っていない。」

春日虎綱「はい。そこに来ての今回でありましたから。」

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