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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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最初は西国へ

私(村上義清)「残ったのか置き去りにされたのか。」

真田幸隆「関白様御本人の意志のようであります。」

私(村上義清)「ただ軍事的裏付けがないことにはどうすることも出来ないだろう。」

真田幸隆「そのどうすることも出来ない状況を打破するために関東に来たそうでありまして。」

私(村上義清)「どういうことだ。」

真田幸隆「京において公家は今。貧窮に喘いでいることはご存知のことかと。」

私(村上義清)「あぁ。人に会うにも着るもの全てを質屋に入れてしまったため、蚊帳を身体に巻き付けて出て来た。なんて話を聞いたことがあるが。」

真田幸隆「その原因を作ったのは。」

私(村上義清)「俺みたいな輩が居たからだろ。」

真田幸隆「はい。将軍家が混乱していることを良いことに、殿のような不届きなものどもにより公家領が簒奪されてしまったからであります。」

私(村上義清)「それと関白の関東入りは関係しているのか。」

真田幸隆「はい。関白様は公家領を失うことになったのは『安全保障の全てを将軍家に委ねてしまったことにある。』と結論付けたそうにあります。」

私(村上義清)「まぁそうだな。将軍家自身が守護大名の助け無しには成り立たない状況に陥っているからな。」

真田幸隆「当初関白様は西国へ行こうと考えていたようであります。」

私(村上義清)「前例があるからな。」


 これより50年前、将軍復帰を模索していた足利義尹が頼ったのは西国山口の大内義興。彼の活躍により将軍復帰を果たす。


私(村上義清)「でもさ。」


 大内義興が京に居る間に領内が騒がしくなってしまったため義興は撤退。後ろ盾を失った義尹改め将軍義稙は堺や淡路を流転しながら再起を図るも見捨てられ将軍職をおわれたのでありました。


私(村上義清)「今、西国でそんな余裕のある奴が居るのかな。」

真田幸隆「大内も無くなってしまいましたからね。」

私(村上義清)「京に兵を派遣するだけの財力を有し、当主自らが留守にしていても領国は安泰。それでいて忠誠心に揺るぎがない人物。」

真田幸隆「少なくとも殿に声を掛けることは無いでしょうね。」

私(村上義清)「そうなんだよね。京に兵を常駐させるだけの財力も無ければ、カネの切れ目が縁の切れ目。しかも当主が留守にしていなくても何をして来るのかわからない家臣に囲まれている。」

真田幸隆「その最たる人物と今。こうして話しているのでありますから。」

私(村上義清)「少しは否定してもいいんだよ。」

真田幸隆「そんな時代にありまして、関白様の前に現れたのが上洛した長尾景虎(当時)でありました。」

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