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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
越後の龍

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長尾景虎になら

 長野業正の居城箕輪城があるのは今の群馬県高崎市。一方、長尾景虎が関東における拠点と定めた厩橋城があるのは高崎市の隣の前橋市。利根川に挟まれているとは言え両城の間は直線にしてわずか10キロ。


私(村上義清)「関東公方が相手ならばそのまま利根川の東を下って行けば良いし、相模を目指すため対岸に渡るにしても、渡ることの出来る場所はほかにもある。」


 今でこそ利根川は銚子に向け流れていますが、当時は今の東京湾に流れ込んでいた河川。


真田幸隆「しかし長野業正が北条氏康の傘下に収まっている以上、景虎も放っておくことは出来ませんし、裏切られた張本人である憲政が許さないでしょう。」

私(村上義清)「それならばうちに(挟撃の)話があっても良かったような。」

真田幸隆「相手にされていないのでしょう。」

私(村上義清)「それはそれで寂しいな。」

真田幸隆「業正は業正で西上野を治めているとは言え、今。北条の傘下に入っていることからもわかりますように彼独力で西上野を掌握するだけの力はありません。」

私(村上義清)「危機が訪れたらバラバラになる。」

真田幸隆「はい。血縁関係で繋がりを強化してはおりますが、旗色が悪くなった瞬間どうなるかにつきましては。」

私(村上義清)「皆が皆、自分が生き残ることを優先することになる。」

真田幸隆「今は業正に従っているほうが安全だから従っているだけの話であります。」

私(村上義清)「北条の動きは。」

真田幸隆「(氏康の甥足利義氏が務める)関東公方が小田原に避難したことでもわかるかと。西隣の信濃は景虎と同盟関係にある我が領土でありますので、業正がそこからの支援を期待することは出来ません。」

私(村上義清)「自分で何とかするしかない。しかし独力で景虎と戦うだけの力も無い。」

真田幸隆「当然景虎は(長野業正が束ねる)箕輪衆の切り崩しに取り掛かると思われます。」

私(村上義清)「このままでは滅ぼされてしまう。」

真田幸隆「かと言いまして頭を下げるにしましても景虎の背後には山内上杉憲政が控えています。」

私(村上義清)「『(頭を下げに来た長野業正を山内上杉憲政があまり上品ではない言葉を駆使している姿を想像してください)』と言ったところか。」

真田幸隆「憲政様は教養のあるおかたでありますので、そのような汚い言葉は使わないかと思われます。」

私(村上義清)「一応私も殿上人。」

真田幸隆「殿はカネで買い取っただけでしょう。」

私(村上義清)「(たぶん皆そうだと思うのだけど……。)」

真田幸隆「まぁ。落としどころとしましては憲政の後継者である景虎に頭を下げるのが無難かと。景虎にすれば入口の上野で戦力を消耗させたくはありませんし、憲政にしましても景虎が居なければ北条を倒すことは出来ませんので。」

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