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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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家督相続

 武田義信の佐久と山内上杉の志賀を除く信濃のほぼ全てと、厳密に言えば美濃の一部である木曽谷を勢力圏に収めた村上義清。そんなある日……。


真田幸隆「殿!隠居するとは本当のことでありますか!?」

私(村上義清)「……するよ。」

真田幸隆「何か家臣には言うことの出来ない大きな失敗でも……。」


 先の北条氏康のように飢饉と、飢饉に対応するため行った借金の棒引きの責任を取る形で息子に家督を譲り表舞台から退きつつも大御所として政務を執り続けるようなことは21世紀の今でも行われていること。


私(村上義清)「えっ!?……何か落ち度があったら教えて……。」

春日虎綱「(あなたの)存在。」

真田幸隆「確かに。殿が居なかったら……。」

私(村上義清)「今頃俺では無く(武田)晴信が信濃を制圧していたんだろ。そしてお前らはその家臣で居続けることが出来た。と言いたいのだろ。」

春日虎綱「御意。」

私(村上義清)「わかったよ。うちは幸か不幸かコメ作りを諦めていたことが功を奏したのか、飢饉とは無縁。何かあった時のための蓄えもあるし、仕入れるための銭もある。……対外関係についても、関東の動きが気になるぐらいで、これと言った危機があるわけでもない。」

真田幸隆「そうなりますと家臣による排斥運動により。」

私(村上義清)「それをされて俺を追い込むことが出来るのはお前たちだろう。」

真田幸隆「そうでしたね。」

春日虎綱「しかしそれをやるならば隠居などと言う穏やかな選択はしませんが。」

真田幸隆「確かに。」

私(村上義清)「……頼むから止めてくれよ……。そうではなくて、嫡男(国清)が元服しただろ。」

真田幸隆「長尾景虎の猶子になるばかりか、養女(越前朝倉義景の娘)との婚姻が決まった。」

私(村上義清)「そう。これで越後との関係も盤石。」

春日虎綱「ただ……あまりにも若過ぎるかと……。」


 数えにして14歳。


私(村上義清)「確かにそうではあるが、俺の年齢考えて見てくれよ。」


 もうじき還暦。


真田幸隆「もうこの世を去っていてもおかしくない年齢ですからね。」

私(村上義清)「お前もヒトのことを言えない齢だってこと忘れるなよ。」


 真田幸隆は47歳。人間50年の時代。


真田幸隆「うちは息子(信綱)が独り立ちしていますので。」

私(村上義清)「うちも国清より年上のものもいるのだが……。」

真田幸隆「ただ嫡男では……。」

私(村上義清)「正妻(小笠原長棟の娘)の子となると国清。……今後、信濃を治めることを考えても(信濃守護家の)小笠原の血が流れているほうが良いであろう。それに……。」

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