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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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信濃?それとも

 「一週間以内に進退を決めさせよ。」

の村上義清からの指示を受けた真田幸隆。普段は即座に動く幸隆でありましたが……。


真田幸隆「殿。」

私(村上義清)「どうした。」

真田幸隆「1つお尋ねしたいことがあります。」

私(村上義清)「申してみよ。」

真田幸隆「木曾義康は如何いたしましょうか……。」


 木曽義康の本拠地は木曽川上流部一帯の木曽谷。


私(村上義清)「ここ(松本平)と隣接しているのだから当然確認しなければならないだろう。」

真田幸隆「しかし殿。」

私(村上義清)「どうした。」

真田幸隆「殿は信濃守であらせられますよね。」

私(村上義清)「そうだが、今更どうしたのだ。」

真田幸隆「……木曽谷は……確か信濃では無く、美濃ではないかと思われるのでありますが。」

私(村上義清)「えっ!!そうなの!?」


 21世紀の現在。木曽谷一帯は長野県でありますが、木曽川流域として見た場合、美濃の一部と見るのが自然な流れ。実際、道を開いたのは律令時代の美濃の役人。以来、木曽谷は美濃国となっていたのでありました。しかし……。


私(村上義清)「旭将軍(木曾義仲)は信濃を自称しておったが。」

真田幸隆「彼の支援者が信濃であった。と見たほうが宜しいのではないかと。」

私(村上義清)「そうなると木曾を傘下に収める名分は無い……。」

真田幸隆「ただそれにつきまして、私が生まれる少し前の頃から、これまで『美濃州恵那郡木曽庄』だったものが、『信濃州木曽荘』と記す文書も出ているようでありまして……。」

私(村上義清)「となると信濃守の影響を及ぼすことも。」

真田幸隆「はい。加えて当主の木曾義康は、(信濃の)小笠原や諏訪と友好関係を結んでいました。ただ小笠原も諏訪も今は独立した勢力ではありません。」

私(村上義清)「今そこに居るのが私。」

真田幸隆「ええ。木曾は殿のみならず美濃や飛騨とも隣接していますし、美濃につきましてはつい最近まで当主が親子喧嘩していましたので。」


 斎藤道三と義龍のこと。


私(村上義清)「東側の安全を確保しておきたかった。」

真田幸隆「ただ美濃の喧騒は現在収まっています。今、木曾義康が脅威に感じているのは……。」

私(村上義清)「小笠原を滅ぼした俺……。」

真田幸隆「『美濃である木曽谷を無理やり信濃にし、攻め滅ぼそうと企む輩』とでも思っているかもしれません。」

私(村上義清)「……となると使者を送ったところで……。」

真田幸隆「無視するか突っぱねるかになるかと。」

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