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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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単なる

私(村上義清)「(……もしかしてまだ幸隆の手が回っていない……。)」

春日虎綱「とりあえず町は無事なようであります。」

保科正俊「それにしても静かですね。」

春日虎綱「当主が討ち死にしたことすら伝わっていない……。」

保科正俊「いや流石にそれは無いであろう。あそこを見て見ろ。」

春日虎綱「そうですね。(塩尻峠とを結ぶ)繋ぎの陣が見えますね。」

保科正俊「中には……。」

春日虎綱「誰も居ないと思われます。たぶん時間稼ぎのためでありましょう。」

私(村上義清)「幸隆がまだ松本平に入っていない……。」

春日虎綱「如何なされましたか。」

私(村上義清)「……と言うことはここ(松本平)は……。(単なる敵地。このまま峠を駆け下り松本平に入った場合、どこに敵が潜んでいるか定かではない。こちらに被害が出ることも覚悟しなければならない。加えていくさになるわけであるのだから松本平の民と町を破壊することにもなり兼ねない。そうならないように郊外に兵を出すだけの余裕は今の小笠原には無い。抵抗を試みるとするならば防御に長けている城とその城下。こちらの被害が甚大なものになるばかりか、首都としての機能を失うことになってしまう。それだけは避けなければならない。幸隆が兵を展開させているだけであれば、それを止めれば済んだのであるが……。)」

保科正俊「殿。如何なされますか。」

私(村上義清)「……まず物見を出す。」


 塩尻峠への繋ぎのため造られたであろう小笠原方の陣の様子を確認するため物見を出す村上義清。しばらくして……。


「申し上げます。陣とその周囲に敵はおりませぬ。」

春日虎綱「やはり時間稼ぎのためでありましたか。」

私(村上義清)「保科殿。」

保科正俊「はっ!」

私(村上義清)「そなたはここに残り、松本平全体を注視せよ。もし何か動きがあればこれ(狼煙)で合図を送ってくれ。」

保科正俊「わかりました。」

私(村上義清)「虎綱。」

春日虎綱「はっ!!」

私(村上義清)「そなたは私と共にあそこの陣へ向かう。」

春日虎綱「はっ!!」


 既にもぬけの殻となった敵陣への移動を開始した村上義清。なぜ槍働きを期待することの出来る保科を残し、春日虎綱と行動を共にする選択をしたのか。


私(村上義清)「(ここからは完全なる適地……。物見は誰も居ないと言っていたが、土地勘は向こう(小笠原方)にある。もし敵が潜んでいるのであれば、向こうに絶対の自信がある場所で仕掛けてくる。そうなった時、役に立つのは攻撃力では無い。必要なのは……逃げる能力。)」


 細心の注意を払いながら無事、小笠原方が放棄した陣跡に到着。すぐさま火の手となるものが無いか確認に走らす村上義清。


春日虎綱「何かを仕掛けられた様子は見られませぬ。」


との報告に安堵するも……。

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