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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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集積地

 奈良時代の終わりに、今の上田から国府が移って以来。信濃国の中心として栄えて来た松本平。武士が台頭し、国府の機能が形骸化した鎌倉時代以降も守護の館が置かれた当地には日本の出先機関が集中すると同時に信濃国の首都としても機能して来たこの松本平が、もし真田幸隆の手により火の海と化してしまっていたら……。


私(村上義清)「ただでさえ広く、しかも数多の山により地域が細かく分断されている信濃を治めることは不可能……。」

春日虎綱「小笠原から奪わなければならない場所ではありますが……。」

保科正俊「人と物。それに情報が集まらない。不安定な場所となってしまいましては意味がありませぬ。」

私(村上義清)「信濃に京からの情報が入らないことを良いことに、他の国と繋がりを持つものが現れるやもしれぬ……。」

春日虎綱「その一番手が殿なのでは……。」

私(村上義清)「……否定はせぬ。ただこれからは私が信濃を治めねばならぬ。そのためにも松本平を灰にするわけにはいかない。とにかく急ぐぞ。」


 塩尻峠を駆け上がる村上義清。


私(村上義清)「幸隆が上原城を出たのはいつだ。」

春日虎綱「殿が塩尻峠に向かってすぐでありました。」

私(村上義清)「……と言うことは1日以上経っていると言うことか。」

春日虎綱「はい。」

私(村上義清)「ただあいつのことだから……。」

春日虎綱「全て手配済み。あとはそれらを動かすだけの準備はしていたと思われたほうが……。」

保科正俊「玉薬の管理は真田様が……。」

私(村上義清)「勿論好き勝手に使わせているわけではないのだが、いつどこでいくさになるやもわからぬ故、事後承諾を認めている。」

保科正俊「……と言うことは保管場所も……。」

私(村上義清)「葛尾以外にもある。ただその場所は虎綱にも教えてはいない。」

保科正俊「真田様には。」

私(村上義清)「勿論知らせている。」

春日虎綱「ある意味最も使わせてはいけない奴に……。」

私(村上義清)「……『いくさのみ』を守ってくれているので……。」

保科正俊「しかし此度は……。」

私(村上義清)「裏目に出てしまうかもしれない……。」


 塩尻峠を越え、眼下に松本平が目に入り始めた村上義清。そこで……。


保科正俊「見た限り何も……。」


 特に火の手が上がっているわけでもなければ、灰燼と化したわけでもない様子。


春日虎綱「ただ当主の(小笠原)長時が討たれたにしては変化が無さ過ぎるようにも見えるのでありますが……。」

保科正俊「不気味なまでに静かでありますね。」


 どうやら真田幸隆の手により、破壊された様子は見られない松本平に安堵する村上義清。ただそうなると今度心配になるのは……。

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