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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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頭を下げる

 この間にも塩尻峠での戦いは続いていました。大将。ここで言う大将とは勿論。背後を気にするあまり、目の前の部下への指示を怠る体たらくを曝け出してしまった転生した今の村上義清のこと。そんな中にあっても配下の諸将は「いつものことですよ。」と意に介すことも無く、黙々と仕事をこなすのでありました。


「殿!小笠原長時は如何なされますか!!」

の伝令。フト目を見やると峠に陣取っていた小笠原の軍勢は寝込みを狙われたこともありほぼ壊滅状態。


私(村上義清)「長時の行方は!?」

伝令「撤退する気配未だなく踏み留まっております!!」


 既に組織的な抵抗をすることは出来ない。このまま留まったとしても状況が良くなる見込みはない。ただ被害に遭った兵のほとんどは鎧もつけずに寝込んでいた他の国衆たち。自らの手勢に問題はない。背後は小笠原長時の本拠地である松本平。無事撤退することは十分に可能。にも関わらず峠に留まり続けている。と言うことは……。


保科正俊「小笠原長時は高遠(頼継)の後詰に最後の望みを託している。」

私(村上義清)「……。」

保科正俊「如何なされますか。」

私(村上義清)「踏み留まり続けるのであれば(退路を)塞ぐだけだ!!」


 村上義清は残った小笠原長時本隊に兵を集中させると共に、隊を分け。間道を通り小笠原長時の退路を断つように指示。ただ……。


保科正俊「力攻めとなりますと、兵の数もさることながら地の利は未だ小笠原にあります。加えて山でのいくさとなりますと、殿が得意としています集団による種子島に弓。更には長槍と騎馬隊を機能させるには不向きであります。『小笠原を逃がさない。』『小笠原も退かない。』となりますと相応の被害を覚悟しなければなりませぬ。」


 総攻撃を出すことが出来ない村上義清。武田晴信とのいくさ以降、圧倒的な兵力差を使っての包囲により降伏させて来たのでありましたが、今回は自らの手勢のみ。加えて相手は信濃守護の名門小笠原長時。『頭を下げるぐらいなら、ここで一戦交えて華々しく散ってくれよう。いやいや逆に打ち破って見せよう。』の鼓舞に部下の士気も高まる一方。加えて……。


私(村上義清)「見ようによっては……。」


 高遠頼継が春日虎綱と四郎勝頼を追い掛け回している。徐々に山側へと……。このまま総攻撃を仕掛けている最中。高遠頼継が塩尻峠に向かって来たとなると……。


私(村上義清)「退路を断たれることになるのは……。しまった……。本当に(高遠)頼継次第のいくさになってしまった……。」


 小笠原長時隊を取り囲むも、背後が気になり、身動きを取ることが出来ない状況に追い込まれた村上義清。じりじりと時間がだけが過ぎて行く……。そこに……。

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