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旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。  作者: 俣彦『短編ぼくのまち』
統一

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111/653

鬨の

 『小笠原長時。諏訪湖を見下ろす塩尻峠に陣を構築。至急御出馬願う。』

高遠頼継は急使を葛尾城に送ると同時に、諏訪湖南方に兵を進めるのでありました。これに対し、


真田幸隆「ゆっくり進みましょう。」

私(村上義清)「大丈夫か。」

真田幸隆「上原城には諏訪の衆がいます。彼らの強さを知らぬものは(ここ信濃には)おりませぬ。仮に長時の陣に頼継が合流したとしてもそうそう落ちることはありませぬ。むしろ……。」

私(村上義清)「申してみよ。」

真田幸隆「恩賞を餌に(頼継を)長時の陣に襲い掛からせるのも手かと……。」

私(村上義清)「試してみるか。」


 『敵は強大故、殿の出馬をお待ち申し上げます。もし小笠原が上原城を攻めて来ましたら後詰致します。』との高遠頼継からの回答。


私(村上義清)「自分のところに攻め寄せて来ることは心配していないのかな。」

真田幸隆「誘っている長時が頼継を狙うことは無いでしょう。もしくは……。」

私(村上義清)「俺が来るのを待ち構えている。」

真田幸隆「可能性はあります。ただ上原城に何かあったらすぐ向かうことが出来るよう準備しながら移動を始めましょう。」


 村上義清は頻繁に行軍を休ませながら、ゆっくりと大門峠を越えたのでありました。一週間の月日を要して。


真田幸隆「殿。長時の様子がわかりました。」

私(村上義清)「申してみよ。」

真田幸隆「仁科盛能が長時の陣を退去しました。」


 仁科盛能は信濃北西部安曇郡の有力国人で小笠原長時の舅。そんな彼がなぜ長時と袂を分かつことになったのか。


真田幸隆「諏訪の領有について揉めたとのことであります。」

私(村上義清)「もう奪った気になっているのか。あいつらは。」

真田幸隆「そのようであります。残ったものにつきましても長時直属のものが少ないこともありましてか、思うように軍令が届いていない模様であります。加えて塩尻峠に着陣してから一週間。そろそろ飽きが……。」

私(村上義清)「早過ぎないか。」


 一方の高遠頼継は。


真田幸隆「矢のような催促が頻繁に届いております。」

私(村上義清)「でもこのまま大門峠に居たら、(厭戦気分が蔓延している)長時のほうが先に陣を引き払うかもしれないな。」

真田幸隆「そこを頼継が襲い掛かれば。」

私(村上義清)「恩賞第1位間違いなしだな。」

真田幸隆「しかしそれを……。」

私(村上義清)「やらせるわけには……。」

真田幸隆「御意。」


 翌日。朝日が昇ると同時に小笠原長時が陣を構える塩尻峠の麓から


『一気にかたをつけるぞ!!』

の号令を合図に一斉に上がる鬨の声。この声の主は……。

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