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少年Sの怪奇談

作者: 谷村 健二

「ねぇ、怖い話知らない?」


そんな言葉を唐突に投げかけられる。


学校の教室、窓側の席で物静かに借りている本を読んでいた俺は目線を声のした方へと向けるとそこにはクラスメイトの女子が二人立っていた。


「知らない、別の人に話を聞いた方がいいよ」

「でも颯太君て見える人なんでしょう。だったら何か話の一つでも知ってるんじゃない」


噂とは中々消えてくれないもので、以前に同級生のそういった相談に乗った事をきっかけに俺の実家が神社である事も災いしてかそういう噂が広まってしまったみたいだった。


俺が只の噂だよと話しても彼女達は俺の実家の事やら何やらを理由に中々引いてくれない


「わかった。聞いた話でよければ一つ話をしよう」


そう言って根負けした俺はとある出来事を二人に聞かせてやることにした。


「これは一人の子供が体験した不思議な話だ・・・」




それはある夏の出来事。その子供は夏休みの宿題の読書感想文を作る為に題材となる本を探しに町の図書館へと向かった。


図書館は町中にある少し小高い山の上にあって、少年はそこを目指し山道を登っていく

山道は不思議と夏だというのに暑くなかった。


むしろ少し肌寒くすら感じる程で日差しも両脇に並び立つ木立に遮られ薄暗く不気味な雰囲気であったという


子供は道を足早に駆け上ると図書館へとたどり着く。その図書館は例えるならひと昔前の木造の学校を彷彿とされる作りであった。


正面の両開きの戸を見ると開館の札がぶらさげられていたので、子供は戸を開き中へと入る


中に入り少し進むと受付のような場所がありそこには一人のショートカットで年若いのに白髪をした女性が居てこちらに気づくと話かけてきた。


「ようこそ、可愛らしいお客さんね。どんな本を探しに来たの?」


子供はその女性に読書感想文の本を探しに来た事を話すと彼女はこの図書館の司書をしているからと一緒に探してくれる事となった。


いくつかの本棚を通り過ぎて彼女はとある本棚の前で立ち止まると何冊か本を選んでくれて、彼女は何かあったら呼んでねと言って受付に戻って行った。


子供は題材の本を決める為に近くに置いてあるテーブルで本を読み始めた。


すべての本を読み終わり近くの窓に目を向けると外はすっかり夕暮れとなっていた。


そろそろ帰らなくてはと一冊の本を選んで受付に行きこの本をお願いしますと借りる手続きをしてもらった


図書カードに名前を書いて手続きを終えた子供はありがとうございましたと礼を告げ図書館を後にしようとしたその時、彼女はこう言った。


「帰り道は絶対に道を戻ってはダメよ。まっすぐお家に帰るの、何が起きても」


お姉さんとの約束ねと言われて分かったと言い、子供はバイバイと手を振って図書館を後にした。


彼女は子供が見えなくなるまで小さく手を振り返してくれていた。

子供は来た道を戻っていく。


山道は夕暮れという事もあってかより暗く感じられ風で揺れるざわざわとした木立の音と遠くの方で聞こえるカラスの鳴き声がいつもの日常から離れた印象を与える


ふと道の途中で後ろから何かが聞こえる。

その声は後ろからどんどんこちらに近づいてくるようだった


子供は声が気になったがお姉さんとの約束もあり振り返る事無く駆け足になり道を進む。


あと少しで山道を抜けるという所で子供は気づいてしまう。


後ろから聞こえる声があのお姉さんの声に似ている事とそして


「おーい、おーい、まってー」


子供はその声に後ろを振り向いてしまう。だがそこにいたのは


「やっとこっちみてくれた」


それはあのお姉さんではなく2mはあろうかという身長、異様に伸びた両腕と地面に着くまでに伸びた黒髪をしたかろうじて人であるのだろうかと思う異形の姿であった。


子供はそこで意識が途切れる

気が付いた時には子供は自宅で布団に寝かされていた。


聞いた話では子供はあの山道の入り口の所で倒れていたそうで道を通りがかった近所の人が発見し、ただ寝ている様に見えた所から家まで送ってくれたんだそうな


用心のために明日病院に行きましょうと母に言われ再び眠りに付こうとした時、枕元にあの図書館で借りた本があることであれは本当に起きた出来事であったのだと実感したそして


「その子に手を出さないで」


気を失う直前にあのお姉さんの声が聞こえた気がしたのを思い出し眠りに付くのであった


数日後、読書感想文を書き終えた子供はあの道を一人でまた行くのは怖いので母に図書館に一緒に来て欲しいと話すと不思議そうに母はこう言った。


「何を言ってるの?あそこの図書館は半年前に老朽化で廃館して取り壊されてるでしょう」




話終えると二人の女子は変に盛り上がってしまっているが、時計を見ると休み時間はあと10分程で終わろうとしている。


午後の授業の準備をすると言うと二人はありがとうねと言い自分の席に帰って行く


俺は読んでいた本に栞を挟みふと本の最後のページに挟まれたそれを一瞥するそこには


草刈颯太と書かれた古びた図書カードがあった

自分が思いついた物語を形にしてみました

読んで頂きありがとうございました

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