せっかくの異世界7
アヤカは興奮して次々に翻訳アプリを使っている。
「あっ!あった魔法について書いてある!」
アヤカはカシャカシャとそのページを写真に撮ると
「なになに…魔法は…えっー!魔族しか使えないの!」
衝撃の内容に叫び声を上げると、バーバラが部屋に駆けつけて来た。
「お嬢様!どうなさったのですか!?」
アヤカは急いで携帯を隠すと…
「な、なんでも無いの…ちょっと本を見てたら落としてしまって…ホホホ…」
しおらしく笑ってみると…
グゥー
アヤカのお腹が鳴った…
「ふふ…お嬢様、朝食だけでは足りませんでしたか?」
バーバラが可笑しそうに笑うと
「あはっ…美味しかった直ぐに食べちゃって…」
恥ずかしそうにお腹をさすると
「ノエルさんに何か用意出来ないか聞いてきますね」
バーバラが部屋を出ようとすると
「私も行っていいかな?」
バーバラに声をかけると
「お嬢様が…キッチンにですか?」
バーバラが大きい目をさらに開けると
「やっぱり駄目かな…」
アヤカがしゅんとすると…
「いえ!大丈夫です!行きましょう!」
バーバラが急に元気になると、アヤカを連れてキッチンへと向かった。
アヤカはバーバラの後を大人しく付いて行くと、前から他のメイドが姿を見せた。
アヤカに気がつくとサッと顔色を変えて壁に張り付き頭を下げだした…。
「えっ!」
アヤカはキョロキョロと周りを確認するが自分とバーバラ以外人の姿は無い。
(あれって…私にしてるのかな?)
アヤカは頭を下げるメイドを見ていると、メイドの一人がチラッとこちらを見た、アヤカと目が合うと。
「も、申し訳ございません!」
急にしゃがみこんで土下座をして謝り出した…。
アヤカは言葉を忘れてその光景を唖然と見ていると
「お嬢様…」
バーバラが心配そうに自分を見ていた、アヤカはハッ!とすると…
「い、いいのよ…お仕事頑張って…」
引きつった笑顔で答えると、そそくさと逃げる事にした。
「だ、大丈夫?」
一緒にいたメイドが土下座したメイドに声をかけると
「私…今、目が合ったよね?」
唖然と同僚を見ると、
「なんで顔を上げたのよ!お嬢様が機嫌が良くてよかったわ…」
ホッとしていると
「機嫌…?」
先程の顔は私に気を使っているように見えた…まさかね…。
二人は立ち上がると急いでその場を離れた。
「お嬢様…大丈夫ですか?」
ひとの気配が無くなるとバーバラが声をかけてくれる。
「うん、大丈夫…ちょっとビックリしただけだから」
笑って答えると
「もうずくキッチンです、美味しいものを食べて部屋でゆっくりしましょうね」
バーバラの笑顔が心に染みる…アヤカは頷くとキッチンへと向かった。
「ノエルさん?」
バーバラがノエルに声をかけると
「おっ?バーバラどうした?」
ノエルがキッチンの掃除の手を止めて振り返ると…
「お、お嬢様…」
バーバラの後ろにいる女の子を見つめる…すると直ぐに頭を下げて。
「も、申し訳ございません」
(また…なんでここの人は直ぐに謝るんだろ…)
バーバラがアヤカを見ると…
「大丈夫です、顔を上げて…ノエル…さん?」
アヤカがノエルに声をかける。
ノエルはバッっと顔を上げると
「俺の名前を?」
「名前?バーバラに聞いたの…駄目でした?」
アヤカはバーバラとノエルを不安げに見つめると
「とんでもございません…私の様な者の名前を知っていて驚いただけです…しかし…お嬢様がこんなところになんで…?」
バーバラを見ると
「お嬢様…お腹が空いてしまったようで、ノエルさん何か作って頂けますか?」
ノエルは信じられない思いでバーバラを見る
「バーバラ…何を言ってるんだ!お嬢様をキッチンに連れて来るなど…食事なら部屋にお運びしないと…」
「あっ!バーバラは悪くないの、私がキッチンに行きたいって頼んだから!」
アヤカが思わず口を挟むと
「お嬢様が?」
「そういう事なので…何か作って頂けますか?」
バーバラは困った様に笑った。
お嬢様をキッチンの椅子に座らせると、ノエルは材料を眺める。
(なんだってこんなところに…)
お嬢様が何を考えているのかわからずに緊張しながら材料を取り出すと、フライパンを温めてサッと簡単な物を作っていると…
「凄い!手際がいいですね!」
いつの間にか直ぐ後ろでノエルの作っている所を面白そうに眺めていた…
ノエルが作った料理をお嬢様の前に出すと
「いただきまーす!」
アヤカは目の前の料理にかぶりついた!
「美味しい!」
(さっきのも美味しかったけどこっちは熱々でさらに美味しい!)
夢中で食べるとあっという間に無くなってしまった…。
「あー美味しかった…ごちそうさまでした」
手を合わせてノエルさんを見ると…驚いた顔をして綺麗になったお皿を見つめていた…。
(ヤバい…食べすぎた…?お嬢様って少食だったのかな)
アヤカは
「あっ…えっと…美味しすぎて食べすぎちゃったわ!いつもならこんなに食べてらないのにー」
ホホホ…と席をたつと
「じゃノエルさんごちそうさま、また夜ご飯楽しみにしてますね」
アヤカはバーバラを引っ張るとそそくさと部屋へと戻って行った。