表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

18:30〜18:45

 注文したメニューが来たらしい。後ろからカチャカチャと食器の音が聞こえてくる。


『……よいしょ』


 ドリンクバーに立つついでに机を覗いてみると、テーブルの中心にエスカルゴが置いてあった。頼んだのかよ。



 ────────────────────────



挿絵(By みてみん)「おいしいね、ヤドカリナメクジ」


挿絵(By みてみん)「ねー……」



 ────────────────────────




『呼び方のせいで不味そうなんだよなぁ……』


 いまいち腑に落ちない気持ちを抱えながらドリンクバーへと向かう。そうしてホットココアを注いでいると、入り口の扉から冷たい風が流れ込んできた。


 お客さんか。視線がそちらの方へと向かう。


『……』


 そこには小学校高学年くらいの、利発そうな顔立ちの女の子が立っていた。身長こそ小さくて子供らしいが、纏う雰囲気は大人びている。


 そこへ店員がすぐさま駆け寄る。子供一人での来店をいぶかしんでいるのか、足取りにわずか躊躇いを感じた。


 ここからだと店員と女の子の会話は距離的に聞こえない。しかし、子供3人の会話を盗み聞きしていた俺は大体何を話しているか想像がついた。


「1名様ですか?」「いえ、先に友人が来ているはずです」大方、そんな所だろう。そして少女は視線を店内いっぱいに向け、何かを見つけたらしく迷い無い足取りでとある場所へと歩き出した。


 その少女を追うように、俺も自分の戻るべき場所せきへと戻る。




 ────────────────────────



挿絵(By みてみん)「ゴメンねー、少し遅れちゃった」



挿絵(By みてみん)「全然気にして無いよ〜、だから謝罪の気持ちを込めて料理代を出すとかしなくて良いからね?」



挿絵(By みてみん)「タカリ慣れてんな」



挿絵(By みてみん)「遅かったけど何してたの? うんこ?」



挿絵(By みてみん)「会って早々汚いこと言わないでよ」



挿絵(By みてみん)「あっ、汚いで思い出したんだけど、あすかちゃん誕生日おめでとう」



挿絵(By みてみん)「なんで『汚い』で思い出したの?」



挿絵(By みてみん)「あすかちゃんが汚いから?」



挿絵(By みてみん)「ストレートな罵倒やめろ」



挿絵(By みてみん)「どうした? 機嫌悪いね。生理?」



挿絵(By みてみん)「セクハラすんな」



 ────────────────────────



『……』


 女の子が一人増えたところで、会話のベクトルは特に変わらないらしい。女子小学生ってもっとキャッキャしてるイメージなんだが。


 ……しかし最近の子供、語彙力豊富だな。




 ────────────────────────



挿絵(By みてみん)「というか、もう料理頼んじゃったのね」



挿絵(By みてみん)「お腹すいちゃってね〜」



挿絵(By みてみん)「この店頼んだもの来るの早いから、今からでも頼めばすぐ来るよ」



挿絵(By みてみん)「へぇ。……てか、この真ん中に置いてある緑色のヤツ何?」



挿絵(By みてみん)「ヤドカリナメクジを焼いたやつだよ」



挿絵(By みてみん)「はい?」



挿絵(By みてみん)「エスカルゴ……」



挿絵(By みてみん)「カタツムリの事ヤドカリナメクジって言ってんの? キモくない?」



挿絵(By みてみん)『わかる! やっぱキモいよねぇ』



挿絵(By みてみん)「キモいって言うほうがキモいし!」



挿絵(By みてみん)『しゅん……』



挿絵(By みてみん)「キモいで思い出したんだけどうちのお父さんキモいを『気持ち良い』の略だと勘違いしててお風呂入るたび『あ〜キモい〜』って言ってて超面白いよ」



挿絵(By みてみん)「へー、いつから間違ってるの?」



挿絵(By みてみん)「5年前くらいかな」



挿絵(By みてみん)『教えてやれよ』




 ────────────────────────




挿絵(By みてみん)「そうだ!全員揃ったしみんなでドリンクバー混ぜて遊ぼうよ!」



挿絵(By みてみん)「大きな声で言うことじゃないし、持ってきたら絶対責任持って飲みなさいよ」



挿絵(By みてみん)「私、コーラとメロンソーダとファンタ混ぜてくる!」



挿絵(By みてみん)「言い出しっぺの割に無難」



挿絵(By みてみん)「私はコーヒーとシロップとミルクと氷混ぜて来るね」



挿絵(By みてみん)「ただのアイスコーヒー」



挿絵(By みてみん)「私は普通に美味しく飲みたい……」



挿絵(By みてみん)「それで良いのよ」



挿絵(By みてみん)「ココアとコーラとジャスミンティーと昆布茶を混ぜると美味しいんだよね……」



挿絵(By みてみん)「舌、ある?」




 ────────────────────────


『……』


 人数が増えたせいで、またうるさくなった。だがむしろ、より会話が興味深くなったと言える。


 俺はこれからの会話を想像しながら、淹れてきたココアを口に運んだ。


「あっち!」


 ホットココアの熱さを忘れ勢いよく飲み込んだ俺は思わず叫ぶ。


『……』


 店員と目があったため、しょぼい苦笑いを作り会釈して目をそらした。……普通に大声出たんだけど。


 あと後ろの席から「あっち!」「こら、真似しないの」という声が聞こえて来て死にたくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ