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19:45〜20:00

時刻は19:45。


すでに満腹感も限界まで迫って来た。なんというか、食べ物と飲み物でいっぱいいっぱいだ。


それでも、会話が聞こえてくる限り長居すると決めたのだ。改めてそう決意し再び意識を後方へと向けようとした瞬間、出入り口に立つ一人の女性が目に入った。


「……」


店内全体に視線を向けた後、彼女はこちらへと視線を固定。そして迷う事なくまっすぐと、自分のいる方へと向かって来た。


『……』


罰せられるような悪い事をやっている訳では全くないのだが、それでも身を硬くし、視線をスマートフォンへと泳がせる。


しかしその女性は俺を素通りしてその真後ろの、小学生達の席の空いたスペースへとなんの迷いもなく腰を下ろした。


『……』


こえ〜……


そろそろ、会話の盗み聞きも潮時かも知れない。



────────────────────────



挿絵(By みてみん)「おっす、迎えに来たぞ」



挿絵(By みてみん)「お姉ちゃん」



挿絵(By みてみん)「お〜! 姉ちゃん!」



挿絵(By みてみん)「お姉さんこんばんわ〜」



挿絵(By みてみん)「……お久しぶりです」



挿絵(By みてみん)「楽しそうじゃん、なんの話してたの? 死ぬ瞬間の苦しさの話?」



挿絵(By みてみん)「そんな話が楽しいわけないよね」



挿絵(By みてみん)「えっとね、将来の仕事の話してた!」



挿絵(By みてみん)「へぇ〜偉いな〜。私なんて大学四年生なのに、仕事の事なんて考えた事ないよ」



挿絵(By みてみん)「これからがスタートだね!」



挿絵(By みてみん)「もうゲームエンドだろ」



挿絵(By みてみん)「お姉さん、アルバイトとかしてるんですか……?」



挿絵(By みてみん)「勿論やってるよ。あーあ、今やってるバイトの正社員になれねぇかなぁ」



挿絵(By みてみん)「お姉さん、なんの仕事してるの?」



挿絵(By みてみん)「パチンコ屋の駐車場でデコポン売る仕事してる」



挿絵(By みてみん)「それで、お姉さんはなんの仕事してるの?」



挿絵(By みてみん)「パチンコ屋でデコポン売ってちゃ悪いかよ」



────────────────────────



挿絵(By みてみん)「将来の話してたって言うけど、みんな夢とかあんの?」



挿絵(By みてみん)「あるある! 私、テレビマンになりたい!」



挿絵(By みてみん)「えっ? 永井豪?」



挿絵(By みてみん)「それはデビルマンだろ」



挿絵(By みてみん)「こんにちは。テレビマンの屋良瀬やらせです」



挿絵(By みてみん)「ギャグ漫画に出てくるやつか」



挿絵(By みてみん)「テレビって華やかなイメージはあるけど、やっぱ大変そうだよね」



挿絵(By みてみん)「有名人になると、自由に大麻も吸えないし」



挿絵(By みてみん)「今なら吸える認識なの?」



挿絵(By みてみん)「でもテレビマンってさ、それYouTuberじゃダメなのか?」



挿絵(By みてみん)「確かに、簡単な動画なら今すぐに投稿できるね」



挿絵(By みてみん)「YouTubeはダメ! 子供に悪影響!」



挿絵(By みてみん)「へぇ、せらちゃん大人みたいな考えなんだな」



挿絵(By みてみん)「……YouTubeって、そんなに悪影響?」



挿絵(By みてみん)「だってYouTubeに影響されたイジメとか起きたら怖いじゃん」



挿絵(By みてみん)「確かに。私たち聖マリステラ女学院の生徒は品性を損なわないよう、不純な動画は見るべきじゃないよね」



挿絵(By みてみん)「私たちの学校県立第三北小学校なんだけど」



挿絵(By みてみん)県立第三北せいまりすてら小学校だよ」



挿絵(By みてみん)「ラノベのタイトルか」



挿絵(By みてみん)「うーん、YouTubeって心配するほど危険な動画あったか?」



挿絵(By みてみん)「いっぺぇあるよ!」



挿絵(By みてみん)「なんでなまったのよ」



挿絵(By みてみん)「……例えば?」



挿絵(By みてみん)「例えば『1000度に熱した鉄球』で何かする動画とか」



挿絵(By みてみん)「あー、あるねそんな動画」



挿絵(By みてみん)「危険なのは分かるけど、あれに影響されてどうイジメに繋がるのよ」



挿絵(By みてみん)「例えば『1000度に熱した鉄球をたかし君に乗せてみた』とか!」



挿絵(By みてみん)「あるわけがない」



挿絵(By みてみん)「拷問動画?」



挿絵(By みてみん)「叫び声で動画の半分埋まりそう」



挿絵(By みてみん)「『1000度に熱した包丁でたかし君を刺すとどうなる!? やってみた』」



挿絵(By みてみん)「やってみんな」



挿絵(By みてみん)「刺した瞬間焼肉の匂いしそう」



挿絵(By みてみん)「そんな最悪の焼肉あってたまるか」



挿絵(By みてみん)「でも、傷口が焼けて出血が抑えられるから軽症で済みそう……」



挿絵(By みてみん)「刺されたら軽症では済まないよね?」



挿絵(By みてみん)「消毒にもなる優しさ付きだな」



挿絵(By みてみん)「刺したろか」



挿絵(By みてみん)「『アルミホイルとたかし君をハンマーで叩くと球体が出来る? 』」



挿絵(By みてみん)「それ、たかし君叩く必要ある?」



挿絵(By みてみん)「叫び声で動画の半分埋まりそう」



挿絵(By みてみん)「ハンバーグができちゃうよ〜」



挿絵(By みてみん)「そんな最悪のハンバーグあってたまるか」



挿絵(By みてみん)「そもそもたかし君って誰なんよ」



挿絵(By みてみん)「たかし君はB組の、アルパカに唾を吐かれたショックで未だに意識が戻らない子だよ」



挿絵(By みてみん)「どういうメンタルだよ」



挿絵(By みてみん)「違う違う、それはA組のひろし君だよ」



挿絵(By みてみん)「あれ? ザリガニをエビ代わりに食べて食中毒になって意識が戻らない子?」



挿絵(By みてみん)「それはB組のあきひこ君だよ」



挿絵(By みてみん)「じゃあ酸素が喉に詰まって意識が戻らない子は?」



挿絵(By みてみん)「そいつ地球に向いてないな」



挿絵(By みてみん)「全部時間があれば詳しく聞きたい話だな」



────────────────────────



時間があれば、の一言で我に帰った俺はスマホ上部のデジタル表記された時間に目を向ける。


時刻は丁度、午後8時。



挿絵(By みてみん)「さて、キリの良い時間だしそろそろ帰るか」



挿絵(By みてみん)「えーもうちょっとここに居たい〜」



挿絵(By みてみん)「ダーメ。条例でも8時以降は外出しちゃダメって決まってんだから。いい子は早く帰んないと」



挿絵(By みてみん)「私悪い子だから! 人とか日課で殺してるから!」



挿絵(By みてみん)「だったらここには居られないだろ」



挿絵(By みてみん)「さて、みんなは私が家まで送っていくからね。車まで行くよ」



挿絵(By みてみん)「ありがとうございます」



挿絵(By みてみん)「すみません……」



挿絵(By みてみん)「ごちそうさまです!」



挿絵(By みてみん)「流暢に奢られようとすんな」



挿絵(By みてみん)「ごちそうさまです!」



挿絵(By みてみん)「あっ、私の車四人乗りだから、せらちゃんは歩いて帰ってきてね」



挿絵(By みてみん)「そんなこと、ある?」



────────────────────────



『……さてと』


騒がしく店を後にする5人を尻目に、私は伝票に手を掛け、まるで映画の上映が終わりいざ帰ろうと立ち上がる時のような緩慢な動きで席を立つ。


『……』


今日は比較的、満足な1日だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませていただきました、ありがとうございました! [気になる点] 細かくて野暮な指摘かとは思いますが…。「4人乗りだから~」の部分ですが、大抵の軽自動車なら大人2人プラス子供3人まで…
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