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閑話:「戦う女の子は綺麗なんだ」

『この戦い、私ちゃん達が全員で力を合わせれば絶対に勝てる戦い(・・・・・・・・)です! 油断せずに相手さんを追い詰めて、莫大なDPをみんなでゲットするのですっ! この戦いに勝って、私ちゃん達のダンジョンは中規模ダンジョンの上位陣に一気に殴り込み(成り上り)をするのですっ!! 私ちゃ――ゲフンゲフン。みんな(・・・)の夢のために――えぃえぃ、お~っ(≧Δ)ノ!!!』

『『『エイエイオー!!』』』

 コアマスターの声に、ボク達全員のテレパシーが重なる。この戦い、絶対に負けることなんて出来ない。

 ボクは、いや――ボクらは、絶対に生きてこの世界をボク達が生きやすい世界に変えるのだから。


 ふと、数日前までの自分自身の力を振り返ってみる。

 スライムのリーダーとして、レベル17だった自分は少し天狗になっていた。いつか人間に完全に化けることが出来たら良いなと、ぼんやり思っていた。そして、ダンジョンマスターと出会った。


 ダンジョンマスターの第一印象は、ちょっと頼りない人間。

 でも、ダンジョンマスターの黒い瞳を見た瞬間、ボクの身体が熱くなった。


 ドキドキする(スライム・コア)の音が聞こえないことを願いながら、ボクはダンジョンマスターに悪戯した。

 話してみたら、ダンジョンマスターは想像以上に良い人だった。吸い込まれるような黒い瞳が、とっても綺麗だった。

 そして――ダンジョンマスターの隣に立つために、人間の姿になりたいと本気で思うようになってしまった。


 スライムが完全な人間の姿になるためには、最低でもレベル160が必要だと言われている。

 正直、魔物の最底辺にいるスライムがレベルをそこまで上げるのは、かなり難しいと思っていた。

 でも、ボクは諦めることは出来なかった。何年かかっても良いから、絶対に人間の姿になろうと決意した。

 そして意外な事に、レベル160には、たった数日でなることが出来た。


 ダンジョンマスターいわく、ダンジョンマスターの故郷では一般的な「ぱわーれべりんぐ」という方法らしい。

 戦闘の技術を身に付けることは難しいというデメリットがあるけれど、格上の魔物と戦うことでレベルを急上昇させ、生存率を大きく上げることが出来る方法だ。


 そのパワーレベリングによって、たった数日でボクのレベルは400を超えた。

 ステータスなんて、ちょっと自分でも笑ってしまうくらい急上昇した。特に、レベル200を超えた辺りから、物理攻撃でボクにダメージを与えられるのは、同じくパワーレベリングでレベル500を少し超えたエゼルさんと、レベル不詳のダンジョンマスターだけになった。

 エゼルさんのレベル500は仕方ないけれど、ボクとそうレベルが変わらないであろうダンジョンマスターの攻撃は、ちょっと防ぎたくなったからボクはレベル上げを頑張った。戦闘訓練もサキ姐さんと一緒に頑張った。

 でも、ダンジョンマスターはどんどん強くなっていった。ボクに与えるダメージも、徐々に大きくなって、いつの間にかエゼルさんよりも強くなっていた。

 本当に、ダンジョンマスターは底が見えない。でも同時に、格好良くて頼もしいなと感じるボクがいる。


 だからボクは――人間の姿になりたい。

 悔しいけれど、レベル480のボクは、今もまだ人間の姿になれていない。目標だったレベル160を超えることが出来たのに、レベル480になってもボクの姿は半透明な水色のまま。

 レベル200台の時には、正直、才能が無いのかなって落ち込んだけれど――才能が無ければ努力で補えば良いって、ダンジョンマスターやコアマスターを見て自然と考えることが出来た。レベル300でもダメだったら、レベル400や500になってみれば良いと思えた。

 だから――今回の戦いは望むところだ。

 レベル980の特級天使を相手にするのは正直、めちゃくちゃ怖いけれど。これを乗り越えられたら、多分ボク、人間になれると思うんだ。


「ぼそっ(ボクは、このチャンスを活かすよ? このチャンスを、絶対に掴んでみせるよ?)」

 だから見ていて、ダンジョンマスター。


 今はまだ、視界の端っこでも良い。

 でもボクは、ダンジョンマスターの記憶の中に、ボクという存在を少しずつ刻んでいく。

 コアマスターやエゼルさんの邪魔はしない。

 でもボクという存在を、ダンジョンマスターに魅せつけたい。


『ねぇ、ダンジョンマスター? 知ってる?』

 ボクの問いかけに、隣を歩いているダンジョンマスターがテレパシーを返してくる。

 その声色は、緊張しているはずなのに、とっても優しいものだった。

『何のこと? 主語が無いと、俺には分からないよ?』

 そりゃそうだ。あえて何のことか、ボクは伝えなかったから。

『くふふっ♪』

 思わず笑ってしまって、ダンジョンマスターが困惑する雰囲気が伝わってくる。


 ちょっとだけもったいぶってから、ボクはダンジョンマスターにテレパシーを飛ばす――つもりだったけれど、止めた。

『やっぱ教えない♪』

 ボクの悪戯っぽい声に、ダンジョンマスターが苦笑する。

『それは、ちょっと酷くない?』

『うん。だから、全部終わってから教えてあげるよ( ω)v』

『そっか、教えてくれるのを楽しみにしておくね?』

『もち。期待してていいよ~』

 そこで言葉を区切ってから、ボクは小さく深呼吸をした。そして口の中だけで、小さな言霊を生み出す。


「――戦う女の子は、綺麗なんだよ♪ だから覚悟しててね?」


 くふふっ。

 さぁ、ボク達の戦場に歩いて行こう。



(次回に続く)

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