第73話:『莫大なDPをゲットするのですっ(≧Δ)ノ!!』
『コレを乗り越えたら俺達の目標が現実のものになる。だから――『そう、エゼル達は気合を入れなければならない。だって、俺達の戦いはこれからだからッ(≡ω)b』――『ちょ、エゼルっ!! 美味しい所を持って行かないでッ! あと、それじゃなんか大切なモノが終わってしまう感じだからッ!!』――『ほぇ?』』
俺の言葉に割り込んだ時のドヤ顔から一転、きょとんとした表情を浮かべるエゼル。
いや、なんでそんな不思議そうな顔をするの? 美味しい所というか、重要なところをかっさらって、絶妙な天然ボケをかましてくれるのは……まぁ、エゼルらしいと言えばエゼルらしいんだけれど……「その言葉」はちょっと不味いんですよ……otz
とりあえず、終わらない、終わらないからねっ!
『……ねぇ、エゼル? そろそろ迎撃の準備もしたいから、この会議を〆てもいい?』
お伺いを立てる俺に、魔物の幹部の4人も苦笑していた。
うん、この人達もさっきのやり取りが「いかに不味いお約束」だったのかを理解しているみたいだ。サキ姐さんなんて、ちょっとハラハラした雰囲気で俺達を見守っているし。
『むぅ~(≡ω)ノ なんで水島おにーさんが慌てているのか理解できないッ!』
『いや、エゼル? それは本気で言っているの?』
『――んふふっ! んな訳あると思うか?』
ドヤ顔のイメージをわざわざテレパシーで俺に送って来てから、エゼルが言葉を続ける。
『名言は、きちんと使う場所を考えないと名言にならないだろ? エゼル的には、あのタイミングが一番おいしi――『はい、今忙しいから、ごめん。また後で聞いてあげるからね?』――ムムッ! 水島おにーさんが、何気に事務的な対応をしてきたぁ……(Tω)ノシ』
ドヤ顔を泣きまねに変えたエゼルだけれど、このままエゼルと話をしていたらあっという間に時間が無くなってしまいそうだから、話を途中でぶった切る。
エゼルと少し――というか、かなり不穏なやり取りをしてしまったものの、俺達のダンジョンに特級天使が侵入している状況も、特級天使と戦わないといけない状況も変わっていないのだ。
無駄な力がエゼルのおかげで抜けた今、やるべきことと出来る限りのことをするために、行動を始めようと思う。
『それじゃ、最後に少し色々あったけれど――みんな、準備は良いよね?』
俺の言葉に、スラちゃん、サキ姐さん、ゴブさん、ボルトさんがこくりと首を縦に振るイメージを送って来た。
そして、少し遅れてエゼルも唇がアヒルさん状態のまま、首を縦に振るイメージを俺に送ってくる。
思わずエゼルの変顔に吹き出しそうになったけれど……それを言ったら本気で拗ねそうだから止めておく。
『エゼルがちょっと不服そうだけれど、そこは接敵するまで俺と2人で打ち合わせをすることにして――』
俺の言葉に、エゼルが変顔を止めた。
それを確認してから、俺は〆の号令を口にする。
『今回の戦いを乗り越えたら、俺達の目標が現実のものになる。だから、DMとしてみんなには「少しだけ」無理をお願いする。「生きろ。死ぬな。絶対に諦めるな」――今回の戦いでは、誰かが死んだり大怪我をすると、それだけ他の皆の負担が増えるから』
小さく息を吸い込んで、残りの言葉を口にする。
『自分が生き残ることを考えれば、それだけで他の皆の負担を軽くすることが出来る。打ち合わせ通りにすれば、特級天使が相手でも俺達は勝つことができる。だから、どんなにピンチでも、「自分が生きること」を忘れずに行動してくれ。――俺からは以上だ!!』
『『ハイ』』『『はいっ!』』『らじゃ~(≡ω)b』
5人の返事が重なったのを確認した瞬間、ディルが俺達にテレパシーを送ってきた。
『それじゃ、私ちゃんからも一言いいですか? 本当は、みんなを煽ったおにーさんに、お説教をしたい気持ちでいっぱいですが……それは全て終わった後にしようと思うので今は良いです♪』
そう口にすると、ディルが不敵な笑顔をテレパシーで送ってくる。
いつもよりも心なしか、その紅い瞳に魔力が込められているように、俺には見えた。
無機質な宝石なんかと比べるのもおこがましいくらい綺麗な紅い瞳。俺の心をがっちりとつかんで離さない、俺を虜にする魅惑の瞳。深淵に吸い込まれるような、危ない瞳。
そんな瞳を持つディルの言葉を、俺以外の皆も真剣に待っていた。
『この戦い、私ちゃん達が全員で力を合わせれば絶対に勝てる戦いです。油断せずに相手さんを追い詰めて、莫大なDPをみんなでゲットするのです。この戦いに勝って、私ちゃん達のダンジョンは中規模ダンジョンの上位陣に一気に殴り込みをするのですっ! 私ちゃんno――ゲフンゲフン。みんなの夢のために――えぃえぃ、お~っ(≧Δ)ノ!!!』
……うん、欲に目がくらんだディルも、俺は可愛いと思うよ?
普段以上に目に迫力があるなぁと思ったけれど、私ちゃん――もとい「みんなの夢」のためなら、仕方がないよね。
(次回に続く)




