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第71話:『俺達が頑張れない理由は――どこにも無いよね?』

『骨董品を舐めている特級天使さんに、一泡吹かせてあげるのです!』

 紅い瞳の中に、希望という光を取り戻したディル。

 その言葉に俺とエゼルは頷いていた。


『特級天使の方がレベルやステータスが高いとはいえ、パワーレベリングのおかげで、俺達も抵抗できるくらいのステータスは持っている。相手さんは俺達が何とかするから、ダンジョンのことはディルに任せたよ♪』

『もちろん、エゼルも頑張るぞ(≡ω)b ごーほーてきに上司を殴れるって、めちゃくちゃ最高だと思ないか?』

『『思わない(です)!!』』

『ありっ?』


 エゼルの天然ボケでちょこっと緩んだ空気感。

 でも、このくらいが俺達にとってはちょうどいい。肩の力を抜いて、でも気持ちだけは抜かないで――俺はこれからの作戦を提案する。

『ディル。これから俺の考えていることを伝えたいから、魔物の幹部4人にも思考加速とテレパシーの回路を繋げてもらえるかな?』

 普段の俺達の思考加速やテレパシーは「俺⇔ディル⇔エゼル」とか「俺⇒ディル⇔魔物幹部」のように、魔物の幹部達とは直接繋がっていない。全てDCであるディルを経由しないといけないのだ。

 だけど今回は、ディルを通してサキ姐さんやスラちゃん達と情報共有をしていないと相手さんには勝てない。


『分かりました、すぐに繋ぎます!――どうぞ! 4人には、私ちゃんの方でテレパシーを繋ぐことは説明してありますから!』

 ディルのテレパシーと同時に、サキ姐さんとスラちゃんが言い争っている声が聞こえてきた。

『――だから、まずは作戦会議が必要ですわ。むやみに突撃しても、被害が甚大になるだけです!!』

『でもっ! 第6階層で迎撃するまでに、少しでも相手の力を削っておかないと! ボク達のコアマスターとダンジョンマスターが!!』

『2人とも、会話を止めて下さい。おにーさんが聞いていますよ?』

 いつもより、少しだけ威厳のあるディルの声。

 DCとして、魔物のリーダーとして、緊急事態を切り抜けるための「命令」だった。


『『はい(わかった)!』』

 すぐに大人しくなって返事をした2人。彼女達を含めた全員に、俺は言葉を掛ける。

『まずは確認させて欲しい。みんな、俺の声が聞こえているよね?』

『『はい!』』『聞こえているぞ(≡ω)』『もち♪』『『聞こえております』』

 ディルとサキ姐さん、エゼルとスラちゃん、ゴブさんとボルトさん。全員の声が聞こえたのを確認してから、俺は今後の方針を伝える。


『みんな、ありがとう。まずは、現状の把握とこらからの方向を決めさせて欲しい。すまないけれど、質問や疑問点は後にしてくれ。思考加速中だから、本当はあまり余裕は無いけれど、作戦会議をする時間くらいは十分にあるからね』

 そこで小さく間を作ってから、俺は今の状況を口に出していく。

『まずは、みんなもディルに聞いたと思うけれど、特級天使にダンジョンのシステムが破壊された。この影響で、ほとんどのダンジョン機能が使えなくなっている』

 頭の中でイメージして全員にテレパシーで伝える。


 具体的に言うならば――

・ダンジョンによる蘇生や回復

・ダンジョンの罠の新規設置や変更

・ダンジョンの罠や階層の操作

・ダンジョンの特殊空間(魔法無効化など)


・DPを使った、生き物や魔物の召喚

・DPを使った物資の取り寄せ

・DPを使った攻撃(DPアタックやダンジョン魔法)

――などが使えない。


『でも、エゼルが持っていた古いダンジョンコアをもとにして、ディルがダンジョンシステムを現在再構築してくれている。ダンジョンの再構築に掛かる時間は、思考加速状態をフルに活用しても、通常の経過時間で最低30分は必要らしい。実質的には、余裕を持って「40分は必要」だと考えていた方が良いと俺は思う。その間、俺達は特級天使の足止めをすることになる』

 再び、頭の中でイメージを作って、足止めに必要な事をみんなに伝える。


 足止めに必要なことは――

・死なないこと。(死んだら、蘇生ができない)

・なるべく大怪我をしないこと。(回復魔法のMPや備蓄で使える回復薬は限度がある)

・連携を取りながら、ステータス差を埋めること。(全員が一度に傷つくと、回復をするタイミングが消える)

・対天使用に用意していた装備を使用すること。(但し、闇属性ではなく魔属性のモノを使用すること。相手は隠しステータスで闇属性も持っている)


・戦闘中は思考加速を使うこと。(相手とのステータス差を埋めるため。連携にも必要)

・足止め中は、ダメージよりも足止めを意識すること。(ダメージを与えても、全回復魔法でチャラにされてしまう)

・80~90%くらいの力で戦うこと。(ダンジョン機能が戻ってから、一気に攻める時の余力を残しておきたい。また、相手の油断も誘うために必要)

――だと思う。


 でも、これは自分の中だけで考えたことだから、みんなの意見も聞きたい。

『ここまでで、足りないと思うことが有ったら、みんなも教えてくれないかな?』

 俺の言葉に、ゴブさんが反応した。

『ダンジョンマスター、質問が有るのデスガ、よろしいデショウカ?』

『うん、続けて、続けて』

『ハイ。アノ、戦闘中はずっと思考加速を使うというのは正ki――すみません、本気でショウカ? 最低でも30分は時間を稼いで、その後に一気に畳みかけるのデスヨネ? 思考加速をそんなに長時間、維持するのハ――『ゴブさんには、できない?』』


 ゴブさんの言葉を遮った、俺の問いかけ。

『ゴメンね、普段はホワイトなうちのダンジョンの危機なんだ。今回は、ちょこっとだけ無理をしてくれないかな?』

 そんな風にテレパシーで前置きをしてから、俺は言葉を続ける。


『ディルは、さっきからダンジョンシステムの再構築を思考加速状態のまま頑張ってくれている。今、こうして会議をしている間も、ダンジョンシステムの作業をしながら、俺達のテレパシーを繋いでくれている。そして――これから始まる戦闘中も、ずっとずっと最後までディルは思考加速を止めることは出来ない。それをしたら、俺達が死ぬからね?』

 小さく言葉を区切ってから、俺はみんなの心(・・・・・)に火を点ける。


『ディルが頑張っているのに、俺達が頑張れない理由は――どこにも無いよね?』



(次回に続く)

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