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第63話:「それじゃ、2回戦を始めようか?」

「皆、すまないな。少し疲れていたみたいだ。――さて、それでは神堕としの会議を再開しようか!」


 我らが敵対するのは、タライロンとホーリーという2柱の神々。1ヵ月前に、我らのダンジョンに奇襲(ちょっかい)をかけて来た嫌な奴らだ。

 あいつらは暴力と貪欲を司る神だが、我に言わせれば『HPだけが高い脳筋』でしかない。

 油断してはいけないが、我らの経験値となってもらおうじゃないか♪


 ――そして3日後、「その時」がやって来た。

 決戦の場所はダンジョンの上層100階の大広間。今日まで120年間で育てた大切なダンジョンを、神々ごときに壊されたくないから、比較的浅い層で相対することにした。


 ちなみに、戦闘が始まって10分が過ぎようとしている今、我らの戦況はあまり芳しくない。

 ダンジョン内を徘徊していた配下は、ほぼ壊滅。2柱の神に攻撃を加えていた幹部級の魔物は、現在1/3が倒れている。

「……やっぱり腐っても108柱の神という所か」

 我の口から思わず零れた言葉に、ホーリーとタライロンが嫌そうな表情を浮かべる。


「あらあら? 腐っても(・・・・)だなんて――失礼ね?」

「もしかして、俺達を倒せるとでも思っていたのか?」

「ああ。我は生憎、勝てない勝負はしないタチでね♪」

 強がって笑みを返してみたものの、このままでは戦況が良くなる兆しはない。


 このままでは、魔物の損耗が激しすぎる。

「仕方がない」

 アンブリアには口を酸っぱくして止められていたが。

「我が相手をしよう。――2人まとめて掛かって来いッ!!」


 我の挑発を込めた叫びに、2柱の神は固まり、我の配下は道を開ける。

 ドラゴンが30体縦横無尽に動き回ることが出来る、勇者殺しの上層100階層。その広大なスペースで、我は2柱の神と向かい合う。


「その自信――」

「私達が打ち砕いて殺してあげるわ!!」

 刹那の刻。身体強化をして飛び込んで来るホーリーとタライロンの攻撃。

 それを、我は両手のかぎ爪で翻弄する。

「くそっ!」

「くっ! なんでこんなに強いの!?」

 焦ったような2柱の神の声に、我のテンションは上がっていく。


「お前らの本気はその程度か!? 我の本気は、まだまだだ。だから――もっと行くぞぉっ!」

 スキル【咆哮】により、我の全ステータスが20%アップする。

 身体が軽い。視界が広い。敵の攻撃が未来予知をしているみたいに先読みできる。

 高揚した気分の中、我は2柱の神と戦った。


 そして――

「……なかなかしんどいのな? 回復魔法が(・・・・・)効かない呪い(・・・・・・)を受けると」

 気が付けば、我のHPは1/3をギリギリ上回る程度に減っていた。


 普通ならば回復魔法やHP回復薬、エリクサーなどを使用すれば一瞬で回復する傷。

 でも今は、ホーリーの放った呪いが原因で、これらの回復手段が無効になってしまった。

 不幸中の幸いで【HP自動回復】スキルだけは効果が生きていたが……どこまでもつのかは、正直、不安でしかない。


「腐っても神ということか」

 我の言葉に、2柱の神の表情が笑みに変わる。

「今なら、貴女の命だけで、他の魔物達は見逃してあげますわよ?」

「そうだぞ? 良い条件だと思わないか?」

 そんなホーリーとタライロンの言葉を、我は一蹴する。


「はんっ! 見逃すつもりは、一切ないくせして何を言う? それに我は知っているぞ――」

 言葉を区切って、あえてドヤ顔を作って、我は続きを口にする。

「お前ら2人が、それなりのダメージを喰らっていることをな♪ 正直、立っているのもきついだろ?」

「「っ!?」」


「図星か? そんな風に動揺が顔に出るから、『脳筋馬鹿』って言われるんだよ(≡ω)p」

 我の挑発に、タライロンとホーリーの顔がみるみる赤くなっていく。

 戦いで冷静さを失うのは命取りだというのが常識なのに……こいつらは♪


「なぁ、お前らも本気でかかって来い。我も、真の本気を見せてやる!」

 そう言って、我は右手のかぎ爪で左腕に一筋の傷をつける。

 HP自動回復の効果ですぐに傷が消えるが、失ったHPはすぐには戻らない。


「何をしたんだ??」

 タライロンの不思議そうな表情に、あえて応えてやる必要は無いが…。

「なぁに、ちょっとしたスキルを解放しただけさ♪」

 そう、ちょっとしたスキルだ。

 獣人族なら誰でも持っている【闘争本能】という、『HPが1/3になることを条件に、全ステータスが上昇するスキル』だ。

 我の場合、なぜか全ステータスが300%アップするのだけれど。


 みるみるうちに上昇していく我のステータス。

 相対している2柱の神から、余裕の表情が消えて行く。

「こっ、これは……」

「ちょっと! 何なのよ! なんなのよ、あなた!!」

 タライロンとホーリーは、軽い恐慌状態に陥っている。

 せっかく、楽しめると思っていたのに、残念だ♪


「それじゃ、2回戦を始めようか?」

 我は油断しない。着実に、この2柱を葬り去る。あの人との(・・・・・)約束を(・・・)守るために――。



(次回に続く)

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