閑話:「アイスクリームの神だと思う」
「うむ。『バーゲンだっつ!』はアイスクリームの神だと思う(≡ω)b」
しみじみと言葉を噛みしめながら『バーゲンだっっ! イチゴミルク味』を食べた感想を口にしたエゼルに、ディルと水島おにーさんが、うろん(?)な目を向けてくる。
「む? 何か異論があるのか?」
エゼルの言葉に、水島おにーさんが首を横に振る。
「いや、いきなりエゼルが立ち上がって、奇声をあge――もとい、大きな声を出したから、ちょっとびっくりしたんだよ」
「……今、奇声をあげたって言ったか? 流石のエゼルも、ちょっと涙目になるぞ!?」
いや、もうすでにガチで涙目になっている。若干、視界が霞むから……って、老眼じゃないぞ!!
「ご、ごめん。――それよりも! 『バーゲンだっっ!』は、どんなところが神なの?」
「むぅー! なんか無理やり話題を変えられた気がするッ!!」
「まぁまぁ、エゼルさん。『バーゲンだっっ!』は確かに美味しいですが、神っぽいとまでは私ちゃんは感じませんでしたので……『バーゲンだっっ!』の魅力を私ちゃんにも教えて下さい♪」
「……まぁ、そんな風に言われたら仕方がないな♪ エゼルが『バーゲンだっっ!』の神っぽさを教えてやろう(≡ω)!」
そう言って一呼吸置いてから、エゼルはアイスクリームの神様の魅力を語ることにした。
「まずは『香り』だ。封を開けた瞬間、スプーンを入れた瞬間、そして口の中に入れた瞬間に、芳醇に香る自然な匂いは、他のアイスクリームの追従を許さない(≡ω)b」
「ほうほう」「ふむふむ」
興味深げに首を縦に振っている2人に自尊心を刺激されながら、エゼルは言葉を続ける。
「次は『口溶け』だ。口の中にアイスを入れた瞬間に、舌の上でさらりと溶けて、濃厚な流動体に変わるのがたまらないんだ。ちなみに、液体になるんじゃなくて流動体だからな? 間違えるなよ? 他のアイスでは、サラサラの液体になるんだが、『バーゲンだっっ!』は濃厚だから、液体よりも少しだけ固体に近いんだ(≡ω)b」
「ほうほう」「ふむふむ」
エゼルの言葉に、水島おにーさんとディルが首を縦に振る。その表情は、新しい発見を見つけた喜びで満ちている。
「そして、その次の魅力は『味わい』だ。他のアイスクリームの追従を許さない濃厚な味わい。これは、言葉では表せられない。言葉で表すなどおこがましい。だから――実際に、食べてもらうのが一番だ(≡ω)b」
「ほうほう」「ふむふむ」
「そして、最後の魅力は『価格』だ。普通のアイスクリームが1個1DPで購入できるのに対して、『バーゲンだっっ!』は1個3DPじゃないと購入できない。普通のアイスクリームの3倍だッ!! それなのに、それなのに、容器のサイズは普通のアイスクリームよりも小さいと来たじゃないかッ!! こんなの、こんなの、信じられないぞっ(Tω)ノシ ――と、エゼルも思っていた時期がありました」
そこで言葉を区切る。
なぜなら、とても重要なことがこの後に待っているのだから。
「そう、量が少ないのに普通のアイスクリームの3倍の値段がするということは、アイスクリーム初心者には絶対に理解できない。でも、アイスクリーム上級者になった瞬間に、エゼルは理解できたのだ。『高価なアイスは、特別感がたまらない!!』ということにな(≡ω)b」
「ほうほう」「ふむふむ」
「仕事を頑張った自分へのご褒美として、特別な1カップを食べるのも良し。エアコンの効いた室内で、ダラダラとしながら食べる1カップも良し。おやつの時間に一気に3カップ食べて、高貴な身分になった気分を味わうのも良し。夕食の後に、デザートとして食べる1カップも良し。――『バーゲンだっっ!』には、特別な雰囲気を演出してくれる価格以上の効果があるのだッ(≡ω)b」
「ほうほう」「ふむふむ」
「……さっきから、『ほうほう』とか『ふむふむ』とかしか言っていないよな? ちゃんとエゼルの話を聞いていたか?」
「え? 『バーゲンだっっ!』は神なんだよね?」
「ちゃんと聞いていましたよ?」
「うむっ♪ ならばよろしい!」
こくこくと頷いたエゼルに、水島おにーさんが無言かつ妙に優しい笑顔で、『バーゲンだっっ!』を1カップ差し出してきた。
「ん? これは? チョコミント味?」
「うん、コレをエゼルに食べてみて欲しくて♪ ある意味で、おすすめの味だから」
「うむっ♪ それじゃ、食べてみるぞ! 水島おにーさんがそう言うのなら、期待できるんだろうな♪」
ダッシュでマイスプーンをキッチンから持ってきて、エゼルはチョコミント味の蓋を開ける。
「じっ、しょーく!!」
ゆっくりとスプーンですくって、香りを楽しみ、溶けてしまう前に口に運ぶ。
そして、口の中に広がる……歯磨き粉の味。
「うむ。『バーゲンだっつ!』はアイスクリームの神だと思う(≡ω)b 但し、『チョコミント味』は除くっ!」
思わずエゼルは叫んでいた。
『バーゲンだっっ!』にも、外れがあるのだと初めてエゼルは知った。……ちくせぅ(Tω)ノシ
(次回に続く)




