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第53話:「俺のダンジョンチートの時間が、ついに始まるッ!」

「それじゃ――拠点のお家に帰ってから、いっぱい私ちゃんの話を聞いて欲しいです♪」

 そう言ってはにかむと、赤髪の吸血姫は俺とエゼルの手を引いて、鼻歌を歌いながら歩きだした。

 優しい時間、優しい空気、優しい関係が――ゆっくりと俺達3人の間に流れていた。この時間が、ずっとずっと続きますように。


 ◇


「ふぃ~、お腹いっぱい食べたのだぁ~あ~ぁ~(≡ω)ノ」

 そう言いながらリビングのソファーにダイブするエゼル。

 確かに、エゼルは最初から最後までハイペースでご飯を食べていたような気がする。3時間以上もご飯を食べ続けることが出来るお腹って……エゼルの身体の中は、4次元構造になっているのかもしれない。


「私ちゃんも、お腹いっぱいですぅ~。特に、最後のケーキラッシュがなかなか手ごわかったです!」

 可愛く言っているけれど、ディルの方も結構なボリュームを食べている。俺が見ていただけでも、11ピースのケーキを完食している猛者なのだから。


「二人とも、取りあえず何か飲み物を飲む?」

 とりあえず一息つくためにも、何か飲みたい気分になっていた。

 すぐにディルとエゼルから返事が戻ってくる。

「私ちゃんは、ガミミールのハーブディーが良いです!」


 ガミミールというのは、カモミールに似たような薬草(ハーブ)だ。

 ダンジョンの中にも自生していて、その白い花を摘んで乾燥させたモノは鎮痛、解熱、リラックスなどの効用が期待できる。夜の飲み物としては、良いチョイスだと思う。


「エゼルは、ブラックコーヒー・砂糖1個で(≡ω)b♪」

「……エゼル? 夜に眠れなくなっちゃうよ?」

「えー! でも、水島おにーさんが淹れてくれるコーヒーは、とってもとっても香りが良いんだ! エゼルは水島おにーさんのコーヒーが飲みたいんだ(Tω)ノシ」

 ウルウルした瞳で、ソファーから俺を見上げてくるエゼル。


 思わず俺は、エゼルに向かって――

「あべしっ!」

 ――片手チョップ(岩斬〇〇波)を軽く喰らわせていた。

「火出部ーーッ!?」

 そう言って再びソファーに倒れ込むように寝転んで、ピクピク痙攣する演技をしているノリの良いエゼル。

 まったく、あの有名作品『大熊座の拳』は、こっちの世界にも浸透していたなんて。こっちの世界は、本当に中二病と相性が良すぎる。


 小さく零れそうになるため息を飲み込んで、俺はエゼルに声を掛ける。

「エゼル、その『うるうる上目遣い』はスラちゃんから教えてもらったの?」

 俺の問いかけに、世紀末な雑魚キャラを演じていた彼女がガバッと起き上がって、ちょっと悪戯っぽい表情を浮かべた。

「ああ♪ スラちゃんから『大人を操る48の秘術』のうちの3つを今日教えてもらったんだ! 今のは、その中の1つ『内角を抉るようにウルウルすべしッ!!』という技だな(≡ω)b」

 思わず全身の力が抜ける。スラちゃん、エゼルに何を教えているんだか……っていうか、あと48個も技があるんだね……うん、実験台は俺しかいなさそう。


 そのままソファーの開いているところに倒れ込みたくなる誘惑に駆られたけれど、飲み物のリクエストを聞いたのは自分だと気を取り直す。

「エゼル。とりあえず、コーヒー牛乳にしておこうか? 牛乳を入れることで香りはそのままの状態で、多少は胃にも優しくなるし、夜に眠れなくなる効果が軽くなると思うから」

「うむっ♪ エゼルはブラックも牛乳ブレンドも、どっちも好きだぞ♪」


「了解。それじゃ、準備するから2人とももう少し待っててね?」

「ありがとうございますなのです!」「ゆっくりでいいからな~♪」

 2人のお礼の言葉を背中に聞きながら、俺は飲み物の準備を始める。まずはリビングのキッチンスペースでお湯を沸かす作業をしないとかな?


 1分と数十秒後――お湯を沸かしながら、ちょっと空いている手持ち無沙汰な時間で――俺は今後のダンジョンの方向性について考えていた。

 今までに、簡単に思い付いただけでも「今後の具体的な方針」「俺達や魔物のパワーレベリングの方法」「魔物のための戦術講習会」「対天使用罠の設置」等々、エゼルやディルと話がしたいことはたくさんあるのだ。

 でも、今日は全員かなり頑張って無理をしたから、早めに眠ることの方が大切だろう。

 ダンジョンの入り口は滝の裏から森の中に移動したし、認識阻害や視覚阻害の結界をしっかり張ってあるから、鹿島さんの時のようなことは今後しばらくは起きないはずだ。


 でも今夜中に話せることは、ディルやエゼルと軽く話しておいて、明日の朝に早起きしてから打ち合わせをするのが良いのかもしれない。

 そして3人である程度の中身を詰めてから、数日以内にサキ姐さんやスラちゃん、ゴブさんやボルトさんと共有して魔物全体の意識改革をしていく方向にするのだ。


「ふっふっふ♪ 俺のダンジョンチートの時間が、ついに始まるッ!」

 思わず口に出して、俺は――羞恥に悶えた。俺もエゼルに毒されているみたいだなぁ……あぁぁぁあ。



(次回に続く)

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