第50話:「だんじょんますたーのろ〇こんエッチ(///∀)」
「きゅ~ぅ(*°Δ)ノ」
サキ姐さんが、何か可愛い悲鳴をあげて動かなくなってしまった。
あれ? えっと? あれ?
――これ、俺が悪いのッ!?
「――ちょっ、おにーさん! サキ姐さん! 大丈夫ですかッ!?」
慌てた様子で、ディルが俺達のところに駆けてくる。
「うん、ごめん、ちょっと大丈夫じゃないかも……(Tω)」
エゼルとサキ姐さんを抱きしめたままの俺が口にした、かなり弱気な助けを求める声。それを聞いたディルが、仕方ないなぁといった表情で苦笑する。
「ここだけの話、サキ姐さんは突発的なことに弱い人ですからね……おにーさんのこと、ああ見えてちょっと意識していたみたいですし、びっくりしちゃったんでしょう」
事実、さっきディルが「サキ姐さんは恥ずかしがり屋な乙女」だと言っていた。
もしかして、本当に男性に免疫が無いとか?? いや、でも――ありえるかも。この反応じゃ。
「……それは、悪いことをしたかな」
俺の言葉に、ディルが優しい目をして小さく首を横に振る。その表情は、年上の姉が失敗してしまったのを優しく見守る妹のような表情だった。
「いいえ、この幸せそうな顔を見て下さいよ、サキ姐さん、とっても嬉しそうです」
そんな風に言われてからサキ姐さんの顔を見ると……うん、何だかちょっと満足げな顔をしているように見えなくもない。
「私ちゃん的には、サキ姐さんが幸せそうに見えますから――もう少しだけ、おにーさんが抱きとめてあげてくれると嬉しいです♪」
他の魔物達が心配そうに見ているし、まだ挨拶を受けている途中だったけれど良いのかな?――とも一瞬思ったけれど、それを口に出すのは無粋な気がしたから、俺は首を縦に振ることに決めた。
するとその直後、魔物達の後ろから1人の水色幼女が現れる。
「……(あれ? 早速、サキ姐さんを押し倒しちゃったの? だんじょんますたーも積極的だねっ♪)」
悪戯っぽい声色で話しかけて来たのは、スライムの水色幼女ことスラちゃんだ。
「スラちゃん、俺はサキ姐さんを押し倒していないからね? 誤解されるような言葉は選ばないように!」
「……(なんで?)」
「いや、あのね?」
「……(だんじょんますたー、どうして?)」
子犬のようなウルウルとした瞳。
何だか、小さい子をいじめているみたいで気が引ける。――けれど、俺は学習したのだ。スラちゃんの精神年齢は、最低でも中学生くらいはあることを!!
「スラちゃん、もう俺は誤魔化されないよー? 見た目は幼女でも、スラちゃんはかなり強かな女の子でしょー?」
なるべく優しい声になるように気を付けながら、俺はスラちゃんに『もう効かないよ?』とアピールする。
でも内心、「ここで泣かれたら、俺一発で悪者だけれどなぁ……」とドキドキしているのは顔には出さない。
「……(ん~、強かかどうかは議論の余地があるとして――ボクは女の子だよ♪ 『だんじょんますたーのことが超大好きな』が頭につくヤツね♪)」
「ハイハイ、ありがとう」
多分、「悪戯したら良い反応をしてくれるから、とっても大好きっ♪」という意味だろう。まったく、この子は。
「……(む-! だんじょんますたー、ボクの扱いが適当だよぉ!!)」
「これは申し訳ありませんでした、お嬢様。わたくしめは、どのようにお詫びしたら許して頂けるでしょうか?」
「……(むむぅー! なんか、まだ馬鹿にされているっぽい!! でも――お詫びにボクの頭を撫でてくれたら許してあげる♪ ダメ?)」
「そのくらいなら、いつでもいいよ? でも、今はエゼルとサキ姐さんの2人を支えているから、少し待ってね?」
「……(もちろんだよ♪ その代わり、ボクを撫でる時には両手が溶けるくらい、いっぱい撫でてね♪)」
「うん。何気にスラちゃん、ハードル上げたよね?」
「……(何のこと? ボク、小さいから分からないよぉ~)」
「いやいやいや。どこから突っ込んで欲しいかな?」
「……(幼女に突っ込むとか、だんじょんますたーのろ〇こんエッチ(///∀)♪)」
水色の美幼女の姿で、頬を青色に染めるスラちゃん。
コレ、俺が悪いの?
幼女にロ〇コンとか言われてしまって、精神的なダメージが計り知れないんですけれど……(Tω)ノシ
(次回に続く)




