第43話:「そんなの知らな~い! ぁぅあぅあぁぁ~~~!!」
『そう! エゼルは不老不死のスーパーケモ耳天使に成り上るのだッ♪』
……いや、止めとこう。エゼルがなんか、幸せそうだから。
「さてと、それじゃエゼル、ディル、拠点に戻って――ちょっとのんびりしようか? 今日は色々なことが有ったから」
「それもそうだな(≡ω)b 異世界の甘いおやつ、期待しているぞ♪」
『私ちゃんも、美味しいのが食べたいです!』
『それじゃ、取りあえずショートケーキとチーズケーキを食べてみない? どっちも甘くておいしいよ』
『ショートケーキ? チーズケーキ? フルーツのケーキとは違うのか(≡ω)??』
『私ちゃんも知りません。えっと、どんなケーキなんですか?』
『それは――『水島おにーさん、ちょっと待った! そう言うのは食べてみる時のお楽しみに取っておいてくれよな♪』』
エゼルの言葉に、思わず笑顔になって頷いていた。
『それもそうだね、楽しみに期待していて良いよ?』
「ぉぅふ! それじゃ、急いで戻るぞっ!!」
エゼルに軽く手を引っ張られながら、俺達は拠点へと戻っていく。
その途中で、ダンジョンの配下の魔物の蘇生や今後の方針についての課題が頭を過ったけれど……首を振って今だけは考えないことにした。
「今は全力で“のんびりモード”をしても良いよね?」
「ああ、のんびりするのだ♪ おいしぃ、おやつ~♪ おやつ~♪ おやつ~ぅうう、いぇぃ!」
尻尾をフリフリしながら俺と手を繋いでスキップをするエゼル。そんな彼女に、何だか思いっきり癒されている自分がいた。
◇
リビングでショートケーキとチーズケーキを食べながら、俺達は「ダンジョンの今後の方針」や「ダンジョンの周辺の情報」について打ち合わせをしていた。
例えば、この世界の基本的な国の配置や冒険者の強さ、産業や文化の発展度などについて。
その内容を簡単にまとめると、この世界には人類圏だけでも6つの大陸が存在して、それぞれ中世ヨーロッパ程度の文明を持っている。各大陸に大国と小国が複数存在しており、大陸を統一した国家はまだ存在していないとか。
他にも、海を渡って大陸間を航行している大型船も少数であるが存在しているとか。
これは、俺や鹿島さんよりも前にこの世界に召喚された現代人が伝えた羅針盤の影響が大きい。とはいえ、造船技術がまだまだ発展途上のために、嵐や大型の魔物に遭遇すると遭難や難破する船もそれなりに有るとのこと。
「大陸間を安全に移動するには、天界の天使みたいに浮遊城に乗って移動するのが一番だな(≡ω)」
そんな風にエゼルが言っていたように、魔法を応用した技術がこっちの世界では発展しているため、俺の日本での常識が通用しない。このままでは、いつか大きな落とし穴に落ちてしまいかねないから、日本の常識とこっちの世界の常識を擦り合わせることが欠かせないと切実に思った。
文明や産業の発展についても、電気が無い代わりに魔道具が発展していたり、魔物やダンジョンから資源を採取する冒険者がいたりと興味深い部分が大きい。
なお、都市の衛生観念や空気の汚染度だけは、ちょっと許容できないなぁ……と、俺はエゼルから話を聞いて思ってしまった。部屋の中でオマルはちょっと遠慮したい。本当に、自分がDMという「DPさえあれば自由に物資を取り寄せられる」存在で良かったと思う。
そのような話を色々としていたら、あっという間に1時間くらいの時間が過ぎた。――そして、また1つのお菓子がエゼルとディルの口の中に消えて行く。
「水島おにーさん、エゼルに『4月の初採れイチゴの濃厚ミルクパフェ・2倍盛り』を1つ出してくれ(≡ω)b」
「私ちゃんは『京都〇〇屋の紫陽花水ようかん2種盛り』を1つお願いします!」
この2人、いつまで食べるのだろうか?
特に、ディルは「後で魔物達が歓迎会をしてくれるから、食べ過ぎちゃダメですよ?」とか自分で言っていたはずなのに。
俺は、ふと頭に思い浮かんだ言葉を口にする。
「……おばあちゃん、パフェも水ようかんも、さっき食べたでしょう?」
「「ぶーぶー! おばあちゃんじゃないですっ!!」」
俺の言葉に、エゼルの口がとがって、ディルの頬っぺたが膨らむ。……ああ、俺、地雷を踏んだのかもしれない。
とりあえず話をごまかすために、パフェと水ようかんをDPで取り寄せる。
「……コレで最後にするんだよ? 後で、魔物達が歓迎会をしてくれるんだから。せっかくの手づくりごはんが食べられないとか言うのは、失礼だからね?」
「もちろんだ(≡ω)! エゼルはたくさん食べられるから、任せろ♪」
「私ちゃんも、ちゃんと余裕を計算して食べていますよ? あと水ようかんなら20個は行けます!」
「……二人とも、そういえば言っていなかったけれど――あんまりお菓子を食べ過ぎると、お腹がポッコリしてしまうよ? お菓子は、たくさんの砂糖やクリームが使われていることが多いから」
「「――ッ!?」」」
何気なく口にした俺の言葉に、ディルとエゼルがビシリッと固まる。
「なっ……何で、それを早く言ってくれなかったのですかッ!?」
「そうだぞ? 何でお腹がポッコリなるのを教えてくれなかったのか? こーめーの罠か(Tω)??」
「いや、お菓子がカロリー高いこと、普通に知っているのだと思って……」
「「そんなの知らな~い! ぁぅあぅあぁぁ~~~!!」」
(次回に続く)




