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第41話:「指切りげんまん、半年後に迎えに来てください♪」

『それじゃ、鹿島さんの囲い込みを頑張って下さい! おにーさんなら絶対に出来ます』

 そう言ってくれたディルに『ありがとう』と返してから、俺は思考加速状態を解除する――前に、鹿島さんとの会話を思い出すことにした。

 話の途中だったから、違和感なく流れを繋がないといけない。確か、半年後に鹿島さんをカージナル王国から攫うという話をしていたよな? そして、必ず迎えに行くからっていう言葉を口にしたはずだ。

 ――よし、それじゃ、思考加速状態を解除しよう。


「はいっ♪ 迎えに来てくれるのを、私も準備をして、待っています(///ω)b」

 俺が思考加速状態を解除した後に聞こえて来たのは、顔を真っ赤に染めながらも、嬉しそうな鹿島さんの声だった。

 ……良かった、とりあえず格好付けてみただけの甲斐はあったらしい。


「私、水島さんの足手まといにならないように、一生懸命レベルをあげます。正直、お料理が苦手なんですけれど、野営のために練習します。あと6ヵ月の間に一人前になってみせますから……ごほうび、もらえますか? 半年後に」

 少し潤んだ瞳で見上げるように言われると、艶っぽくて精神的な破壊力が凄まじい。おにーさん、ドキドキしちゃうじゃないですか!

 でも、年下の子に良いようにされるのは、年上としてちょっと恥ずかしいから顔には出さない。


 鹿島さんの頭に軽く手を乗せて撫でながら、俺は言葉を口にする。

「無理をしなくても良いよって言っても、鹿島さんは無理するだろうから……『俺も、楽しみにしている』ってだけ言わせてね。『何でも』は難しいけれど、『俺が叶えることが出来ること』なら最大限の努力をするからさ?」

「はいっ♪ それじゃ、おにーさんの彼女にしてもらいます!」

 笑顔でそう言い切った鹿島さん。この子は、意外なところで大胆だな!


「……ダメ、ですか?」

 少しだけシュンとした表情を鹿島さんが浮かべた。ああ、もう、何か放っておけない可愛さを感じてしまう。

 あと、外野の2人がテレパシーでガンガン何かを飛ばしてくるけれど……うん、怖いから今はあんまり聞きたくないなぁ。

 エゼルは『抱きしめてから、熱いキスしろー(≡ω)ノシ』って煽ってくるし、ディルは『舌を入れて、とろっとろに調〇する(からだに教える)のです~(≧ω)!!』って女の子が昼間に言っちゃいけないことを叫んでいるし。なんか俺の頭の中、混乱を通り越して混沌としている気がする。


 でも、今はそんなことを口に出す訳にも表情に有す訳にもいかないから、なるべく優しい顔になるように気を付けて鹿島さんに言葉を返そう。……うん、顔が引きつっているのが自分でも分かるけれど、本当に仕方がないのです。

「鹿島さん? その答えは半年後にとっておいた方が良いと思うよ? その方が、きっと頑張れると思うから」

「そうですけれど……私はその半年を頑張るために――」

 そこで言葉を区切って、鹿島さんは少しもどかしそうな表情を浮かべる。

 多分、何か心のよりどころになるような、「安心できる材料」が欲しいって言いたいのだろう。


 高校生くらいまでの女の子って、結構、こういうロマン(無自覚な)チックな約束(束縛が)好きだよね。……うん、分かっていたけれど……俺のトラウマセンサーが反応して鳴り止まない。ちょっと危ないラインを超えそうな予感?

 ――とは言え、右も左も分からない異世界でようやく出会えた日本人。しかも、(マッチポンプとはいえ)死にそうだったところを颯爽と助けてくれたお兄さん。これで外見が好みだったら惚れるなぁ……って空気読めない俺でも分かってしまう。加えて鹿島さんは、俺達のダンジョンに取り込む予定の人材でもある。


 それならさ、多少無理をしても、優しいお兄さんでいてあげたいなぁって――

『おにーさん! いっけー!!』

『押し倒すのだ(≡ω)ノシ!!』

 ――思っていたけれど、はい、うちの子達がうるさいです。俺は結構、真面目にこれからの事を考えているのに。


 小さく呼吸を整える。でも、その間にも、時間は流れた。

「……」「……そうだね」

 気まずい沈黙が生まれたから、俺は肯定の言葉でその空気を壊すことにした。

「俺はさ、あと半年で『鹿島さんを一生守れるだけの力』を身に付けようと考えている。カージナル王国だけじゃなくて、『俺達の邪魔をするモノ全て』を弾き返せるだけの力を手に入れるから。だから――俺がそれを望むことの意味、鹿島さんに伝わって欲しいな」

 俺の言葉に、一瞬だけきょとんとした鹿島さん。


 ……伝わるよな? 伝わるよね? 伝わって下さい。

 女の子を一生守るって、俺、言いましたよ?


 一瞬、不安になった俺だけれど――鹿島さんもすぐにその意味が理解できたようで、ぱぁっと笑顔になってくれた。

「はいっ♪ 水島さんのお嫁さんになれるように女を磨いておきます! 冒険者としても、一人の女性としても、水島さんの隣に立つのにふさわしい存在に、この半年でなってみせます♪」

「俺も頑張るよ。異世界出身者であることを活かして、チートなレベリングや拠点開発を進めておくからね。詳しくは、秘密だけれどさ♪」

「私もがんばります!」


 思わず笑顔になって、お互いに視線を交わし合っていた。

 でもそろそろ、この2人きりの大切な話し合いの時間も終わりだろう。

「それじゃ、最後に、指切りをしようか?」

「……指切りですか?」

「ダメ?」

「だめじゃないですけれど……この年になると、ちょっと恥ずかしいというのか……嫌じゃないんですよ? でも――ぁっ♪」

 恥ずかしそうにしていた鹿島さん。

 俺は、その右手を少し強引につかんで、その小指に俺の小指を絡ませる。

 振り払われることは無いと思っていたけれど、正直、俺の内心は少しドキドキしている。拒否られたら、それで一気に距離感が遠くなってしまうから。


「……水島さんって、ちょっと強引なんですね(///ω)」

 左手を口元に当てて、鹿島さんが嬉しそうにそう言った。……良かった、嫌がられてはいない。

 鹿島さんは手で隠しているつもりだろうけれど、口元がにやけているのが俺にも見えている。何と言うのか、正直、自尊心がくすぐられて嬉しく感じてしまった。

「ごめんね、俺、どうしても鹿島さんと指切りがしたかったんだ」

「……はぃ♪ それなら、仕方ないです!」


 そう言って、お互いに小さく笑ってから――俺達は、ゆっくりとタイミングと言葉を合わせるように指切りをする。

「「指切りげんまん、半年後に迎えに行くよ(来てください)♪ 指切った♪ 迎えに行くよ(来てください)っ♪」」

 指切りをし終えると、俺達は再び笑顔になっていた。


 子どもみたいな行為だけれど、ここは魔法のある世界だ。俺達に『魔法と運命の神様』の加護がありますように。



(次回に続く)

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