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第37話:「このダンジョンで起こったことは、話しません!!」

「そのくらいの口止め料じゃないと、国としては『気まずい(安心できない)』んじゃないか? 近衛騎士団員が起こした不祥事が、この国だけでなくて、エゼルのいる天界まで伝わってしまうとかなり困ると思うぞ?――天使は世界中を飛び回っているから、天使達の間で噂が流れるのは、早いんだろうなぁ(≡ω) 困った困った♪」


 ……繰り返す、俺、また刺されるの嫌だよ? 多少ならば無理難題を吹っかけるのは良いけれど、相手に「あっ、これ、殺した方が良いや♪」って思われたら面倒だから。


 そんなことを考えていると、エゼルからテレパシーが飛んできた。

『ふふん、どうだっ(≡ω)!』

 いきなりのドヤ顔イメージ。

 めっちゃくちゃ自慢げなんですけれど、なんでですか?


 思考加速状態の中、ため息を飲み込んでエゼルにテレパシーを飛ばす。

『エゼル……さすがに、大金貨250枚はちょっと高すぎない? 相手さん、少し殺気立ってるよ?』

『ん? まさか、流石のエゼルも本気じゃないぞ? だって、ほら――大きな交渉をする時には、最初に無理難題を吹っかけるのが大事なんだろ? いわゆるハッタリというやつだ♪』

 ドヤ顔で親指を立てる(イメージを送ってくる)エゼル。ここは、名役者と言ってあげてもいいのかな?


『そう言うことね……了解♪ それじゃ、俺はエゼルをフォローする側に回るから』

『ラジャー♪ 思う存分、暴れまわってくれ!!』

 一瞬、暴れまわるのはエゼルの方じゃないのかな? って思ったけれど、あえて口には出さないでおく。相手のオジサン騎士やサフランさんの立場を考えると、「強敵(要注意)」なのはエゼルも俺も変わらないだろうから。


 思考加速状態を元に戻して、俺はあらかじめ考えておいたシナリオを進めるために、その言葉を口にする。

「エゼル、それ、高すぎるよ?」

 俺の言葉に、固まっていたオジサン騎士とサフランさんが再起動する。

「そ、そういってもらえるとありがたい」

「たっ、助かります……一応、上の方と交渉しないといけませんので……すみません」

 その気まずそうな言葉に、俺も苦笑して小さく頷く。


「そうですね。もう少し低めの金額で手を打ちますから、最初の約束通り――『契約に違反した場合には、相応の罰則が科せられる』という条件付きで『このダンジョンでの出来事を口外しない契約魔法』を結びましょう」

「……はい」

「……ああ、そうしよう」

 流石に、この状況では嫌とは言えないのだろう、少し言葉出てくるのに時間がかかったけれど、騎士の2人は頷いてくれた。

 鹿島さんも真面目な表情で首を縦に振る。

「私も大丈夫です! 私、このダンジョンで起こったことは、誰にも話しませんから!!」


 鹿島さんの言葉に俺も頷きを返す。

「ありがとうございます。それでは、『どんな罰則にするのか?』ということを決めないといけないですし――全員に納得して欲しいので、そちらで寝ているリカルドさん?……でしたっけ? 彼も起こして相談しましょうか?」

 そう言いながら俺が視線を残念イケメンに向けると、ちょうどエゼルが彼の手足をロープで縛ったタイミングだった。

「エゼルの方も準備は済んだぞ♪ 手足をこうしておけば、また暴れるようなことは出来ないからな(≡ω)」

 ちょっと得意げなエゼルの言葉に、俺も付け加えさせてもらう。

「本来なら、詠唱を防ぐために猿ぐつわを噛ませるべきなのでしょうが……そうなると、発言が自由にできなくなりますからね。魔法を発動させないようにだけ、サフランさん達からも言い聞かせてあげて下さい」


 ちなみにだけれど、こちらの世界には「無詠唱魔法」は存在する。

 しかしDMや龍族などの例外を除き、普通の人族や亜人族が無詠唱で魔法を発動させるには【無詠唱魔法スキル】が必須になるらしい。俺の予想に反して、この世界の強者に匹敵する天使や高レベルの勇者レベルでも、【短縮詠唱】や【圧縮詠唱】が関の山なのだとエゼルが言っていた。


 また、一部の例外として、魔法名だけで魔法の効果を発動させることができる【言霊】というスキルもあるけれど、初級程度の簡単な魔法じゃないと発動できないという制限がある。

 そのため、残念イケメンの彼が魔法を発動させようとするなら、何かしらの発音や詠唱が必須になる。思考加速をしつつ、詠唱の兆候が有ったら、即座に警告もしくは実力行使で制止をすればいいだろう。


 こうして、残念イケメンを起こした後、安全地帯に移動してから俺達の交渉は始まった。


 ◇


 そして大体15分程の時間が流れた。

「とても有意義な交渉ができたと思います♪」

「あ、ありがとう……。こちらも良い条件でまとめてもらえて助かった」

 笑顔でオジサン騎士と握手をする俺。


 ひとまず、短い時間だったけれども、俺と騎士達の交渉は無事に終わった。別の言葉で言い換えると、残念イケメンが暴走したことで、相手は「条件を飲まざるを得なかった」とも言えるけれど――俺達にとっては都合が良いことだから喜ばしい。

 なお、具体的な交渉内容はあまり思い出したくない。エゼルの予想外な暴投がちょくちょく入ったせいで、俺、3回くらい相手に刺されるかもって思ったから。


 ちなみに、この交渉で決まったことは3つだけだ。

「ひとつ、このダンジョンで起こったことを口外しない」

「ふたつ、俺達のことを口外しない」

「みっつ、約束を破ったら『男性騎士は声を失う』『女性騎士と鹿島さんは笑顔を失う』こととする。なお、俺達が許したらその限りではない」


 声や笑顔を失うという契約が可能なのか?――と日本にいた時の俺なら感じたと思う。でも、こっちの世界には魔法があるから、それなりのスキルレベルで契約魔法を使用すれば、しっかりと契約は守られることになる。


「――以上、間違いなく契約させてもらいましたよ? くれぐれも、口外しないという約束は守って下さいね」

 笑顔で告げる俺に、サフランさんとオジサン騎士と残念イケメンが、苦々しい顔で返事をする。

「……はい」

「……ああ」

「……くそっ」

 鹿島さんだけは、あわあわした表情でコクコクと頷いていた。


「あぅ、えっと――約束を守れるように、頑張ります!! ぜったいにこのダンジョンで起こったことは、話しません!!」



(次回に続く)

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