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第32話:「せっかくなので、2人同時に相手しますよ?」

「「俺達は――アルティ殿に決闘を申し込むッ!!」」

 恥ずかしげもなくそう言い切った男騎士の2人。さらに、残念イケメン騎士が言葉を続ける。

「そして俺達が勝ったら、このダンジョンの発見報告の権利は我々のものだ!」


 そこに女騎士が止めに入ってきた。

「ちょっと待ちなさいよ、あなた達! 命の恩人相手に恥ずかしくないの!?」

 長い金髪を揺らし、白い肌を真っ赤に染めて問いかける女騎士。多分、彼女は「まともな人」なのだろう。

 俺の中での評価が少し上がった。

 女騎士って呼び方じゃなくて、サフランさんと呼ぶことにしよう。

 ちなみに、鹿島さんは俺達を見てオロオロしている。


「ぐっ、恥ずかしくなんかna――「私が恥ずかしいから止めて欲しいのッ!!」」

 そう狭くない安全地帯に響き渡るような大音量で絶叫したサフランさん。

 男騎士と鹿島さんがその言葉に固まっているけれど……男性騎士の方を少しだけフォローしておこう。

 だって、決闘した方がスムーズに話が進むから。


「俺としてもその条件、飲みましょう。心臓が破壊されるとダメですが、手足の切断くらいならば治癒できる中級ポーションも人数分の持ち合わせがありますし、エゼルは手足の欠損も完全治癒させることが可能な【特級回復魔法(エクストラ・ヒール)】が使えます。でも――」

 にこっと笑って言葉を区切る。

 俺が提案した「怪我なら、死ななければ完全に治せる」という安心感は、決闘を拒否できる理由を1つ潰すことになるのだから。そして、ゆっくりと口を動かす。

「――その代わり、こちらが勝ったら『このダンジョンでの出来事を口外しない』って契約魔法で誓ってもらえますか? 口約束だと不安なので」


「その言葉、本気なのですか!?」

 信じられないといった表情のサフランさんに対して、残念男性騎士2人は盛り上がる。

「よしっ! 言質は取ったぞ!! 決闘だ!!」

「うむっ! 決闘するぞ!!」

「あんたらは煩いから、少し黙っていなさい!!」

「「――ひっ!?」」

 サフランさんのドスの効いた声で、男騎士2人が硬直する。


 そして、彼女が俺に心配そうな表情で話しかけて来た。

「アルティ殿? 本当に決闘をしても良いのですか? 一応、こいつらはこんな最低な人間ですが、仮にもカージナル王国の近衛騎士団5番隊副長とその補佐です。死なないように手加減はするでしょうが、下手したら大怪我させてしまうかもしれませんよ?」

「いえいえ、大丈夫です。俺の方にもそれなりに勝ち目があると思ってお話を受けるのですし――それに、決闘ならばシンプルで分かりやすいですよね? 命知らずな――いえ、恩知らず(・・・・)なお二方には、分かりやすくて丁度良いと思いますよ♪」

「こいつ!?」「……誰が恩知らずだと!?」


「……はぁ~っ、あなた達は、何を言っても引かないって感じですね。分かりました、気が済むまで決闘して下さい。ただし、殺すのだけは禁止です。故意だろうが事故だろうが、相手が死んだ場合にはその時点で反則負けとします」

「承知しました」

「ああ、俺達もそれで良い」「右に同じく!」


 サフランさんが、俺達の返事にもう一度小さくため息をついてから、ゆっくりと宣言する。

「それじゃ、決闘にお互いが掛けるものを提示して下さい。なお、お互いにバランスが取れるものを掛けるように!」

「んじゃ、俺達は――「私が欲しいのは、こちらが勝ったら『このダンジョンでの出来事を口外しないって契約魔法を結ぶこと』です」」

 俺はあえて相手の言葉に被せていた。

 相手が冷静さを失ってくれるのなら、どんどん煽るよ?


「繰り返します、俺が欲しいのは、こちらが勝ったら『このダンジョンでの出来事を口外しないって、あなた方4人と契約魔法を結ぶこと』です。『契約に違反した場合には、相応の罰則が科せられる』という条件付きで」

 俺の言葉にサフランさんが慌てたような声をあげる。

「っ、ちょ! 私や勇者様も罰則付きの契約魔法を交わさないといけないの?」

「そうでしょう? こういうのは、連帯責任だと思いませんか? それに、こちらの2人だけと契約しても、貴女や鹿島さんが口外しちゃうと意味が有りませんから」


 俺の説明に納得がいったのだろう、サフランさんが渋々といった様子で首を縦に振る。

「……分かったわ。勇者様もそれで良いですか?」

「はい、私は元々口外する予定はありませんでしたから、大丈夫です」

「そうですよね。……で? うちの恥知らずの方は、何を求めるの?」

 恥知らずと味方であるサフランさんに冷たく言われて、残念イケメンと残念オジサンが一瞬だけ言葉に詰まる。


「……っ、俺が勝ったら『このダンジョンの発見報告の権利は我々のものにすること』だ」

「了解。確かに、ダンジョン発見の名誉と利益を考えたら、口外を禁ずる罰則付きの契約魔法を交わすのは自然な事ね。双方、それで合意する?」

「あ、ちょっと待って下さい」

 俺の言葉に、残念騎士コンビが嫌そうな顔をした。

「ん? 今更、やっぱり無しにして欲しいとかはダメだぞ?」

 残念オジサンの言葉に、俺はきっぱりと首を横に振る。


「いえいえ、そんなつまらないことは言いませんよ。賭けで得られるものに、追加させて頂きたくて」

「はんっ! ここに来て、自分の取り分を増やそうって言うのか?」

「ええ、俺はちょっと欲張りなので追加させて下さい。俺が負けた場合にも、ダンジョンのことを口外する契約魔法を使うみたいですから――最初に俺達がこのダンジョンに居たことのバランスを考えると、俺達の報酬をもう少し増やすのは当然の権利ですよね?」

「却下sur――「俺が勝ったら、追加に鹿島さんとサフランさんの笑顔を下さいませんか?」――は?」

「いや、だから、俺が勝ったら、鹿島さんとサフランさんの笑顔が欲しいんですよ♪」

「意味わからねぇ。何を格好付けているんだよ?」

 嘲笑するように笑ったリカルドの態度に、俺は思わず心の中で笑ってしまった。今は意味が分からない方が好都合。だってコレは、最終的に強力な拘束具になるのだから。

「笑わないで下さいよ。勝った後に、素敵な女性と可愛い女の子に笑顔で迎えてもらえるのって、嬉しいと思いますけれどね?」


 そう言って視線をサフランさんと鹿島さんに向ける。

 苦笑しながらサフランさんが俺の方を見ていた。

「私は好きだよ、そう言うの♪ アルティ殿が勝ったら、満面の笑みで祝福してあげるよ」

「わっ、わた、私も……アルティさんのこと好きですっ!!」

「「「……」」」

 テンパっているのだろうか? いきなり愛の告白をされてしまったような気がするけれど……うん、気付かなかったことにしよう。サフランさんとエゼルは苦笑しているし、残念イケメンとオジサン騎士は死んだ魚のような目をしているけれど。


「ありがと、俺も鹿島さんのこと嫌いじゃないよ♪」

 そう言って、鹿島さんの頭をポンと軽く撫でる。

「ひゃ、はぃっ♪ アルティさんのこと大好きでsu――って、%&$*+¥(私、何言っているの)ッ!?」

 遅らせながら自分が口にしたことに気付いたお姫様は放っておいて、俺は残念騎士2人に視線を向ける。


「さて、それじゃお姫様方の同意も得られたことですし――決闘を始めましょうか?」

「おい、リカルド、先に行け!」

「了解です」

「え? ちょっとソレは無いですよ?」

「ん? アルティ殿は何か不満があるのですか?」

 俺の言葉に、残念イケメンが反応する。

 せっかくだから、ここは思いっきり格好付けさせてもらいますよ?


「はい、とても不満ですね。――せっかくなので、2人同時に相手しますよ?」



(次回に続く)

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