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第26話:「ぅにゃにゃ~~~~~~っ!?」

「了解だ♪ それじゃ、打ち合わせ通りにいくぞ?」


 その言葉にうなずいてから、エゼルと一緒に俺は洞窟の中を進む。

 ちなみに今俺達がいる場所は、鍾乳洞にはなっていない、普通の岩と土の洞窟だ。

 ディルいわく、「私ちゃんの趣味ですよ? 最初からいきなり鍾乳洞よりも、洞窟を進んだ後に綺麗な景色が待っている方が素敵ですから……まぁ、本音を言うならDPの節約ですけれど♪」と言って苦笑いをしていたけれど、その判断は実際に悪くないと俺は思う。


 うちのダンジョンは、まだまだできたばかりで準備不足。

 エゼルに聞いたけれど、うちのダンジョンの入り口は、森の中にぽっかりと存在する「滝の裏側」にあるらしい。だから、入り口付近は普通の洞窟に擬態させておきたい。そうしないと、隠蔽魔法を突破した相手の興味を引いて、奥まで誘引してしまう。

『まぁ、天界の実働部隊にもエゼル並みのダンジョン発見能力を持つやつは、殆どいなかったけれどな(≡ω)♪』

 俺の思考をディルを経由して読んでいたのだろう、歩きながらエゼルがドヤ顔でテレパシーを飛ばしてきた。移動がメインだから、思考加速はしていないけれど。


「ん? 普通は、DCの隠蔽魔法を見破れないってこと?」

「そうだぞ。普通の天使だと、違和感に気付いてもダンジョンの入り口を見つけることが出来ない――いや、そもそも違和感に気付きすらしない天使も少なくないぞ? 普通はダンジョンがありそうな気配を察知したら、人海戦術でそれっぽい場所を探して見つけるんだ。エゼルのように、一発で入り口を見つけられるやつの方が珍しいからな」

 確か、エゼルは自分の事を落ちこぼれって言っていたけれど……それは間違いだと思う。

 実はかなり優秀な天使じゃないのかな、周りが評価していないだけで。新米DMやDCにとっては、天敵ともいえるよね?

 とはいえ、エゼルのような天使はごく少数らしいから、少しは安心できるけれど。


「……他人事だけれど、よくそんな状態で他の天使は、ダンジョン討伐のお仕事ができるよね? 天界は自立型のDCとDMを倒すのを仕事にしているんでしょ?」

 ここで注意したいのは、天界は「ダンジョンを完全に潰すのではなく、自立型のDCとDMだけを殺すことのみを推奨している」ことだ。

 言い換えると、天使達は、自立型ではない宝石タイプのDCはそのままダンジョンに残すらしい。


 その理由は何故か? 答えは「安全にレベルを上げられる、養殖ダンジョンが欲しいから」だとエゼルが教えてくれた。エゼルいわく「天界は、養殖ダンジョンを人間に与えることで、信仰と地位とお金を得ているんだ」とのこと。

 もちろん、ダンジョンを攻略できる上級冒険者や勇者なども、養殖ダンジョンを作ることが出来れば莫大な報酬をもらえる。だから、天界と同様に、宝石タイプのDCだけは残すことが多いらしい。


「ちなみにだが、水島おにーさんが今考えているみたいな「養殖ダンジョン」、普通は3年に1~2か所作れれば良い方だからな?」

「それって、ちょっと少なくない? 今回だけでも、ディルの同期は39人いるらしいからさ?」

「うんにゃ、攻略されたダンジョンの中には、養殖ダンジョン化できずに消えてしまうダンジョンも3~4割くらいあるんだ。ディルに聞いたが、『新しいDCが誕生して、新しいダンジョンが生まれるのは10年に1回だけ』らしいからな。10年に1回40人の新しいDCが生まれるとしても、そのほとんどは天界や冒険者、勇者に狩られているという計算になる」


「……DMとしては、あまり聞きたくない情報だったかも」

「いや、今のうちに現実を知れて良かっただろ? ちなみに、DCとDMを失った養殖ダンジョンは、規模によって差はあるものの大抵10~15年以内には、魔素を失って消滅するからな。『おかげで、じゅよー(?)ときょうきゅー(?)のバランスは上手く取れている』って、エゼルの元上司がよく言っていた」


「……よく、その情報を知っていたのに、エゼルは俺達の仲間になろうと思ったね?」

「ん~、あのままじゃ、エゼルは97%くらいの割合でディルに殺されていただろうし、命を救ってくれた水島おにーさんには恩がある。それに――何よりも、水島おにーさんと一緒にいると楽しそうだ(≡ω)」

「あはは……ありがとう。期待を裏切らないように、がんばるよ」

「ああ、頑張ってくれ! 水島おにーさんには、エゼルのファーストキスを捧げたんだからな? 期待しているぞ」


 そう言って、親指を立てた若干赤い顔のエゼルと視線を交わす。

 エゼルと移動しながら話している間に、俺達は落とし穴があった場所(・・・・・・)までやって来ていた。

 そう、落とし穴があるのではなく「あった」という過去形になる。その理由は、女勇者の恐怖を煽るために落とし穴のフタを閉めたから。消化液に満ちている落とし穴に落ちた状態で、さらに上が閉まったら、普通の神経では5分と耐えることが出来ない。


『なぁ、エゼルは思うのだが……ここだけの話、ディルって鬼chiku――『エゼルさん? 聞こえていますよ?』――悪い、言葉を間違えた。ココだけの話、ディルって天才だよな。エゼルは天使だから魔力封じをされた場所でも空が飛べるが、普通のやつには脱出が難しい』

『一応、それが目的ですからね? その後に助けるか否かは別としてですが』

『構造がシンプルだからDP的にも量産可能だし、落ちたらほぼ助からないけれどな♪』

 2人が楽しそうに会話をしている間にも、女勇者達の命の光は弱くなっている。

 洞窟の中に、ふわふわと浮かんでいる主のいない魔法の光球――女勇者達が松明代わりに魔法で作った光――が、徐々に暗くなってきているのだから。


『ねぇ、ディル、エゼル? 話しているところに悪いけれど、お仕事を始めようか? 多分、女勇者の精神力が、あまり長くはもたないと思うんだ』

『そうですね』『そうだな』

『んじゃ、エゼル、作戦通りにお願いね?』

『らじゃー♪』

 そう言うと、エゼルは魔法で自分用の光球を生み出すと、真っすぐにフタが閉じた落とし穴の上に歩いて行く。そして――


「ぅにゃにゃ~~~~~~っ!?」

 悲鳴をあげながら、落とし穴の中に落ちて行った。



(次回に続く)

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