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第13話:「初めてだから、優しくしてくれよ(///_ )」

 ディルの精神粉砕(「ああいうのが)破壊攻撃魔法(好きなんですね~♪」)から、まだ復活できない俺の目の前で、ディルとエゼルさんの会話が続いている。


「私ちゃん達の仲間になるのなら――この世界を敵に回す覚悟を持って下さいね? 私ちゃん達の最終目標は、世界征服ですから♪ 世界を征服して、みんなが平等に暮らせる平和な時代をつくるのです♪」

「せかいせーふく? ディルと水島おにーさんは、本気で世界を相手にするつもりか?」

「もちろんです。今はまだ、『将来的には』という言葉が頭に付くのが残念ですけれど……」

「そうか。いや――世界の敵に認定されているDMやDCが安心して暮らすためには、それなりの規模のダンジョン&力を持たないとダメだよな。うんうん」


 こくこくと頷きながら、エゼルさんが言葉を続ける。

「あい、分かった! エゼルもその世界征服、喜んで手伝うぞ! 仲間になるって言ったからな、いつまでもどこまでも一緒だ(≡ω)b」

「ありがとうございます! それじゃ、コレでエゼルさんは私ちゃん達の仲間ですね♪ それじゃ、おにーさんとのD(ダンジョン)契約を早速してみましょうか♪」

「ああ、そのD契約というのをしないと、水島おにーさんもディルも安心してエゼルを回復できないだろうしな。ちゃちゃっと済ませて、エゼルはこの『エゼルにしか効かない毒の粉』から解放されたいぞ!」


「それじゃ、おにーさん、ブチュチュ~ンとやっちゃってくださいな?」

「水島おにーさんとブチュチュ~ン?? えっと、何をするんだ(≡ω)?」

 不思議そうな顔をしているエゼルさんに、ディルの顔が笑顔に変わる。

「何って、契約のキスですよ? 決まっているじゃないですか♪」

 一瞬、時が止まった。


 そして、ゆっくりと動き出す。

「ねっとりと、うっとりと、艶やかに『ブチュチュ~ン』しちゃいましょう!!」

 嬉しそうに両手を合わせるディル。

 何というのか、お見合いのセッティングが好きな親戚の叔母さんと同じ雰囲気がした。

「ディル? 俺のDMとしての記憶が正しければ……ダンジョンマスターと契約するのは、血の契約でも良かったよね? お互いに、親指に傷をつけて触れ合わせながら誓いの言葉を口にするってやつ」

 衝撃的な言葉でディルの精神攻撃から無理やり覚醒させられた俺に、ディルがフルフルと首を横に振る。

「今回はダメです! エゼルさんとおにーさんの間に、大きなレベル差があるので使えません。対等かそれ以下の相手にしか血の契約は使えませんから!!」

 ……マジで?

 俺のDMの知識の中には、そんな制限は見当たらない。


「それ、本当なのかな? 俺のDMの知識には――「本当ですっ! おにーさんは私ちゃんを疑うのですか(Tω)ノシ」」

 若干、流れる微妙な空気。

 なんとなくというのか、かなり居心地が悪い。

「……いや、ゴメン。新米DMの俺よりも、ディルの方がこの世界のダンジョンのことは詳しいよね……?」

「むっふ~♪ 分かってくれればいいのです! それではbu――」

 ブチュチュ~ンしちゃいましょう! と言いかけたであろうディルの言葉を、俺は遮った。


「ねぇ、ディルは何でそんなに積極的なの? さっきまで、ほら、『ヤっちゃう』の時には大反対したじゃない?」

 素朴な疑問かつ現状の打破が出来そうな俺の指摘。でも、ディルはにこっと笑顔を浮かべた。

「あの時と今では状況が変わっているのです♪ 仲間になると決まったのなら、『正妻のよゆー』ってやつを見せつけて、ポジショニングをして、しっかり躾をしてあげないとダメなんですぅ♪」

 うん、女の子って怖いな~。下手に首を突っ込むと俺まで巻き込まれる匂いがプンプンする。

 ……まぁ、エゼルさんは可愛いし、ディルの公認で軽くキスしても良いのなら……俺にとっては役得でしかない。

 ――と思うことにしよう。今日出会った可愛い女の子とキスをするって、自分でも最低だと思うけれど、ダンジョンマスターとしての契約に必要なことなんだから、諦めてスマートに済ませよう。それが大人の余裕ってやつだと思うことにして。


「さて、おにーさんは納得してくれたみたいですから、早速、キスしちゃいましょうか♪」

「エ、エゼルは納得していないぞ?」

「いやいや~、何を言っているんですかエゼルさん? おにーさんのこと、嫌いですか?」

「き、嫌いじゃないが……(///ω)ノシ い、いやほら、まだエゼルと水島おにーさんは出会ったばっかりだし……エゼルにも、心の準備ってやつが……」

 しどろもどろになっているエゼルさんの言葉を、ディルがばっさりと切り捨てる。

「何を甘えたこと言っているんですか!? 今はキシ〇トールでステータスが低下しているから良いものの、D契約という首輪が無い状態でエゼルさんに完全回復されちゃうと、私ちゃんとおにーさんは戦々恐々なんですよ?? 本来なら、プチッとコロコロされるか、四肢を切り落として『DPタンク』としてダンジョン内の牢屋に死ぬまで監禁&捕獲DPをGETする『生きた素材』にされる運命だったのですから、キスくらいちゃちゃっとやっちゃいましょうよ~!!」

 何気に、ディルの敵対者に対する扱いが酷い。

 おにーさん、ちょっとドン引きしそう。――っていうか正直した。


「う、ううっ……分かった! キスすればいーんだろ? エゼルに二言は無いっ! ディルと水島おにーさんの仲間になるのに必要だから、今からするキスはノーカンだ!!」

「うふふっ♪ ノーカンだなんて言えないくらいブチュチュ~ンしないとだめですよ? メロメロのとろっとろな、頭が馬鹿になっちゃうくらいの激しいキスをおにーさんとしないと――「ディルさんや? 俺のハードル上げるのは止めてくれないかな!? 俺、そんなテクニックないですから……悲しいことに(TωT)」――あれ? 私ちゃんを足腰立たなくさせたのは、どなたでしたっけ?」

「……俺じゃない」


 契約のキスでは、まぶしい光が発生したけれど、ディルが立てなくなったなんてことは無い。多分ソレ、ディルの乙女妄想補正だから――なんて言ったら、怒るんだろうな。

 うん、一瞬だけディルが違う人とキスしている様子を想像してしまって、何かムカムカしてきた。気持ちを切り替えよう。後で、ディルの頭をいっぱい撫で撫でするんだ、俺♪


 俺がそんな現実逃避をしている間に、エゼルさんは覚悟を決めたみたいだ。

 かなり紅くなった顔を俺に向けながら、若干うるんだ瞳でじっと見つめてくる。

 サラサラの長い銀髪。真っ白なきめ細かい肌。緊張しているのだろう、彼女の尻尾と頭の狼耳とが元気なく萎れている。


 そして――エゼルさんがゆっくりと俺の胸の中に潜り込んで、ぎゅっと抱きついてきた。

「エゼルは……初めてだから、優しくしてくれよ(///_ )」



(次回に続く)

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