第12話:「この世界を敵に回す覚悟を持って下さいね?」
「やめろっ! 止めるんだ! エゼルはお前なんかに屈しnai――「コレ、小麦粉ですよ?」」
「――知っている!」
……ガチで怒られた。何故に!?
「えっと? 知っているのに、その反応なのですか??」
かなり戸惑っている俺を見て、ちょっと唇を尖らせたエゼルさんがため息をつく。
「もぅ……水島おにーさんはノリが悪いぞ? もうちょっと、空気読める人だろ、本来なら。ほらっ、水島おにーさんは『悪いオーク』の役作りを頑張ってくれ! エゼルは、くっころ女騎士を頑張るから!!」
「あの、これに何の意味があるんですka――「エゼルが楽しいんだから、付き合ってくれ!!」――あっ、ハイ。頑張ります……」
なんとなく理解した。このケモ耳娘は、テンプレのロールプレイがしたかったらしい。
まぁ……おままごとに付き合えば「仲間になってくれる」ことを考えたら、悪くないのかな? うん、そう思って付き合うしかない。うん、ちょっと恥ずかしいけれど、付き合うしかない。
――さぁ、それじゃ、気合を入れて悪者オークをやってみますか♪
「え~こほん。それじゃ、もう一度始めから行きますね」
「了解だ(≡ω)b」
「……もう一袋行ってみようか? ほら、コレを吸ったら生きる気力が出ると思うよ?」
「――ひぃい! 止めろ!」
「ふっふっふ。いつまでそんな強気でいられるかな? お前の身体は正直だぞ?」
「くっ――エゼルはお前なんかに屈しないッ!!」
「ほらほら、白い粉がお前に掛かるぞ~♪」
「ひゃぅっ!? だ、だッ、ダメェーー!」
あれ?? 何か、この絵面……めちゃくちゃ犯罪っぽいような気がする?
でも、なんか楽しいかも。エゼルさんがノリノリなのも、分かる。
そんなことを考えた――次の瞬間、冷たい空気で背筋が凍った。
「おにーさんっ♪」
俺の耳に聞こえたのは、ディルの声。
げしっと俺のふくらはぎを軽く蹴ってから、ディルが弾んだ声で言葉を口にする。
「と~っても楽しそうですね~っ♪ 私ちゃんも混ぜて下さいな?」
……ごめん、ディル、つい楽しku――じゃなくて。役にハマっていただけ……ですよ?
「あれ? おにーさん、さっきの元気はどこに行ってしまったんですか?」
笑顔のディルさん、マジで可愛い。目が笑っていれば、ですけれど。
そんなことを考えていると、テレパシーがディルから飛んできた。
『そういえばこの状況、『薄い本』の絵面と似ていますよね♪♪』
……ディルさんよ? そんな「あだるてぃー」な知識はどこでゲットしたのかな?
薄い本とか、お兄ちゃんは悲しいよ……。
『え? おにーさんの部屋の本棚には、薄い本が並んでいたんですよね? おにーさんの記憶を覗いてみたら「お気に入りコーナー」に入っていたので……特に『タイトル:白い粉を求めて身体を売る元女騎士物語~白濁する思考と身体~』は、何度も何度もおにーさんが夜に読んでいたから、脳の記憶の中にも鮮明に残っていて……えへへ♪ ハードなのが、好きなんですね~(///ω)キャー♪♪』
『きゃ~~~~ぁ~~~ぁぁ!!!』
思わず地面に倒れて、身悶えする。あの本を知られているということは、マニアックな「アレ」や「ソレ」や「コレ」等々が、多分知られているということだろう……。前の世界にいた自分自身を殴りたい。
違うんだ、そう、違う。日本の文化の多様性が悪いんやぁ……otz
身悶えしている俺の耳に、美少女2人の会話が聞こえてくる。
「?? ……おい、そこの水島おにーさんはどうしたんだ? いきなりぶっ倒れたが、発作でも起こったのか??」
「いえいえ、おにーさんは自分の秘密を知られて、くっころ状態になっただけですから♪」
「?? 良く分からんが、まぁ良い。エゼルのお遊びにも、ちゃんと付き合ってくれたからな。水島おにーさんなら、信用しても大丈夫そうだ(≡ω)♪」
「おにーさんは、良い人ですから、信じても大丈夫ですよ! それじゃ、私ちゃん達の仲間になってくれるんですね?」
「ああ、色々と迷惑を掛けるかもしれないが仲間にしてくれ♪ それに、お前も悪いDCじゃなさそうだし。――最初は済まなかったな、吸血鬼型ダンジョンコアの悪口を言って」
「いえいえ、その分、おにーさんと仲良くなれましたから大丈夫ですよ、水に流します♪」
「ありがとうな。――っと、そうだ。水島おにーさんとの話を聞いていたかもしれないが、エゼルのことはエゼルと呼んでくれ♪」
「分かりました、エゼルさん。私ちゃんのことはディルと読んで下さい。本名はカンディル・バイオレッドという名前ですけれど」
「ああ、ディルと呼ばせてもらうぞ(≡ω)b」
「了解です♪ あ、そうだ! 仲間になる前に、1つだけ確認させて下さい」
「ん? 何だ?」
自己紹介と仲直りを終えた2人の会話。それが一瞬だけ途切れる。すぅっとディルが息を吸い込む音。
そして聞こえてくる、ディルの綺麗な声。
「私ちゃん達の仲間になるのなら――この世界を敵に回す覚悟を持って下さいね? 私ちゃん達の最終目標は、世界征服ですから♪ 世界を征服して、みんなが平等に暮らせる平和な時代をつくるのです♪」
(次回に続く)




