七話
大聖堂が粗方完成した。
「よしっ! 大聖堂もほぼ完成したし、エラちゃんが来るのを待つだけだね」
ボクは尖塔やアーチの具合が素晴らしい、『植物創造』で建てた大聖堂を見上げていた。
チェコの聖ヴィート大聖堂のような、繊細さと荘厳さを併せ持つ素晴らしい大聖堂が出来たなぁ。生前には世界のゴシック建築を見て回るなんて出来なかったから、今世では美しいゴシック建築を広めたいよ。いずれは、世界中にゴシック建築が……。ふふふ。
ごほん。とりあえず、大聖堂も窓なんかの植物を使わないもの以外は完成したし、森もだいぶ広がった。だから今日は、休息日にしようと思うよ。
考えてみれば、この世界に来てからお誂え向きの能力があるのに、自然と戯れてなかったからね。
というわけで、ボクは早速森との境界にある柵を通って森へと向かう。最近気付いたことではあるけど、ボクが森の中に入ると歩きやすいようになのか、植物たちがボクの歩行をサポートしてくれるんだ。
邪魔な根は自ら退けて、岩なんかがあればツタを手すりにしてくれたり、と言った具合だ。喉が渇くと、どこからともなく梨などの水分量が多い果物が献上されることだってある。
別にこれはボクが能力を使っている訳ではなく、植物たちが己の判断で行動しているみたいだ。ありがとう、愛しい我が子よ(ドヤ顔)!
でも、この自律行動は植物だけが対象みたいで、虫や鳥獣、魔物などには意味をなさない。この前なんて、目の前に20センチくらいの蜘蛛がいて、絶叫してしまったくらいだ。その時に、虫はボクに近付けないように植物たちにお願いをしたほどだ。多足生物ほど苦手なものはないんだ、ボクは。
そんなこんなで、森に入って五分ほど。自然な森ならギャップなんて呼ばれる場所になるのだろうけど、ここは全て人工。ただそこだけ木を生やさなかった空間だ。
ここの空間には鎮静効果のある木を一本だけ植えて、その周りにハープを持った女の子と鳥獣がいるような、そんな場所にしたいんだ。女の子と寄り添う動物って、すごく絵になるよね。
『植物創造』
拓けた場所に一本の木を植えた。鎮静効果がある木だから……君の名前は、「リラックスん」だよ(壊滅)!
早速とばかりに、リラックスんの周りには熊や鹿、小鳥が集まってきた。植物は少なくても、結構しぶとく生き残っているものなんだね。
いつかのハイエナとジャッカルの間みたいな肉食獣、エナカルが寄り添ってきた。まだ少し体は小さいけど、元気に生きているみたいだ。
ボクも動物たちに混じって、弦が竹ひごで出来たハープもどきを弾いた(弾けない)。
びろーん、と間抜けな音がなるけど、仕方ないんだ。
☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡
「ただいまっす〜!!!」
エラちゃんと別れた日からおよそ2週間。荒野や山を越えて、商品を売りに行っていたエラちゃんが多くの取り巻きと共に帰ってきた。
何が起きたのかは不明だが、エラちゃんは200人もの取り巻きを増やせるくらいの働きをしていたみたいだ。あるいは初めから取り巻きがいて当然の、やんごとなき身分だったか。……後者の可能性は低いけど。
「お、おかえり……?」
そんな働き者のエラちゃんに比べて、ボクはどうだろうか。この2週間、ほとんどを大聖堂のビジュアルを追求したり、森で動物と戯れていただけではないのか。
ボクは、エラちゃんの取り巻きの多さと最近の行動を省みた結果、一瞬の思考停止に陥った。
「どうしったっすか?」
「な、なんでもないよ! それより、久しぶりだね。会いたかったよ!」
「フロラちゃ〜ん! 自分も会いたかったっす!」
ボクとエラちゃんは、どちらともなく抱き着きながら飛び跳ねて再開を喜んだ。……無粋な邪魔が入るまで。
「え、エラさん? あっしらはこれからどうすればいいんで?」
「……なんすか?」
「い、いや。睨まんでくださぁ!」
「エラちゃん? 彼らは?」
頭部が寂しい男性が、蛇に睨まれた蛙のようだったので、ボクが間を取り持った。すると、渋々と言った様子で説明を始めた。
「……彼らは、自分がフロラちゃんから仕入れた商品を売りに行った村の人達っす。もちろん全員いる訳では無いっすけど」
どうやらいくつかの村を回って、ボクの拠点について説明してくれたらしい。そこで、口減らしついでに先遣隊的な扱いとして労働力にならない女子供を送ってきたみたいだ。男性は彼一人だけで、彼は奥さんと六歳の子供とこの先遣隊に立候補したらしい。……どうも、村での扱いが良くなかったのもあって快く送り出されたみたい。
こんな世界なのに、人間は逞しいというか、図太いというか……(呆れ)。
「この禿げたオッサンはビイルさんっす。先遣隊のリーダーみたいな地位にいて、ここまでの旅でも力仕事なんかで活躍していたっす。
ビイルさん、彼女はフロラちゃん。使徒様っす」
「使徒様! お願いしまさぁ、あっしらをここに置いてくだせえ!」
お酒みたいな名前のおっさんが、ボクの前で跪いている。
「さ、様って……なんか恥ずかしいなぁ。でも、ここに住むのは大歓迎だよ! さあ、まずは親睦を深めるために食事会にしよう!
働かざるもの食うべからず。されど、腹が減っては戦はできぬ。だからね!」
ボクは先遣隊のメンバーと親睦を深める為にも、そしてこれからの仕事詰めの日々の為に、痩せている彼らの腹ごしらえをさせることにした。
まずは大聖堂前を広場にするため、ベンチをいくつか創造する。
『えぇぇ!!』
みんなの歓声が聞こえて、恥ずかしくて顔が熱いけど無視する。次は広場の真ん中に、大鍋のカレーやライス、パン、スープなんかを創り出していく。
味噌汁なんかも用意しようと思ったけど、地球と違って日本の発酵食品に慣れてない彼らには、合わないかもしれないから今回はなしだ。
あとはビイル、もといビールやエール、ワインなんかのお酒、水、ジンジャエール、紅茶なんかも出してみた。
「さあ、みんな注目!」
能力に驚いていた彼らに、ボクは傾注させ自己紹介する。
「ボクの名前はフロラ・カバリー。女神サマにこの世界の食料事情を解決するように、って派遣されたんだ。これからボクたちは一緒に暮らすんだし、協力していこうね!
それじゃあ、みんな好きなのを食べて親睦を深めよう!」
ボクが声を掛けると、みんな一斉にカレーに向かっていった。女の人が一斉に動くのは、少し怖いね。
ここで作者の壊滅的なネーミングセンスが明らかになったわけですね……
人型生物ならまだしも、新種生物なんて名付ける機会ありませんしね(言い訳)
どうでもいいことですが、私は絶望的なまでに蜘蛛を筆頭とした多足生物が嫌いなので、この作品を含め登場させるつもりは一切ありません




