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男ですが魔王に求婚されました。  作者: 月影かぐや
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1話「魔王様登場」



「ええ。はい、はい…分かっておりますとも…え?ええ。はい。承知致しました。」


フードを被っていた人物は誰かと…

記憶が正しければ少し前に「魔王様」と言っていた気がしたが色々と考えると頭が痛くなるので今は置いておこう。

「誰か」と連絡を取り終えると、俺に向かいニコニコとした笑顔を浮かべた。


連絡中から思っていたが変わった人だ。外国人だろうか?少なくとも白髪の日本人…にしては若すぎている。少なくとも20代で通る見た目で整った顔立ちをしている。やや細い目元から覗く瞳の色も海のような綺麗な青だ。かなり尖った耳には小さめなパール?のピアスが飾られていた。人の耳とはあんなに尖るものなのだろうか…いや…まあそうなのだろう。


背丈…は俺より少し高い?かな、20歳と言えどもまだまだ成長期だから安心してくれ。


「あの…?よろしいでしょうか?」


趣味の人間観察を無意識にしてしまっていれば少し困った様な声色に声をかけられた。

慌てて目の前の人物を見れば案の定困惑の笑みを浮かべていた。つい夢中になってしまっていた…申し訳ない。


「…すみません。」


「我々悪魔は珍しいですからね。無理もございません。…さて、行きましょうか?」



ん?今この人はなんと言っただろうか…


「我々悪魔…」


あ…くま?



「おや?ああ、失敬。私としたことが…ご挨拶がまだでしたね。」


目の前の人物はさらにニッコリと微笑む。もとより細目がさらに細くなり、瞳が見えなくなる。


「私、王国に務めております。悪魔補佐官のレヴィアタンと申します。気軽にレヴィとお呼びくださいませ。」


悪魔補佐官…?


「いけない…現在地の説明もまだでしたね。…ここは魔王様の統べる世界、魔界でございます。では、隼人様魔王様がお待ちですので…」



頭の整理も追いつかないままにレヴィアタンことレヴィさんは俺の手を取った。


「すぐですので…」


瞬間小さな水しぶきが見え、次に眩しい光に包まれる。


「っ…」


あまりの眩しさに目をつぶった。


「…よろしいですよ。」


3秒ほどだろうか…いやもっと短いかもしれない。


それはほんの一瞬だったように感じた。


レヴィさんの声に促され、目を開ければ…


そこは薄暗く、赤い絨毯の敷き詰められたとても広い部屋だった。


ゆらゆらと灯るロウソクたち、ずしりと重そうなシャンデリアが目につく。


そして部屋の中心。真っ赤な革張りのソファーに全身黒い服装の男性が腰掛けていた。


男性が立ち上がる。

サラサラと腰ほどまである黒髪が揺れた。彼がこちらに近づいてくる。1歩ごとに絨毯をブーツが踏む微かな音がした。


俺の横にはレヴィさんがニコニコと笑みを浮かべている。

黒ずくめの彼は俺の目の前で止まった。


赤い真紅の瞳が俺を見つめる。


「え…と…」


何も言えない俺は困惑しつつちらりと横目でレヴィさんを見た…が、彼はニコニコのまま変わらない。


助けは期待できなそうだ。


っ…


突然頬にひんやりとしたものが触れた。それが目の前の人物の手だと気づくのに少々時間がかかった。


「目を…逸らすな。」


そのまま冷たい手は俺の輪郭をそっとなぞる。


その声は低く…重く…威圧的だった。


圧は無意識に身体が固まるほどで…


真紅の瞳が揺れる。


「…いいな。」


…何がだろうか。


困惑する俺にククッ…と彼は笑った。


途端に圧が緩む。

落ち着いて見てみれば…彼は驚くほど綺麗な顔立ちをしていた。

透き通るような白い肌、艶やかな黒髪はまるで女性のようだ…しかし服の上からでも分かるほど体つきはたくましく、切れ長な目が凛々しさを表している。

レヴィさんといい、美形が並んでしまうと顔面の強さが眩しい。今の俺は月とすっぽん…というやつなのではないだろうか…平凡&童顔な俺にこの並びは少々苦である。


「よく連れてきた…レヴィアタン。」


「…ありがたきお言葉。」


満足そうに微笑み合うと2人は改めて俺を見た。


「隼人様、ご紹介致します。こちらは我らが魔界を統べる魔王…サタン様でございます。」


サタン…それはよく物語とかゲームとかで聞いた事のある魔王の名前だった。

薄々思っていたがやはりこの人が…


色々疑問はあるもののとりあえず1番気になっていたことを聞いてみた。


「あの…レヴィさんは何で俺の名前を知っているんですか?」


そう…ずっと気になっていた。レヴィさん自身は自己紹介をしてくれたが俺はまだしていないはずだ。しようとした時には既に名前を呼ばれていた。


「それは…」


「それはレヴィアタンが魔界一の占い師だからだ。」


レヴィさんの言葉に重なるように魔王様こと、サタン様が教えてくれた。


「もったいなきお言葉…」


レヴィさんはサタン様に頭を下げると説明をしてくれた。


俺たちの世界でいう天気予報の様に、毎日の出来事を予想し伝えるのがレヴィさんたち魔界の占い師の仕事らしい。レヴィさんは補佐官もしているほどの腕の持ち主であり、大きな事件などを伝えるのが主な仕事なようで…


「ええ。下界での仕事帰りに、魔界に大きな影響を及ぼす人物と出会う。…隼人様の存在は予知しておりました。」


大体の占い師は大まかなことしか予知できないらしいが魔界一の占い師となるとそこまで読めてしまうらしい。


「理由は大体分かりました…でも俺普通の人間ですし…」


「…ええ。」


「魔界に来たのも初めてですし…」


「…存じております。」


「魔界に大きな影響なんてとても…」


「いえ、私の占いは確実です。…いかがですか魔王様。」


不意にサタン様に話を振るレヴィさん。サタン様は小さく息を吐くと俺を見つめた。

…身長差のせいで見下ろされているような感じだが…魔王様190cmくらいあるんじゃないか?ブーツ履いてるし…


「隼人。」


名前を呼ばれる。不思議ともう圧は感じなかった。いや、むしろ温かみ…というか…柔らかい…ような声色に感じた。

なんだが心地いい。


「はい。」


気づけば返事をしていた。そんな俺を見てサタン様は目を細め微笑むと


「俺の妻になれ。」


そう言った。

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