この世界では毎日なにかしら起こるのが当たり前なんですか?
少し遅れたので長めです。
「貴方を、王宮へ招待いたします!」
……はぁ!!?
お、王宮!?
頭が真っ白になった。
ハッとすると、もうそこは馬車の中。
ゆっくり状況を整理する。
まず、ヴィエラがミリスに乗っ取られて暴走。
それはなんとか撃退。
そのあと瀕死のヴィエラを助け、周りの人の記憶を消去。
そうしたら王宮の兵士が来て、私を国王の命で王宮に招待する、と。
……。
いやいやいやいや訳わかんないし!!!
ここまでで私何か王宮に呼び出されるような事した!!?
訳がわからないよ…。
……………
いつのまにか王宮に着いていた。
兵士に引き連れられ、国王の謁見の間へ歩いていく。
「…あのぅ……」
「どうされましたか?」
「私…まだ謁見の仕方とか知らないんですが…」
「ああ、リィ様はまだ6歳でしたね。まあそれでも、やることといえば部屋に入り、赤い絨毯の真ん中の辺りで待機し、国王がお見えになったらひざまづき、胸に右手を当てる、ということでしょうか。あとは、成り行きでなんとかなりますよ」
「…不安しかないんですが」
謁見の間に着くとすぐ、扉が開いた。
「リィ・ファルスフォード様、ご到着です!」
兵士が大きな声で部屋に呼びかけると、中にいた人が一斉にこちらを向く。
ちょっと怖い。
しかしその中には、貴族である父の姿も見えた。
少し安心したが、こちらにウインクしてきたのはちょっとウザい。
突然、ファンファーレが鳴り響く。
「国王、アリシア・エスタシス様、ご到着です!」
慌ててひざまづき、胸に右手を当てる。
頭の方から、カツ、カツとヒールが地面を打つ音が聞こえる。
ああ、緊張してきた……んん!?ヒール!!?
国王って男性じゃないの!?
「表を上げよ」
響いてきたのは、幼女の声。
…どういうこと?ますますわからなくなった。
「…どうした?表上げよと申しているのじゃ。ほれ、早くせんか」
まずい!
すぐに頭をあげる。
するとそこにいるのは…声の通りのまごうことなき幼女。
…なんで幼女が国王なんだ…。
「さて、リィよ。今回は大儀であったな。魔族の討伐、感謝するぞ」
…ああ、そうか…神域魔法のことは隠蔽したけど魔族討伐は忘れてた…。
まあ、バレてしまったのならしょうがない。
「…ありがたき幸せ」
「まあ、そこまで堅苦しくせんでも良い。なんせわしがこういったことにあまり慣れていないものでな…」
「わかりました。本日はどのようなご用件で…」
「ああ、そうじゃったな。今回の魔族討伐の功績を称え、お主に爵位を与えようかと思っての」
ザワザワザワッッ!!
「国王陛下!それは幾ら何でも…第一、実力はあってもリィ殿はまだ6歳!しかも女性ですぞ!そこまでの例外を出してしまうのは私は反対です!!」
「おや、ジーギール伯爵、これは国王直々の命じゃ。それにお主は、単独魔族討伐をできる訳ではなかろう?今回のことがどれだけ凄いことだか、まだはっきりと実感が湧いていないのではないか?」
「なっ…失礼ながら国王陛下、それは陛下も同じではないかと」
「ほう…わしが単独での魔族討伐をできないとでも?」
「……はい」
「試してみるか?」
そういうと、国王、アリシアの雰囲気が変わった。
威圧感がさっきまでとは段違いに膨れ上がり、その眼光がジーギールと呼ばれた伯爵を貫いていた。
「うっ……」
これにはジーギール伯爵も数歩後ずさる。
すると、アリシアが突然指を鳴らした。
パチン…という音とともに、なんと周りの景色が一気に草原に変わった。
「これは…!?」「凄い…」「流石だな……!」
口々にそんな声が上がる。
流石…とはどういうことだろうか。
「あの…すみません」
「はい、何でしょうか?」
近くにいた兵士に聞いてみる。
「アリシア様は…魔法がお得意なのでしょうか?」
「ご存知でないのですか?アリシア様は、[彩色の天才魔女]の異名で国外にも知れ渡っているほどの魔法の実力をお持ちなのですよ」
「…そうだったんですか…ところで彩色というのは?」
「ああ、アリシア様はほぼ全属性の魔法をお使いになられるので、そのような異名になったのですよ」
「全属性!」
国王様ってこんなに凄い人だったんだ…全然知らなかった。
しばらくして、未だにオロオロしているジーギールにアリシアが話しかける。
「どうした?偉そうな口を聞く割には器は随分と小さいようだな?」
「……」
「ほれ、そんなにでかい口を叩くのならば実力で証明して見せよ。それともお主、環境変化にも対応できない小粒であったのか?」
「…黙れ…黙れ黙れ黙れぇぇぇっ!!!ガキの分際で…すぐに地獄に落としてやる!!」
ついに挑発され続けたジーギール伯爵がブチ切れて、アリシアに向けて魔法を展開した。
最早礼儀もなにもあったものではない。
あれは…緑属性…いや、火属性との混合魔法だろうか。
相性の悪い二つの属性を組み合わせられるのは、やはり伯爵である所以なのであろう。
「フハハハ!!どうだ!私の長年の研究の成果!!貴様もろとも消し炭にしてくれるわ!!」
「…それだけか?」
「なんだとぉ!!?」
アリシアは一瞬、哀れむような視線をジーギールに送ると、すぐに魔法を展開した。
しかし、展開したのは初級魔法。
ただのファイアーボールであった。
「…貴様…この私を舐めているのか!?」
「舐めてなどいない、これだけで十分だ」
「っ!…殺す!!」
二つの魔力が衝突する。しかし…
差は歴然であった。
二つの魔力がぶつかると同時に、ジーギールの魔力は一瞬で掻き消され、アリシアのファイアーボールは見事にジーギールに直撃した。
アリシアがゆっくりとジーギールに近づいて行く。
「【ハイヒール】」
するとアリシアは、ジーギールに回復魔法をかけ始めた。
やがて完全に回復が終わると、そこにはガタガタ震えているジーギールがいた。
「…ジーギール。本日を持ってお主の伯爵位を剥奪する」
「……」
「早くここから出て行け!!」
気がつけば、そこは元の謁見の間。
ジーギールは、「ヒッ!」と奇声を上げ、逃げるように去っていった。
バタン、とドアが閉まる音がすると、アリシアから発せられていた威圧感が消えた。
「…すまぬのう、リィ殿。面倒ごとに巻き込んでしまって」
「いえ、滅相もございません…」
「さて、なにがともあれお主は今日から爵位持ちの貴族じゃ。これからはリィ・ファルスフォード子爵として、この国の発展に尽力してもらいたいが、良いか?」
「…精一杯、お役目を果たさせていただきます」
周りから、拍手が沸き起こる。
史上最年少、しかも女性ではじめての爵位持ちの誕生。
この日は、記念すべき日となった。
「うぅ…リィ……立派になったな…!」
父は、ずっとすすり泣いていた。
……………
謁見の間を出ると、兵士に一枚の紙を渡された。
その内容は、
「リィ、あとで応接室に一人できてほしい。 アリシア・エスタシス」
……。
今度はどんな要件だろうか…。
重い足取りで応接室に向かい、ドアをノックする。
「入れ」
聞こえてきたのは、アリシアの声。
恐る恐る中に入ると、そこにはアリシアただ一人がソファに腰掛けていた。
どんな要件なんでしょう…。




