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〇〇は『深緑に染まりし火山』に行くそうです その13

 モンスター暦、四月十一日の夜は終わり、今は四月の十四日の朝八時。俺はその時までずっとねむっていたそうです。(布団ふとんで)


「……ん? もう朝か。そろそろ起きるか……って、なんか息苦しいな」


 俺がゆっくりと目を開けると案の定、俺の家族(仮)である約三名が俺の体を布団ふとんもしくは抱きまくらわりにしていた。

 つかれていたからなのか、単に俺の近くでるのが好きなのかは分からなかったが、とりあえず起こすことにした。


「おーい、みんな起きろー、朝だぞー」


『…………』


 ダメだ、全然起きる気配がしない。

 まあ、知ってたけど……。

 さて、どうやって起こそうかな……。

 早くしないと、ここから一歩も動けずに一日が終わってしまう。

 そのため、俺は体に力を入れて起き上がろうとした。しかし、そう、うまくはいかなかった。


「ナ、ナオトさん、行かないで……ください」


「ナオ兄、どこにも行かないで……」


『……はむっ』


 俺の両サイドにいるマナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)とシオリ(白髪ロングの獣人ネコ)がそれぞれ俺の耳を甘噛みしてきたからだ。


「……やばいな、これは」


 説明しよう。俺は左耳が一番、敏感びんかんなのである。

 そのため、俺の左側にいるシオリの甘噛あまがみは俺にとっては効果抜群なのである。


「……くっ! おーい、二人とも。もうそのへんでやめて! ほ、ほしいなー」


『あむっ……はむっ……ぺろっ』


 どうやら二人には、やめる気がないらしい。

 はぁ……いったいどうすればいいのかな。

 俺がそう思っていると、今度は俺の顔にへばりついているチエミ(体長十五センチほどの妖精)が俺のひたいめ始めた。

 今日は幼女にめられる日だな。

 というか、誰か早く助けてください。そんな俺に救いの手を差し伸べたのは。


「やぁ、ご主人。ようやく起きたみたいだね。僕が助けてあげるよ」


 突如とつじょとしてあらわれた小柄こがらな体型の持ち主は、水色のひとみと黒髪ベリーショートが特徴的で服装は白いTシャツと水色のショートパンツであった。

 そう、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)である。

 彼女は両手をポケットに入れて、こちらにやってくると、ニコニコと笑いながら、こう言った。


「その代わり、ご主人は僕に何かを差し出さないといけないけどね」


「わ、分かった! 分かったから! みんなをどうにかしてくれ!」


「じゃあ、ご主人の血液『一年分』で手を打とう」


「俺、死んじゃうよ! 確実に死んじゃうよ!」


「うーん、なら、ご主人の肉で手を打とう」


「た、食べないでくださーい!!」


「た、食べないよ!」


「いや、というか、とりあえず助けてくれよ!」


「……はぁ……仕方ないね。じゃあ、ちょっと待っててね」


「い、いったい何をするつもりなんだ?」


「え? 全員を無言の腹パンで起こそうと思ったんだけど、ダメかな?」


「ダメだ! 他のにしてくれ!」


「えー、一番手っ取り早いのにー」


「そんなこと言うなよ。えーっと、とりあえず、マナミとシオリをどうにかしてくれ。チエミはどうにかなるから」


「そうだね。じゃあ、ネコジャラシを持ってくるよ」


「おう……って、えっ? この世界にもあるのか?」


「あるよ、ちょっとヤバイものだけど……」


「え? ヤバイのか? それなら、普通に移動させてくれよ」


「睡眠中の獣人型モンスターチルドレンを無理やり移動させようとすると、この世界で一番(かた)い金属を粘土ねんどみたいにできるっていううわさがあるけど、いいの?」


「ネコジャラシを持ってきてください。お願いします」


「分かった。じゃあ、少し待っててね」


 そう言うと、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)はスタスタとどこかに行ってしまった。ちょっとヤバイ、ネコジャラシってどんなのだろうな。


「ただいまー、持ってきたよ」


「おっ、持ってきたか……って、それは本当にネコジャラシなのか?」


「ネコジャラショクシュ。ネコジャラシと触手しょくしゅが合体というか、ネコジャラシが食虫植物に進化したら、こうなったらしいよ」


「そうなのか? というか、ウネウネ動いてるんですけど」


「くすぐるだけだから、大丈夫……なはずだよ」


「おい。今、はずって言ったよな? 本当に大丈夫なのか?」


 ミサキは、そっぽを向いた。


「バッジもしくはスタンプの数が足りなくて、言うことを聞かないポ〇モンか、お前は」


「試しにやってみようよ、ね?」


「そんなものをこっちに近づけるんじゃない! お、おい、二人とも! 起きろ! 早く起きないと、十八禁認定されちゃうから! 早く、起きてくれええええええええええええ!!」


 その時、二人がようやく目を覚ました。


「うーん……朝ですか? まだねむいですー」


「ナオ兄……おはよう。今日もいい天気……だね」


 目をこすったり、背伸びをしたりしている姿は、まるで本物のねこのようだった。

 女の子座りをしている二人を見ながら、俺はムクリと起き上がると、チエミ(妖精)を俺のひたいからまくらの上に移動させた。


「はぁ、やっと解放されたよ。ミサキ、起こしに来てくれたのは感謝するけど、それはもう持ってくるな。色々とヤバくなるから」


「こちょ、こちょ、こちょ」


「ファッ!! ちょっ! おま!」


 いつ移動したのかは不明だが、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)は、ナオトの目の前にいた。

 彼女は、ニコニコ笑いながら、右手で彼の左耳をくすぐっていた。


「いやー、ご主人の左耳は普通にさわっても、反応するのかなーって思ってさ」


「やめろ! いい加減にしないと! しないと……」


「えへへ、おもしろい反応するねー。これはもうやめられないねー」


「や、やめろよ! ミサキ!」


「……じゃあ、僕のお願いを聞いてくれる?」


「わ、分かった! 分かったから! もう、やめろ!」


「じゃあ……僕を食べて」


「えっ? 何だって?」


「ご主人、聞こえてないフリをしないでよー。ほら、早く口を開けて。もっと激しくしてもいいなら、話は別だけどね」


「……わ、分かった。分かったから。いい加減にしろ」


「おっと、ごめんね。反応がおもしろいから、つい」


 ミサキは俺の左耳から、やっと手を退けてくれた。復活したばっかりなのに、こんなことをされるとはな。いや、それよりも、今は。


「今、息を整えるから少し待ってろよ」


 俺は息を整えてから、口を開けようと思ったが。


「……もう我慢できない。無理やり入れるよ」


「え? ちょっ! 待っ!」


 ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)は、俺の口の中に右手を入れてきた。

 のどの奥の方までミサキの指が到達しているため、息苦しい。

 そんな息苦しさを感じる中、いつ指を切ったのか不明だが、ミサキの血液が俺の中に、流れ込んできた。それと同時に、ミサキが俺の首筋にみついて血を吸い始めたため、体の力が抜けていった。


「……んー! んー!」


「あっ、ごめんね」


 俺がそんな声を出すと、ミサキはやっと我に返り、右手を俺の口から出すと、俺から少し離れた。

 数秒間、ミサキに体をもてあそばれたことは一生忘れないだろう。ボクっ、怖い。


「はぁ……はぁ……お、お前、朝から、なに……やってんだよ」


「何って、僕はただ、部分契約をしただけだよ?」


「ぶ、部分契約?」


「うん、そうだよ。僕とご主人はまだ仮契約だったから、今のままだとこれから先、困ったことがあったら対処しにくいのさ」


「もう少し分かるように言ってくれないか? 今、起きたばっかりだから頭が回らなくてさ」


「うーん、そうだね。まあ、要するに僕とご主人の関係を進展させて、ご主人が部分的に僕の力を使えるようにしたってことだよ」


「お前の力を? それはいったい、どういうものなんだ?」


「まあ、あれだよ。僕の力の一部を身にまとって戦えるようになったってことだよ」


「……えっ? それって、もしかして」


「僕自身が、ご主人を守れるようになったってことだよ」


「……えーっと、つまり、俺は聖衣(ク〇ス)みたいな物をまとって戦えるようになったってことか?」


「うん、そうだよ」


「すごいな! おい! どうしてもっと早くしてくれなかったんだよ!」


 俺は立ち上がってガッツポーズをしたあと、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)をギュッと抱きしめると、彼女の頭をで始めた。


「ありがとな! ミサキ! これからもよろしく頼むぞ!」


 ミサキは、俺を抱きしめ返しながら。


「うん、これからもよろしくね。ご主人」


 どこか嬉しそうに、俺にそう言った。


「ナオ兄、ごはんだよー……って、お楽しみだったかな?」


 いつのまにか、ピンク色のエプロンを着たシオリ(白髪ロングの獣人ネコ)が、こちらを見ていたため、俺たちはパッと離れた。


「い、いや、別になんでもないぞ? なぁ? ミサキ」


「ご、ご主人の言う通りだよ。僕はただ、ご主人と話をしていただけだよ」


 俺たちが苦笑くしょうしていると、シオリが。


「抱きしめ合って話してたって正直に言えない人たちには、朝ごはんを食べさせるわけにはいかない」


 結局、俺たちは本当のことを言わざるを得なくなってしまった。

 やれやれシオリにはかなわないな。

 俺たちはシオリに真実を話すと朝ごはんを食べ始めた。

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