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〇〇は『深緑に染まりし火山』に行くそうです その7

「えっ? あたしがトドメをしていいのか?」


 ナオトとカオリ(ゾンビ)は走りながら、作戦会議をしている。


「ああ、そうだ。この熊の話によると、ベルモスは相当な実力者だ。だから、最後はお前の固有武装が頼りだ」


「でも、さっき出せなかったし……あたしにできるかどうか……」


「これから始まる戦いで生き残ったら、お前は俺に一つ好きなことをしてもらえる権利を得ることができると言ったらどうする?」


「……あー! 分かったよ! とにかくやればいいんだろう! やれば! その代わり、死ぬかもしれないんだぜ?」


「その心配はないさ」


「なんで、そこまで言い切れるんだよ」


「……それはな。お前は、ここぞという時に力を発揮できるすごいやつだからだよ」


「そ、そうか。マ、マスターはズルいな」


「ん? 何がズルいんだ?」


「……なんでもない! 早く行くぞ! マスター!」


「ああ、そうだな!」


 *


 そんな感じで頂上に着いたため、カオリ(ゾンビ)は、ずっとどんな固有武装がいいのか悩んでいた。剣、槍、ハンマー、クナイ、ムチ、弓矢……どれもピンとこない。

 ちなみに自分が好きな武器はない。

 今までずっと、自分のこぶしで戦ってきたからだ。

 固有武装はその名の通り武器だが、道具を持って戦うことなど彼女には一切できない。

 ではどうすればいいのか? その答えはなかなか出ないし、ナオトの体がいつまでつかも分からない。

 故に彼女はあせりを感じていた。


「あたしは今まで何一つ自分のことを理解しようとしなかった。けど、今はそんなことでウジウジしている場合じゃねえんだよ!」


 その声を聞いたナオトは、こう言った。


「カオリ! お前のとなりにいるやつは凄腕の暗殺者だ! だから、武器のことはそいつにけ! あと、お前は頭より体を使え!!」


「マスターはあいつと戦いながら、あたしのことを考えてくれているのか? いや、違う。マスターはあたしを生かそうと必死なんだ」


「……そうだ」


 突然、名取なとりが口を開くとカオリは名取の方に目を向けた。


「お前は、ナオトに生かされている。だから、お前は恩返しをしろ……それが、お前の役目だ」


「じゃあ、教えてくれよ! あたしにピッタリな武器ってないのか?」


「……お前にぴったりな武器か……なら、手甲てっこうなんてどうだ?」


「な、なんだそりゃ? 石の名前か?」


「それは鉄鉱石てっこうせきだ。まあ、簡単に言うと手の甲からひじの手前くらいまである装身具だ」


「それって武器なんだよな? 手に持ったりしないのか?」


「腕に装着して使うものだから、持つことはできない。まあ、これはよっぽどのケンカ好きか、なぐるのが好きなやつしか使わない。他に使うとしたら防御くらいだな」


「お前、武器のことになると、よくしゃべるんだな」


「武器のことなら、大抵たいていのことは知っている。だから、会話がはずむ。ただそれだけだ」


「そうか。でも、サンキューな! おかげでイメージできたぜ!」


「そうか。なら、早くけ! 手始めに自分の大切なものを救ってみせろ!」


「おう! 任せとけ!」


 カオリ(ゾンビ)は目を閉じると同時に深呼吸をすると、意識を集中させた。

 自分の体の中を流れる血や魔力の循環率を上げながら、自分が欲しい武器を具体的にイメージした。

 ここは火山。深緑におおわれているが、この下には真っ赤なマグマが今にも吹き出しそうになっている。

 あたしはなぐることしかできない。だけど、それは裏を返せばなぐることはできるということだ。おのれこぶしに力を込めて思いっきり解き放つ。

 それ以外の戦闘スタイルは、あたしにはできない。なら、あたしはそれを貫き通すだけだ!

 カオリ(ゾンビ)は両拳を天にかかげると、天に向かってえた。


が固有武装よ! 今こそわれに全ての敵を打ち倒せる力を与え給えええええええええ!!」


 彼女はそう言うと、両拳りょうけんを地面に叩きつけた。

 その時、カオリ(ゾンビ)の両腕にマグマのようなものがい上がってきた。

 それは両肘りょうひじの手前で止まると手甲になった。

 カオリ(ゾンビ)は、ガンッとこぶし同士を合わせると、こう言った。


「なるほど、これがあたしの……」


 ナオトはベルモスのすきを突くと、カオリ(ゾンビ)の耳元で、その固有武装にふさわしい名前をささやいた。

 ナオトは、そのあとすぐに戦闘を再開したが、カオリ(ゾンビ)は、こう言った。


「さすがは、あたしの見込んだマスターだ! よーし! それじゃあ、始めようか!」


 カオリ(ゾンビ)は走り出した。

 ナオトはタイミングよく後退こうたいすると、カオリ(ゾンビ)にバトンタッチした。


「固有武装……『火山の力を司りし手甲(ボルケーノ・ナックル)』のすごさをその身に叩き込んでやるぜ!」


「倒しがいがあるやつだとは思ってたけど、まさかこのタイミングで固有武装を手に入れるとはね……。君はいったい何なの?」


 カオリ(ゾンビ)は、お互いの固有武装が衝突し、均衡きんこうを保っている時に、こう言った。


「あたしはゾンビ型モンスターチルドレン製造番号(ナンバー) 一のカオリだ! よーく、覚えとけよ! ベルモス!!」


「私とまともに遊べるやつは君で三人目だよ! カオリ!!」


「そりゃどうも。じゃあ、始めようぜ」


「そうだね、始めるとしよう」


『ここからが本当の勝負だ!!』


 こうして、ベルモスとカオリの戦いが始まったのであった。

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