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〇〇は『家族会議』をするそうです その3

 どれくらいねむっていたのか思い出せない。

 うーん、なんかずいぶんと長い間、ねむっていた気がするんだよな……。

 確かコユリの固有魔法である『反闇の閃光(アンチダークネス)』で俺とコユリ以外の時を止めた後に、お袋が来て、色々あってたんだっけか?

 うーん、二時間くらいはてる気がするから、そろそろ起きるか。

 俺がゆっくりと目を開けるとそこには……。


「……マスター……好き……です」


 寝言ねごとでそんなことを言っているコユリ(本物の天使)がいた。


「コユリの寝顔って……すごく……かわいいな」


 俺は思わず、そんなことを言っていた。

 その直後、自分が誤解されるようなことを言ってしまったことに気づいた。

 そのため、俺は自分のほほをつねった。


「俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない」


 ブツブツと同じことを言っているとコユリが、こう言った。


「マスターは、どんな人が……タイプなんですか?」


 本当に寝言なのかと思いながらも、俺は独り言を言う感じで、それに答えた。


「そうだな……あえて言うなら、一緒にいると幸せな気持ちになれる人となら結婚したい……かな?」


 コユリは俺の背中にうでを回しながら、こう言った。


「私は……それに……当てはまりますか?」


 起きていると分かっていても、俺は真剣に答える。(独り言を言う感じで)


「コユリだけじゃなくて、うちにいる家族全員が今のところは当てはまる……かな?」


 コユリは俺の首筋に《キス》をし、こちらに目線を合わせながら目を開けると微笑ほほえみを浮かべながら、こう言った。


「それでも私は他の誰よりもあなたのことを愛しています」


 身長『百三十五センチ』の少女の口から、そんなセリフが出るとは思わなかったが、俺は静かにコユリの背中にうでを回した。


「そんなセリフ、俺にはもったいないよ。それは、お前が本当に好きな相手に言ってやれ」


 コユリは首を横に振ると、こう言った。


「あなた以外に、私がこの世に存在し続ける理由がありません。ですから……」


「今の俺には、みんなが大事なんだ。だから、俺の気持ちの整理がつくまでは今の関係のままがいい。それに」


「それに?」


「俺は女性との接し方はよく分からない」


「そうなのですか? 私が見た限りでは、とてもそのようには見えませんが?」


「いや、事実だ。年上より年下から好かれることの方が多かったせいで、俺は年上の女性とどうやって話せばいいのか分からない。だから、お前が成長して大人になった時、俺はお前との関係に戸惑とまどうかもしれない。だから……」


「いやです」


「えっ?」


「例え、あなたが私を嫌いになったとしても、私はいつまでも、あなたのそばにいます」


「でも、俺なんかのどこか……」


 コユリは左手の人差し指で俺の口にれると「それ以上は言わなくていいです」というサインを出した。

 そのあと、彼女はこう言った。


「好きだという気持ちに理由はりません。私はマスターと出会ったあの日のことを今でも覚えています。あなたを殺そうとしていた私を道具ではなく家族としてむかえてくれた時のマスターのぬくもりは今でも私の一番の宝物です。ですから、自分なんて……と考えるのはやめてください。あなたは私たちの自慢じまんのマスターなのですから……って、マスター、聞いていますか?」


 俺は、いつの間にか流れていた涙を手できながら、こう言った。


「いや、気にしないでくれ。目にゴミが入っただけだから」


「そ、そうですか。なら、いいのですが」


 ああ、この子はこんなにも真っ直ぐに思いを伝えてくれているのに俺は……!

 でも、今はクヨクヨしていても仕方ないよな。今の俺にできることをしよう。

 俺にはそれしかできないが逆に考えれば、俺にはそれができる。

 だから、こんなところで立ち止まってなんかいられない!

 俺は、ゆっくりと起き上がると、コユリにこう言った。


「コユリ、ありがとう。お前のおかげで元気になったよ」


 コユリは「ふふふ」と笑いながら起き上がると、こう言った。


「それは良かったです。やはり元気なマスターはとても可愛いです」


 俺はコユリの頭をでながら、こう言った。


「そうかな? でも、ありがとう。これからもよろしく頼むぞ?」


 コユリは微笑ほほえみを浮かべながら、こう言った。


「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」


 ____その後、コユリ(本物の天使)に固有魔法を解除させた。

 これにより、ミノリ(吸血鬼)が主催しゅさいの『家族会議』を再開(俺とコユリにとっては)することになった。


 *


 同時刻。『はじまりのまち』。


「えっと、ここは……どこだろう」


 見慣れない風景、知らない人たち、知らない空、知らない空気。

 どうやら、彼女もこの世界に導かれてしまったようだ。


「えっと、黒いレディースのスーツを着た後、面接会場に行く途中に道に迷って……気が付いたら、ここに迷いこんでいた……って、ことだよね?」


 彼女の名は『坂井さかい 陽代里ひより』。

 黒髪ショートヘアと黒いひとみと黒縁眼鏡と真っ白なはだが特徴的で、なおかつ小柄こがらせている。

 ちなみに、ナオトと同じ高校に通っていた元同級生である。

 そんな彼女は絶賛ぜっさん、就職活動中であった。

 だが、彼女には秘密がある。あの高校の同級生と先生以外に知られてはいけない秘密である。


「あっ、そうだ! こういう時は服装からって、誰かが言ってたよね! えーっと、まずは周りの人と服装を合わせないといけないよね! よーし!」


 彼女は、そう言うと前に進み出した。

 文字はなんとなく理解できたため、どれがどういう店なのかは理解できた。


「ごめんくださーい。誰かいませんかー?」


 彼女は服屋さんらしき看板がある店の木製のとびらを開けると、誰かいないか店内を見回した。すると。


「おっ、なんだい、見ない顔だね。あんた、どっから来たの?」


『マ○オ』みたいな黒いひげやした、おじさんが店の奥から出てきた。


「あっ! えっと、私はですね」


「ああ、無理に言わなくてもいいさ。で? 今日は、何を買いに来たんだ?」


 彼女は自分の目的を脳内で整理したのち、こう言った。


「えっと、新しい服を買おうと思いまして」


「はははは、たしかに、その格好かっこうのままじゃ、せっかくの美人が台無しだな」


 彼女はほほを赤く染めながら、こう言った。


「い、いえ! 私なんて、そんなに美人じゃ……」


「まあまあ、ここはだまされたと思って、うちの娘に任せてくれないか?」


「む、娘さんがいるのですか?」


「ああ、いるとも。うちの自慢の娘だ。おーい、久しぶりに美人なお客様が来られたぞー!」


 おじさんが店の奥に向かって娘さんを呼ぶと、ドタドタとさわがしい音が聞こえた。


「あっ! 本当だ! すっごい美人!」


 そんな元気な声を出しながら現れたのは、十代前半くらいの茶髪ショートヘアが特徴的な美少女だった。彼女はその場に現れると同時に、ヒヨリの周りを色んな角度で見始めた。


「えっと、この子はいったい何をしているのですか?」


「すまないね、娘は美人と聞くと着飾りたくなる性格たちなんだよ」


「いえ、それは別にいいのですが……」


「ねえ! お姉さん!」


「は、はい、なんでしょうか?」


 少女は目を輝かせながら、ヒヨリの顔を見た。


「今日入荷したてで、しかもお姉さんにぴったりな服があるんだけど、着てもらっていい?」


「えっ、あっ、はい。この世界の……このまちの人たちみたいな格好かっこうができれば、なんでもいいです」


「そう! じゃあ、こっちに来て! あっ! お父さんはのぞいちゃダメだからね!」


「そんなことは分かってるよ。とにかく今はお客さんを」


「ほら、こっちよ! 早く早く!」


「人の話を最後まで聞かないのは相変わらずだな、まったく」


 ヒヨリは少女に言われるがまま試着室へと案内された。

 その後、少女は嬉しそうに彼女にその服を着せた。

 ____十分後……。


「もう出てきていいわよ!」


「はい、では参ります」


 ヒヨリはそう言いながら、試着室を出た。

 ヒヨリがまとったのは『銀色の手甲てっこう』と、おへその少し上ぐらいまでしかない通気性があるのにけない『半袖はんそでの黒い服』と『茶色のショートパンツ』と革でできたブーツだった。

 つまり、ヒヨリはファンタジー世界でいうところの武闘家ぶとうかのような格好かっこうをしているのである。


「どう……でしょうか?」


 少女は目を輝かせながら、こう言った。


「うんうん! よく似合ってるよ! お姉さんのスタイルが良かったから、すぐにこれだ! って思ったわ!」


「でも、その格好かっこうで戦闘になったら眼鏡めがねは邪魔になるんじゃないか?」


 おじさんがそう言うと、ヒヨリは、こう言った。


「いえ、これはいざという時と、お風呂に入る時以外は外しちゃいけないんです」


「そ、そうかい。なら、仕方ないな。それじゃあ」


「今回は、ただで結構けっこうよ!」


 少女は右手の親指を立てながら元気よく、そう言った。


「何を言っとるんだ! こっちは商売なんだぞ!」


「そ、そうですよ! それに私も気持ちがよくありません!」


「いいえ! 私はその服以上の価値があるものを見られたから、それで十分よ!」


「本当に、それでいいんですか?」


「ええ! もちろん!」


「娘さんはこう言っていますが……どうしますか?」


 おじさんはめ息をくと、こう言った。


「分かったよ。今回は、それでいい」


「やったー! よかったね! お姉さん!」


「は、はい」


 少女は、そう言いながら彼女の両手をブンブンと上下に動かした。


「……ただし、店の外にいるやつらを追っ払ってくれたらな?」


「えっ? それって、どういう……」


 その時、店のとびらをドンドンドンとたたものたちがいた。

 どうやら、外にいるやつらをたおさなければならないらしい。

 ヒヨリは、やれやれと思いながら、こう言った。


「分かりました。では外にいる人たちをたおしたら、お代は、なしということでよろしいですね?」


 おじさんは、ニヤリと笑うと、こう言った。


「ああ、よろしく頼むぞ」


 少女が不安をいだきながら、自分を見つめていることに気づいたヒヨリは少女の頭を優しく撫でた。


「大丈夫。私はこう見えて、結構強いですから。あっ、そうだ。少しの間、この眼鏡めがねを預かってもらってもいいですか?」


 ヒヨリは眼鏡めがねを折りたたんだ状態で少女に渡そうとした。

 しかし、少女はその前にこう言った。


「私が外してあげるから、じっとしてて」


「そう。なら、お願い」


「うん!」


 少女は、ヒヨリから眼鏡を外して折りたたむと、両手で大事そうに持ってから笑顔で「いってらっしゃい」と言った。


「私が十分以内に帰って来なかったら、このまちから逃げるよう、まちの人たちに伝えてください」


 おじさんは、ひどくおどろいた様子で、こう言った。


「それはいったいどういうことだ! 説明しろ!」


 その直後、ヒヨリは静かに、こう言った。


「よろしくお願いします」


 彼女は、それだけ言うと店をあとにした。

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