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〇〇は寄り道をするそうです その10

【チロコ】(チートでロリ巨乳の狐の巫女)は、地面にキスしているように見えるナオトの体を横切ると、ジリジリとシズク(ドッペルゲンガー)とチエミ(体長十五センチほどの妖精)の方にせまっていった。

 彼女は、シズクの固有魔法『紫影製の立方体(シャドーキューブ)』の中にいる。

 シズクは彼女の力を先ほどの戦いでいやというほど理解した。

 ゆえに、彼女にとってこんなものは豆腐とうふのように一瞬で破壊できることも分かっていた。

 だが、シズクはまだあきらめていなかった。ナオトがチエミを呼んで、固有魔法『選手強制交代バトンタッチ』を使うよう指示しなければ、自分は今、ここにいないからだ。

 ナオトを助けようと彼女の相手をしたのに、逆に助けられてしまった。

 それはシズクにとって、大きな失態しったいだった。

 守ろうとしたものに守られてしまったのだから。


「さて、次はおぬしの番じゃ。覚悟せい」


 立方体を内側からこぶしで破壊した直後、不気味な笑みを浮かべながら、こちらに近づいてくる彼女に対して、シズクは歯を食いしばりながら、こう言った。


「それは、こちらのセリフ。今度こそ、貴方あなたを倒す!」


「ふっふっふ……先ほどの戦いを見ていなかったのか? お主の大切な存在が、無様ぶざまに死んでいく様を」


「違う! ナオトは貴方あなたに負けたりなんかしない! 今は少し休んでいるだけ!!」


わらわがやつの腹に大穴をけたことを忘れたのか? あれが明らかに致命傷ちめいしょうだったことはお主とて分かっているだろう?」


「……うるさい! 貴方あなたにナオトの何が分かるの!」


【チロコ】は真剣な表情を浮かべながら、こう言った。


「ああ、分からぬよ。お主が人間ごときにそこまで執着するのかも、やつがお主を守ろうとしたのかも」


 シズクは、【チロコ】をにらみながら、こう言った。


「……もういい。とにかく私は貴方あなたを絶対に許さないし、許す気もない。だけど、死に際にナオトがどんなにいい人間であるかを耳元で囁いてあげる!」


「ほう……ならば、わらわもそろそろ本気になるとするかの」


 チエミ(体長十五センチほどの妖精)は、身の危険を感じたため、もう一体の『狐の像』の後ろに身をひそめた。


『大罪……解放!!』


 二人が同時にそれを言った直後、【チロコ】の服は白いワンピースに変わった。

 そして、両者は例の髪の色になった。

白よりも白い髪(トゥルーホワイト)』である。(もちろん、瞳もあかくなった)


「固有武装『魂を狩り・喰らう大鎌(ソウルスラッシャー)』!!」


 シズクは再び例の大鎌おおがまの出すと、クルクルと時計回りに回転しながら、それに合わせて大鎌を器用に回転させ、最後にその切っ先を【チロコ】に向けた。


「今度こそ、貴方あなたる!!」


 彼女に見せたその眼差まなざしと切っ先には間違いなく、殺意が込められていた。

 それに対して【チロコ】は、口が裂けそうなぐらい不気味な笑みを浮かべながら、こう言った。


「仮名の固有武装『能力強制補強の小鈴(プロモーション・ベル)』」


 チリリンと首につけているすずを鳴らすと、彼女から今までとは比べものにならないほどの威圧いあつと殺意と邪気と禍々(まがまが)しさが溢れ始めた。


「お主は、その左目の眼帯をはずさなくても良いのか?」


 シズクは、そのままの体勢たいせいで、こう言った。


「本当に必要な時しか、これは外さない。けど、今はその時じゃないから大丈夫。余計なお世話」


「ほう……わらわもずいぶんとめられたものじゃの。本当に……いいのじゃな?」


「かかって来い! 臆病狐おくびょうぎつね!」


 その言葉を聞いた彼女は、完全に怒った。


「小娘が! 調子に乗るなああああああああああ!」


「はああああああああああああああああああああ!」


 こぶしと大鎌が衝突しているとは思えないほどの火花が飛んでいる。

 お互い、今の自分の全力を出している真っ最中。

 その証拠に、両者は歯を食いしばりながら激しい攻防を繰り返している。

 いったい、彼女らの小さな体のどこにそんな力があるのか、と疑問に思うほどの戦いである。

 その動きはもう少しで『ド〇ゴンボール』のいきにまで達しようとしていた。

 しかし、両者は急に戦闘を中断した。

 両者が感じたとてつもない力圧りきあつに押しつぶされそうになったからだ。


「な、なんじゃ! この波動は!」


「いったい、どこから?」


 両者は辺りを見渡したが、そのようなものはいなかった。

 しかし、その直後、両者はその力の波動の発信源を突き止めた。

 両者が恐る恐る、その方向を見ると。


「なんか楽しそうなことしてるじゃねえか。なあ、俺も混ぜてくれよ。チートでロリ巨乳の狐の巫女……略して、チ・ロ・コ」


 先ほど、チロコに敗北したはずのナオトがこちらに向かって歩み寄ってきていた。


「ナ、ナオト! やっぱり生きてたんだね!」


「あ、あり得ん! 腹にあれほどの大穴をけられたものが生きているわけがない! これは何かの間違いじゃ! まぼろしじゃ!!!」


 シズク(ドッペルゲンガー)は頭に生えたアホ毛をシッポのようにフリフリと動かしながら、喜びをあらわにした。

 それに対して、【チロコ】は目を見開いていた。

 それと同時に、その真実を受け入れられずにいた。そんな彼女らを見ながらナオトは、こう言った。


「さあて、復活して覚醒かくせいした俺の力を見せてやるか!」


 純粋じゅんすいに戦いを楽しむ気でいるものの顔をしていた彼からは迷いなど微塵みじんも感じられなかった。

 腹にいていたはずの大穴はなく、服も元通りになっていた。

 それどころか【チロコ】と戦う前よりも自信に満ちあふれた顔をしていた。


「我が(あるじ)よ。覚醒かくせいしたとはいえ、今の主にこの力を使えるのはせいぜい一分程度だ。それで決着がつかなければ」


「そんなことは分かってるよ『力の中心(センター)』。心配するな、俺はこう見えて時間には気を使つかう方なんだ」


「そうか。なら、いいのだが……」


「もしかして心配してくれてるのか? というか、お前でも不安になる時がなるんだな」


「……まあ、前にも同じようなことがあったからな」


「ん? なんか言ったか?」


「……いや、なんでもない。行くぞ」


「ああ、今度こそ、あいつをぶっ飛ばしてやるよ!」


【チロコ】は『能力強制補強の鈴(プロモーション・ベル)』を三回鳴らして、さらにパワーアップすると、こう言った。


「今度は確実に殺す!!」


 ナオトは余裕よゆうの笑みを浮かべながら、こう言った。


「さて、それは……どうかな?」


「人間のくせに生意気なまいきじゃ! 二度と復活できぬよう粉々(こなごな)にしてやるわあ!」


「それは、やってみないと分からないな」


 その言葉を発したあと、しばらく沈黙ちんもくが続いた。

 そよ風が吹く音や、鳥の鳴き声が聞こえるなか、両者はお互いの出方をうかがっていた……。

 ____十秒程、そのままの体勢だったが、チエミ(体長十五センチほどの妖精)が「クチュン!」と『くしゃみ』をした瞬間に戦いは始まった。


「『大罪の力を封印する鎖トリニティバインドチェイン……紫水晶の形態(アメシスト・モード)』!!」


 今回は、いつもの白髪・赤眼・銀の鎖(十本)が特徴的な姿ではなかった。

 頭の天辺てっぺんから爪先つまさきまで紫水晶でできたよろいを身にまとったからである。

 ちなみにひとみの色は『金色』である。


「『能力強制補強の鈴(プロモーション・ベル)』……『滅びの音色(ラストワン)』!!」


【チロコ】がすずをもう一度鳴らすと【チロコ】のは、より一層いっそうあかかがやき、犬歯は口から出るほど伸びていた。

 彼女が四つんいになった直後、手のつめが五センチほど伸びていた。

 その姿は、獣人ではなく、まさにけものであった。


「なぜそこまで、人間をきらう!」


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す!!」


 彼女のその顔からは、殺意しか伝わってこなかった。


「そうか。なら、俺がお前を止めてやるよ!!」


 両者は大地をると同時に、拳を構えた。


「うおおおおおおおおおお!!」


「ガアアアアアアアアアッ!!」


 ほぼ同時に攻撃を仕掛けたとはいえ、変身してなお、自我じがを保っていたナオトのこぶしの方が彼女より一歩早く彼女のみぞおちに入った。

 それはまさに『みぞおちをえぐる拳(ストマック・ブロー)』であった。


「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!」


 彼女は天を見上げると、神社全域に聞こえるような声を上げながら、暴走する前の姿に戻っていった。

 その様は、何かから解放かいほうされたようにも見えた。

 仰向あおむけでたおれていく【チロコ】を受け止めたナオトは、全身をおおっていた紫水晶のよろいを体の中にしまうと、いつもの白い髪と赤いひとみと十本の銀の鎖をかがやかせながら、こう言った。


「お前の罪は俺が背負う。だから、お前は自由になれ。『悪しき大罪よ、今こそ我が心身にその力を移し、このけがれなきもの今後一切こんごいっさい関わることなく、われと共に生きろ』」


 十本の銀の鎖が【チロコ】の顔以外をミノムシ状態にすると、銀の鎖が白いかがやきをはなち始めた。

 数秒後、封印が完了したため、彼は銀の鎖を体の中にしまった。

 その後、立ち上がろうとした彼の服のそでを【チロコ】はつかんだ。


「おぬしは……わらわを……大切にしてくれるか?」


 弱々しい口調くちょうで伝えてきたその言葉を聞いたナオトは、当たり前だろと言わんばかりの笑みを浮かべながら、こう言った。


「ああ、もちろんだ。今日からお前も俺の家族の一員だ」


「か、ぞく?」


「そうだ、家族だ。吸血鬼、獣人、変身型スライム、天使、妖精、巨大な亀型モンスター、ゾンビ、ドッペルゲンガー、白魔女、湖の主……。うちには色んなやつがいるが、みんないいやつだから、きっとお前のことも受け入れてくれるよ。だから……」


【チロコ】は半開きの目を閉じないように微笑ほほえむと、こう言った。


わらわは少しねむる。おぬしの家族が待つ場所で……起こしてくれ。話は……それからじゃ」


「……ああ、分かった。けど、今は休んでくれ」


「……ああ、そうじゃな……そうさせてもらうとしよう。ではまた後で……会おう……わらわの未来の……婿むこよ」


 俺は【チロコ】が最後の方に何を言っていたのか分からなかったが、起きた時にでもけばいいと思ったため、本来の目的を果たすことにした。

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