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○○は仲間を集めるそうです その1〜2

 俺とミノリ(吸血鬼)は異世界と、この世界を救うための準備をしている。来週にはここを出るそうだ。俺がミノリと共に荷造りをしていた時、ふと気づいたがあった。

 それは……俺とミノリ以外、誰も一緒に行くやつがいないということだ。

 俺はそれが気になったため、とりあえずミノリにこうたずねた。


「なあ、ミノリ」


「なあに? 初めての時は電気を消すか、消さないか? あたしはその……あんたが望むなら消さずに……」


「おい、いきなり何を言っているんだ? 俺はただ、他に連れて行くやつがいないのかどうかをこうとしただけだぞ?」


 それを聞くとミノリ(吸血鬼)は残念そうな顔をした。


「なあんだ、そんなこと気にしてたの? てっきり、あたしたちの将来について考えてたのかと思ったわ」


 この時、俺は謎の違和感に気づいた。

 それは……ミノリの好感度が異常に高いことだ。(俺、限定で)

 俺と面と向かって話したのが、一昨日おとといのはずなのだが……今のミノリからはピンク色のオーラが出ているように見える……。

 いったい、いつからこうなったんだ? と俺が考えていると。


「ねえ、ナオトー。ちゃんとあたしの話、聞いてるー?」


 ミノリが俺の目の前でそう言った。俺は少し驚きつつも、ミノリ(吸血鬼)にこう言った


「あー、うんうん、聞いてる聞いてる。ちょっと考え事をしてただけだ。で? なんだっけ?」


「ほら、やっぱり、聞いてないじゃないの……。あのね、あんたにいろいろと伝えてないことがあったから、今からそれを話そうとしてたのよ」


「な、なるほど……」


 あー、危なかった。危うくミノリを傷つけてしまうところだった……。


「コホン……。えーっと、とりあえず荷造りが終わったらデートに行くわよ! それから……」


「おい、こら、ちょっと待て」


「え? 何? あたし、なんかおかしなこと言った?」


「えーっとだな。今、俺の耳には『荷造りが終わったらデートに行く』と聞こえたのだが……」


「ええ、そうよ。何? あたしに落ち度があるっていうの?」


「どっかで聞いたことあるなー、そのセリフ。じゃなくて! 俺が言いたいのはお前とデートに行く予定なんてないってことだ!」


「え? 親しい男女が、日時を決めて会うこと。または、その約束。それがデートってもんでしょ?」


「いや、まあ、それはそうだが……。その……なんというか、俺はただその言い方をなんとかしてほしいだけであってだな……」


「デートをデートだって言って何が悪いの?」


「いや、だとしても……」


「はっきりしなさいよ。さもないと全身の血を吸い尽くすわよ?」


「……ご、ごめんなさい。許してください」


「……よろしい」


 結局、俺は押し負けてしまった。幼女のしりかれる二十代後半……か。

 まあ、今はそんなことよりも優先すべきことをしよう。俺は自分にそう言い聞かせると、ミノリとの会話を続けた。


「それで? デートっていったい何をするんだ? それが決まってないなら荷造りを再開するぞ」


「そう焦らないで。これから言うから」


「お、おう」


 なんだ? この空気。なんか俺、おかしな事、いたかな? いや、それはさすがに考えすぎか。

 そう自分に言い聞かせるとミノリの言うことを聞き漏らさないようにミノリの方を見た。(ミノリは、いつの間にか筒状に丸めたカレンダーを右手に持っていた)


「えーテステス、今日は重大な発表があります。それは……仲間を集めなければいけないということです」


「しなければならない……か。それで? 俺は何をすればいいんだ?」


「話は最後まで聞きなさい! ここからが本題なんだから!」


 なぜ怒られたかは分からないが、今は話を聞くことにしよう。


「コホン……。それじゃあ、ナオトの役割を発表するわよ! それは……」


「そ、それは……?」


「……あたしとデートしながら仲間を探すことよ!」


 その時のミノリの声は少しはずんでいた。

 しかし、それが分からなくても分かることがあった。それは……何がなんでもミノリは俺とデートがしたいということだった。まあ、あえてそれは言わないが……。


「ミノリ、一つ質問があるんだけど、いいか?」


「なあに? スリーサイズなら、上から……」


「言うな! そういうのは自分の心の奥底おくそこにしまっておけ!」


「はいはい。でも、もし知りたくなったら、こっそりきに来てね?」


「あー、はいはい。そうさせてもらうよ」


 俺は一度、咳払せきばらいをするとこう言った。


「なあ、ミノリ。仲間は一日に何人くらい集めればいいんだ?」


「うーんとね、一日に一人でいいわよ。あんまり大人数おおにんずうだと移動しにくいから」


「分かった。じゃあ、仮に俺が仲間になってくれそうなやつを見つけたとする。その時、俺はどうすればいいんだ?」


「その時は、あたしが交渉するから、あんたは物陰にでも隠れてなさい」


「そうか……分かった。じゃあ、最後の質問だ」


「えー? もういいの? もーっと、あたしに頼っていいのよ?」


「また、どこかで聞いた事のあるセリフを……。まあいいか……。ところで玄関の扉の隙間から俺たちのことをずーっと見ているやつは仲間なのか?」


 その時、ミノリはフリーズした。だいたい五秒くらいフリーズした。

 ミノリが玄関の方に目をやると、確かにこちらを見つめる目玉が一つあった。


「…………」


 無言でそれを三秒ほど見つめたミノリは、またフリーズした。今度は十秒くらいフリーズした。

 その後、ようやく我に返ったミノリはこう叫んだ。


「いやああああああああああああああああああ!!」


 耳を塞いでいなければ鼓膜こまくが破れるかもしれないほど、ミノリは大声で叫んだ。

 それに深い意味はない。ただ単に俺とデートができなくなったからだ。

 ちなみに、その目玉の持ち主には、ヒコヒコと動く猫耳がついていた……。


 *


 ミノリ(吸血鬼)の叫び声を聞いてから、どのくらい時間が経っただろうか。

 まあ、せいぜい一〜二分だと思うが、そろそろフリーズしているミノリを元に戻さないと色々進まなくなる。そう色々と……。

 よし、そろそろ元に戻してやるか。俺は心の中でそんなことを考えながら、ミノリの左側に立つと耳元でこうささやいた。


「いつまでもそうしてると俺があの子のものになるかもしれないぞー」


 そう言うとミノリはやっと我に返った。

 そして、俺をギュッと抱きしめながら、こう言った。


「それだけは絶対ダメえええええええええええ!!」


 ミノリ(吸血鬼)は顔を真っ赤にしながら、まるで幼児が自分のおもちゃを取られないようにおもちゃを死守するように強く抱きしめた。

 やれやれ、抱きしめられる俺の身にもなってほしいものだ。

 あと、さっきから扉を少し開けてこちらを見ているやつを早くどうにかしてほしいな。はぁ、仕方ない。俺がなんとかするとしよう。

 俺がその子の方に行こうとすると、ミノリは一瞬でその子の目の前に移動して、勢いよく扉を開けた。


「この泥棒猫! あたしの未来の夫に指一本でも触れたら、あたしの闇の力であんたを地獄に送った後、あたし直々にあんたを『脱獄不可能な(エターナル)灼熱クリムゾン牢獄カオス』にぶちこんで、牢獄ろうごくのかぎをちらつかせながら、あたしの未来の夫に手を出したことを一生後悔させてやるわ! さあ、あたしと一緒に来なさい! 今すぐに!」


 初対面の相手にそこまで言う必要はないんじゃないかなーと思いながら、外に出た……その時、俺は天使と出会った……。


「あ、あの、確かに私はそこにいるお兄さんを見ていましたが、そ、そんな気持ちは全くありません! だ、だからその、誤解されるようなことしちゃってごめんなさい! 私にできることなら何でもしますから、とにかくおうちに入れて下さい……!」


 俺は今、夢でも見ているのか? 天使が、俺の目の前に天使が降臨なさっている。俺は感動のあまり嬉し泣きをしていた。

 こんなことを言われたら、さすがのミノリでも手を引くだろう。

 だが、そう思った俺がバカだった。ミノリはそれを聞くと、ニタリと笑った。

 お、おい、まさか。俺はミノリを止めようとしたがもう遅かった。

 ミノリは、なんらかの力を発動するかのようにいつのまにかあかくなった瞳で俺を見たからだ。

 すると俺は、かなしばり状態になってしまった。その後、ミノリは話を続けた。


「今、何でもするって言ったわよね?」


「え? あっ、うん。そうだけど……」


「じゃあ、今すぐここから消えなさい。けど、その前に今ここで、もう二度とあたしの未来の夫に関わらないと誓いなさい。それができないなら、あんたをここで始末しなくちゃいけないけど、どうする?」


 その子は少し躊躇ためらったが、こう答えた。


「……うん、分かった。それで私があなたにしたことがなかったことになるのなら、私はそれでいいよ」


「そう、じゃあ宣言して。もう二度とあんな事はしません! ……って」


「うん、分かった。言う通りにする」


 その少女が誓いの言葉を言おうとしたとき……。


「ちょっと待ったー!!」


 俺は、その子をミノリの魔の手から救っていた。


「ナ、ナオト!?」


 ミノリは急に出てきた俺に驚いていた。なぜかって? その理由は大きく分けて二つある。

 一つは、俺のかなしばりが解けているという真実(こと)に対して。そして、もうひとつは、俺がその子の味方についたことに対してだ。


「ミノリ、一つ確認するぞ。この子もお前と同じモンスターチルドレンなんだよな?」


 ミノリは反応しなかった。しかし、俺は質問を続けた。


「なあ、ミノリ。どうして、この子にあんなこと言ったんだ?」


 ミノリは黙ったまま何も言おうとしない。


「質問を変えよう。どうしてお前は泣いているんだ?」


 ミノリは小さな体を小刻みに震わせながら泣いていた。

 それから数秒の時が流れたのち、ミノリはようやく口を開いた。


「だ……だって、この子が、ここにいるのは、おかしいし、それに……」


「それに?」


「そ、それにね、その子はあたしがほしいものを持ってるから……」


「ほう、それはいったい何なんだ?」


「……可愛い……妹」


「そうか、そうか。お前は可愛い妹がほしいのか……って、ええ!?」


 俺は慌てて、その子の方を見ると、その子の背後には可愛いらしい真っ白な猫耳が二つあった。

 どうやら二人でここまで来たらしい。二人が姉妹なのは分からない。

 しかし、その子の顔がよく見えなかったのが、なによりも残念だった……。

 えーっと、とりあえず今は、この状況をどうするべきかを考えないといけないな。俺がそれについて考え始めた直後。

 俺はこの状況をなんとかできる方法を思いついた。


「えーっと、ミノリは妹になってくれそうな子がほしい。そして君は俺の部屋に上がりたい。間違いないか?」


 俺がミノリとその子にそうたずねると。


「別にそれでいいわよ」


「は、はい、大丈夫です」


 二人はそう答えた。

 よし、じゃあ、さっそく俺の部屋に上がってもらおう。


「じゃあ、立ち話もなんだし、とりあえず部屋に上がってくれ」


「は、はい、えっと……お、おじゃまします」


「ナオト、あとで血を吸わせなさい」


「それは勘弁してほしいなー」


「ふふふ……冗談よ、早く中に入りましょう」


「あ、ああ、そうだな」


 こうして、なんとか部屋に三人を招き入れることができたのであった。

 先ほどまで泣いていたはずのミノリは、何事もなかったかのようにケロッとしている。

 それにしても、我ながらうまくいったな。だけど、ここからどうするかで状況が一変するかもしれないから、慎重にいくとしよう……。

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