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〇〇は寄り道をするそうです その9

 くそっ! 俺はここで指をくわえて見ていることしかできないのか!

 何か……何かいい方法はないのか!

 その時、俺は思い出した。

 チエミ(体長十五センチほどの妖精)の固有魔法が何なのか知らないことに。

 風使いのチエミなら、この状況を打破できる固有魔法を使えるかもしれない。

 だって、風使いなのだから!

 俺は、一つの可能性のつかみ取るための第一歩として、チエミの名前を神社全域よりも、もっと遠くに聞こえるようにさけんだ。


「来てくれ……チエミーーーーーーーーーーー!!」


 その時、左耳の耳元でこうささやかれた。


「そんな大きな声を出さなくても、私は、ナオトさんのそばにいますよ?」


「うおっ! チ、チエミ! い、いつからそこにいたんだ?」


 いきなり、チエミが登場したため、俺は数センチ飛び上がってしまった。

 俺のその反応を見ると、チエミはクスクスと笑い始めた。


「ナオトさん、私は特別に十五体も作られた妖精型モンスターチルドレンの一体なんですよ? マスターであるナオトさんが生きている限り、私は胃袋の中にだっておともしますよ」


「い、胃袋にはいることがないようにしてもらいたいものだな……」


「そうですね。あっ、ちなみに私は今までナオトさんの髪の中にいましたよ」


「そ、そうか」


 その後、俺は今の状況をチエミに話した。


「……なるほど。つまり、私がまだ使用していない固有魔法が今の状況を打破できる唯一ゆいいつの手段かもしれないということですね?」


「ああ、そういうことだ。なんとかならないか?」


 チエミは小首を傾げながら、こう言った。


「うーん、まあ、ナオトさんが名前を付けてくれるのであれば、もしかすると……」


「なんとかなるんだな! それなら、今すぐ決めてやる! よーし、それじゃあ、さっそく……」


「待ってください。善は急げとは言いますが、急がば回れとも言います。ですから、少し落ち着いてください」


「でも、シズクが……」


 チエミは、俺が最後まで言い終わる前にデコピンをした。


いたっ! な、なにすんだよ!」


 ひたいを手で押さえながらそう言った俺に対して、チエミは真剣な表情でこう言った。


「シズクさんは負けるかもしれない戦いに挑みました。それがどういう意味か分かっていますか?」


「そんなことは、もう分かりきっている。俺を巻き込みたくなかったからだろ? まったく、小さい体で無茶しやがって……」


 その時、チエミは少し怒りながら、こう言った。


「それは、元はと言えば、あなたのせいなんですよ? 子どもは、すぐに誰かのマネをするんですから」


 俺は、チエミの言葉に少々、カチンときた。


「そ、それと今の状況は関係ないだろ!」


 チエミは、こちらを指差しながら、こう言った。


「関係ありますよ。あなたのくさりに封印している大罪の力は、本来なら元の所有者以外は扱うことすらできません。ですが、それをあなたは封印した。これがどういうことか分かりますか?」


 俺が大罪の力を封印できている理由……だと? そんなこと一度も考えたことはなかった。

 単にくさりの力のおかげだと思っていたからだ。

 だとしたら、どうして俺はそれを封印できたんだ?

 俺にそんな力などあるわけが……。


「大罪の力が……いや、元の所有者が俺を信用しているから……か」


 チエミは俺の頭を撫でながら、笑顔でこう答えた。


「よしよし、よくできました! さすがは私のマスターですね。じゃあ、さっそく名前を考えてもらいましょうか」


「ん? あ、ああ、そうだな。えーっと……」


 チエミの態度がガラッと変わったのに一瞬いっしゅん驚いたが、チエミの固有魔法の名前を考えることにした。

 シズクを助けるだけではダメだ。

 今度は俺が【キミコ】(狐の巫女の略)の相手をしないと、またシズクが危ない目にってしまう。

 かといって、立方体に一度入ってから、また出るのは……ちょっときついな。

 こんな時、マナミの『瞬間移動(マジックジャンプ)』が使えたらな。

 その時、俺の頭に稲妻いなづまが落ちた。

 そうか! これならシズクを助けられるし、俺の望みもかなえられるぞ!

 俺は、体感時間わずか二十秒で思いついたその固有魔法の名前をチエミに伝えた。


「チエミ……。今からお前の固有魔法の名前を発表するから、よく聞けよ?」


 チエミは、ニッコリと笑いながら、こう言った。


「はい! いつでもいいですよ! マイマスター!」


 俺は自信にあふれた顔で、こう言った。


「……『選手強制交代バトンタッチ』。それがお前の固有魔法だ!」


 チエミは、ニッコリと笑いながら、こう言った。


「はい! 素敵な名前をつけていただきありがとうございます! それでは早速(さっそく)……『選手強制交代バトンタッチ』!」


 その直後、俺は、いつのまにか立方体の中(天井近く)にた。

 俺は、一瞬いっしゅんあせったが、こう言いながら【キミコ】を空中から攻撃した。


「俺の家族に何してやがる! このロリ巨乳がああああああああああああああ!!」


「なぜだ……。なぜ、お主がここにおるのじゃああああああああああああああああ!!」


【キミコ】はこちらを見ながら、俺のこぶしに自分のこぶしをぶつけた。

 その瞬間、凄まじい風圧が立方体の中にほとばしった。

 しかし、俺はすぐに【キミコ】に吹き飛ばされてしまった。

 空中からの攻撃は高度が高ければ有効打だが、低いとあまり威力がないからだ。

 俺は、うまく受け身をとりながら着地すると、こう叫びながら【キミコ】に再びこぶしを打ち込んだ。


「『大罪の力を封印する鎖トリニティバインドチェイン』!!」


 白き髪と赤いひとみと、背中から飛び出した十本の銀色の鎖が特徴的な姿は大罪の力を封じることができるものあかし


大罪の力を封じる者(トリニティバインダー)』。


 その力で、ミノリ(吸血鬼)とカオリ(ゾンビ)の大罪の力を封印してきた。

 ミノリの大罪は『強欲ごうよく』。

 カオリの大罪は『憤怒ふんぬ』。

 彼は、この二人の大罪をこの身に封印することで二人の命を救ってきた。今回もそれは変わらない。

 彼は全力で走り、そのこぶしを【キミコ】に当てようとしている。

 彼の表情からは迷いなど微塵も感じられず、ただその一撃いちげきをぶつけることしか考えていないかのように見えた。

 歯を食いしばりながら、ただその一撃いちげきに全力を込めるその姿は【主人公ヒーロー】であった。


「くらいやがれ! ロリ巨乳の【キミコ】!!」


「誰がロリ巨乳じゃ! 人間風情(ふぜい)が調子に乗りおって。『カメレオン』と『チーター』、そして『コモドオオトカゲ』の力で、お主を冥府めいふに送ってやるわああああああああ!」


【キミコ】の姿が彼の前から消え失せたかと思うと、立方体の壁や床を【キミコ】が縦横無尽じゅうおうむじんに移動している音が聞こえた。

 俺はその場で急停止すると目を閉じた。

 彼女の動きを認識するためである。

 視覚に頼るのではなく、聴覚に意識を集中して相手の動きだけでなく、呼吸音にも気を配る。

 そうすることで、より確実に相手の動きを知ることができる。


「そこだあああああああああああああああああ!!」


 背後から来ると思った俺は、十本の鎖を一斉いっせいに、その方角に動かした。


「残念……。ハズレじゃ。しかったな、人間」


 その時、俺の腹部に激痛が駆け巡った。

 俺は、いつのまにか吐血とけつしていた。

 その後、ゆっくりと腹部を見ると、大きな穴がいていた。


「センザンコウの鉄壁のよろいとカメレオンの透明化。チーターの足とコモドオオトカゲの猛毒。わらわには今のところ、七つの力があるが、もうすぐ死ぬ運命にあるおぬしには特別に残りの三つの力を教えてやろう」


「好きに……しやがれ」


「では、そうさせてもらおう」


 俺は【キミコ】に背を向けたまま、話を聞くことにした。


「まず、お主の腹にけたその大穴は、何を隠そうゴリラの力によるものじゃ。コモドオオトカゲの猛毒はその後、その穴にらしておいた。だから、どちらにせよ、お主は助からない。まあ、さすがのお主もコウモリの超音波には気づけなかったようじゃな。まあ、コアラの力で眠らされた時点で、おぬしの負けは確定していたがな」


「道理で……当たらない……わけだ。完敗……だな」


「さて、そろそろ一時いっときでもわらわに立ち向かった勇者の名をいておこうかの」


「……ナオトだ。本田ほんだ……直人なおと


「そうか、では、ナオトよ。永遠とわに眠るが良い」


「チートでロリ巨乳なキツネの巫女みこに殺されるとはな」


 俺はひざから倒れた。

 その直前、立方体の外からは聞こえないはずのシズクとチエミの声が……俺の脳内に響いていた。


 *


「久しぶりね、ナオト。会いに来てくれたのは嬉しいけど、もうちょっと早く来れなかったの?」


 横になったまま、俺は答える。


「ここにいるってことは、お前が何かしたってことなのか? サナエ」


「ええ、そうよ。ついでに言うと、貴方あなたが持っている銀の甲羅の機能を停止させているのも私よ」


「何でそんなことしたんだよ。ミサキが俺のために持たせてくれたのに……」


「二人だけの時間を邪魔されたくなかったから、いいの!」


「……お前な」


「それでどうするの? 覚醒かくせいする? それともあきらめて私と暮らす?」


「俺がなんと答えるかを知っている上でいているのか?」


「ええ、そうよ」


「……俺は……戻らなくちゃいけない。ここにずっといたら留守番をしているミノリたちが不安になるし、目の前で俺がやられるのを目の当たりにしたシズクとチエミを放っておくわけにはいかないから」


「……そう……。じゃあ、とっとと貴方あなたの中にいるくさりの真名を聞き出しなさい。そうしないと戻った時に即死するわよ?」


「分かった。おい、『力の中心(センター)』いるか?」


「我が真名は『アメシスト・ドレッドノート』だ」


はええよ……というか、いつから聞いてたんだ?」


「気にするな。早く戻るぞ、我が(あるじ)よ」


「はいはい……というわけで、またな『サナエ』」


「ええ、また会いましょう。ナオト……」


 こうして俺は『サナエ』がいる『暗黒楽園ダークネスパラダイス』を、あとにした。

 さて……第二ラウンドを始めるとするか!

 次こそ【チロコ】をぶっ飛ばす!

 ※チートでロリ巨乳のきつね巫女みこりゃく

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