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〇〇は寄り道をするそうです その5

 うーん、おかしいな……。ちっとも、前に進んでいる気がしない。

 巨大な鳥居をくぐり、境内に入ったのはいいものの高さ五メートルほどの朱色しゅいろの鳥居がどこまでも続いている一本道を俺たちはかれこれ一時間は歩いている。


「はぁ、はぁ、いつになったら……着くんだよ」


 息を切らしながら苦しそうに進んでいる俺とは違って、『黒影を操る狼(ダークウルフ)』とシズク(ドッペルゲンガー)とルル(白魔女)はスタスタ歩いている。

 す、すげえな、二人とも。まあ、こいつらが人よりもおとっているわけがないよな……。


「ナオト、大丈夫?」


「少し休憩するー?」


「我が(あるじ)よ、少し休息きゅうそくをとるか? それとも、われの背中に乗るか?」


 後ろ歩きをしながら、心配そうな顔でこちらを見つめるみんなの眼差まなざしは、心が痛むものだった。

 何も言わないわけにはいかなかったため、俺は無理やり笑顔を作ると、こう答えた。


「だ、大丈夫だよ。平気へっちゃらだ」


「ナオト、無理してない?」


 シズクは心の中で、立〇さんのセリフだと思った。


「無理してまで行くことないよー」


 ルルは心の中で、立○さんのお父さんのセリフだと思った。


「無理をする必要はないのだぞ? あるじの身に何かあったら元も子もないからな」


 オオカミは心の中で、五期も良かったと思った。


「あ、ありがとう、みんな。それじゃあ、お言葉に甘えて」


 その時、シズクとルルとオオカミがこちらに駆け寄ってきた。

 その直後、シズク(ドッペルゲンガー)が俺の荷物を道の脇に置いた。

 それとほぼ同時に、ルル(白魔女)は俺を無理やり道のド真ん中に寝かせた。

 オオカミは俺の周囲に何かいないか警戒していた。

 その後、荷物を置き終わったシズクは俺の胸にダイブしてきた。

 シズクは嬉しそうにスリスリと、顔を擦り付けている。

 ルルは横になったあと、俺の右手を両手で握ると、俺の右手の人差し指から血を吸い始めた。(ルルは吸血鬼と白魔女のハーフです)

 このタイミングで血を吸うのか……。まあ、少量だから大丈夫だろう。

 こうして、俺は少しだけ休憩することになった。(大の字になって)

 そよ風が吹いている。鳥のさえずりが聞こえる。草木が揺れる音がする。

 俺の右手を握っているルルの体温を感じる。

 俺の胸の上で、スウスウと寝息を立てながら気持ちよさそうに眠っているシズクの心臓の鼓動が伝わってくる。

 オオカミは……心配症だな。

 俺たちがゆっくりできるように、ずっと見張ってくれている。

 はぁ……こんな時間がずっと続けばいいのにな。

 だが、そんな俺の望みは一瞬でかき消された。


「アオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」


 オオカミの雄叫おたけびが聞こえた直後、俺たち三人は一瞬で起き上がった。

 その後、背中を合わせると周囲を見渡し始めた。

 人が気持ちよく休んでる時に来るとか、どんだけ空気が読めないんだよ。まったく……。

 その時、地面から何かが出現した。例えるなら、人の形をした影……『黒影人シャドーマン』。

 カオリ(ゾンビ)と出会った時に遭遇そうぐうした存在で、カオリいわく、『狩人ハンター』というらしい。

 頭数が多い……。ざっと数えて、二十体ってところか。

 これから、お参りをしに行くんだから邪魔するなよ。

 俺がそんなことを考えていると、ルルがこう言った。


「ここは私に任せて、二人は先に行っていいよー」


「いいのか? いつ見ても目の下にクマがある、お前に任せても」


「あははは、ちょっとそれは言いすぎだよー。私はこれでも金属系魔法の専門家なんだよー?」


「だからこそだ。こいつらは弱点が何かわからない上に合体もできる。前は、カオリが大罪の力を解放してくれたおかげでなんとかなったが、今回は……」


 俺が最後まで言い終わる前に、ルルの手が俺の右手の人差し指に触れた。


「な、なんだ? こんな時に。血が足りなかったか?」


 ルルは首を横に振ったあと、こう言った。


「ううん、そんなことないよー。というか、とってもおいしかったよー。まるで、体の中に何か金属製のものが入っているかのような味だったよー」


 俺は一瞬、バレたか? と思った。


「血には鉄分が入ってるから当然だろ」


 俺はそう言って、ごまかした。


「あはははは、だよねー」


「それで? お前にはこの状況をなんとかできる力があるのか?」


 ルルは自信たっぷりの声でこう言った。


「もちろんだよー。任せといてー」


 俺は、フッと笑いながらシズクに合図をした。(俺が合図したら、走れ)


「じゃあ、ここは任せたぞ。ルル」


「うん。またあとでねー」


 ルルの声を聞いたあと、俺は大きく息を吸った。

 その後『狩人ハンター』たちに聞こえる声でこう言った。


「俺は『落〇騎士の英雄譚(キャバルリィ)』の十二話の戦闘シーンが一番好きだああああああああああああああああああああああ!!」


 それは『狩人ハンター』たちにとって、疑問符ぎもんふを浮かべながら静止してしまうぐらいのどうでもいい内容であった。(ファンに謝れ)

 だが、俺はその一瞬の(すき)を無駄にはしなかった。

 その声が辺りに響き渡る前に、俺とシズクは走り出した。


「行くよ! ウーちゃん!」


 シズクは振り返りながら、彼にそう言ったが、オオカミは首を横に振った。俺はシズクの方を見ながら、こう言った。


「シズク! あいつらなら、大丈夫だ! だから、先に進むぞ!!」


「……分かった。私たちは先に行ってるからね!」


 シズクは遠ざかっていく一人と一匹の方を見ながら心配そうな顔をしていたが、やがて前を向いて走り始めた。

 俺はシズクが前を向いたのを確認すると、前を向いて走り始めた。


「さあて、久しぶりに頑張るぞー」


「我が主に挑むというのなら、まずは我らを倒してみせろ!」


 その直後、『狩人ハンター』たちが一斉におそいかかった。


「『金属製の重鎧(メタル・アーマー)』!!」


「『黒影製の大蛇(ダーク・スネーク)』!!」


 ルルは金属製の(よろい)を身にまとった。

黒影を操る狼(ダークウルフ)』は黒影製の大蛇を一体作った。


「それー! 吹っ飛んじゃえー!!」


 ルルのこぶしが『狩人(ハンター)』たちを一体ずつなぐっていく。


れ! かけら一つ残すな!!」


「シャアーーー!!」


 体長約十五メートルの大蛇が『狩人ハンター』たちを次々にらっていく。


「ここから先は絶対に行かせないよー」


「生きて帰れると思うなよ……まわしきものどもよ!」


 こうして『狩人ハンター』たちは一掃いっそうされていった……。

 ミイラ取りがミイラになる、ではなく『狩人ハンター』が獲物えものに狩られるである……。

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