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〇〇は寄り道をするそうです その3

「えーっと、どこまで話したっけ?」


「えーっと、ここから一番近い神社に行くことが決定したというところです」


「そうか。なら、メンバーを決めないといけな……」


 俺が最後まで言い終わる前に、全員が一列横隊で正座をした。


「うわっ! な、なんだ、お前らか。ビックリさせるなよ」


「……それで? あんたは誰を連れて行くの?」


「ミノリ、それを今から決めるから、とりあえず落ち着け」


「はーい……」


 さあて、どうしたものかな?

紫煙しえんの森』の時はマナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)とツキネ(変身型スライム)とチエミ(体長十五センチほどの妖精)だったから、このメンバーは今回、連れて行かないと考えると……いや、でもそう考えるとシオリ(白髪ロングの獣人ネコ)がマナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)と一緒に居られないな。

 さて、どうしたものかな?

 結局、ふりだしに戻ってしまったため、俺はこの手でいくことにした。


「えーっと、じゃあ、ここは平等に、じゃ……」


 俺が最後まで言い終わる前に、全員スッと立ち上がると『じゃんけん』をし始めた。(もちろんチエミも参加)


『最初はグー! じゃーんけーん! ポン!!』


 こ、こいつら、俺が言い終わる前にやりやがった。

 まあ、俺の考えに気づくのはいいことだけどな。


「あたしは認めない! 認めないからー!!」


 ミノリ(吸血鬼)。


「ま、負けてしまいました」


 マナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)。


「残念。今回もナオ兄と冒険できない」


 シオリ(白髪ロングの獣人ネコ)。


「あちゃー、負けてしまいましたね」


 ツキネ(変身型スライム)。


「今回はマスターと冒険できると思ったのに……」


 コユリ(本物の天使)。


「ナオトさんとまた冒険したかったのですが……まあ、今回はゆずりましょう」


 チエミ(体長十五センチほどの妖精)。


「マスター、楽しんでこいよ!」


 カオリ(ゾンビ)。


「やったー! ひとり勝ちだー!」


 シズク(ドッペルゲンガー)。


 勝ったのはドッペルゲンガー型モンスターチルドレン製造番号(ナンバー) 一の『シズク』だった。

 なんと、まさかのひとり勝ちである。(シズク以外、全員グー)

 なんてこった。最低三人は連れて行こうと思ってたのに……。うーん、まあ、いいか。

 彼にも固有武装『魂を狩り・喰らう大鎌(ソウルスラッシャー)』の所有者だし。

 その時、ルル(白魔女)が俺の右腕にしがみついた。


「ん? もしかして、お前も行きたいのか?」


 ルルはこちらの顔を見ながら、こう言った。


「別に私はここにいてもいいんだけどねー。それだと誰がお賽銭箱(さいせんばこ)に入れる、お金を出すのかなーって、思っただけー」


「あっ、そうか。それもそうだな。じゃあ、よろしく頼むぞ、ルル」


「うん、任せといてー」


 その時、今度はシズク(ドッペルゲンガー)が俺の左腕にしがみついた。


「安心して! ナオトは絶対に私が守るから!」


 彼女はそう言いながら、ピョンピョンと飛びねていた。

 それと同時に彼女の細くて長い一本のアホ毛がいつにも増してヒコヒコと動いていた。

 俺はそんな二人の頭を撫でながら、こう言った。


「二人とも頼りにしてるぞ」


「りょうかーい」


「了解しました!」


 その様子をニコニコしながら見ていたミノリ(吸血鬼)の表情は少し怖かった。


「じゃあ、この二人と一緒に……あー、そういえば、なんて神社だったっけ?」


 俺がそう言うと、チエミが俺の前に来て、こう言った。


「あっ、はい。えーっと、『不死身(ふじみ)稲荷(いなり)大社(たいしゃ)』です」


「え? それって、伏見ふしみじゃないのか?」


「いいえ、不死身ふじみです」


「そ、そうか。ありがとう」


 この世界の地名って、誰が考えたんだろう……。

 でもまあ、俺のいた世界にも変わった地名はあったから別にいいか。(オ○ーン湖とか……)

 まあ、とりあえずこの二人と一緒に行くとするかな。

 黒いリュックに必要な物を詰め込み、白い運動靴のひもしばり直してから、ドアノブに手をける。

 さてと……いざ『不死身ふじみ稲荷大社いなりたいしゃ』へ、しゅっぱーつ! と俺は心の中で言いながら、ドアを開けた。


「ごめんください……って、あれ? もしかして、ご主人たちは、これからどこかに行くの?」


 俺がドアを開けると、水色のひとみとベリーショートの黒髪と白いTシャツと水色のショートパンツが特徴的な小柄こがらな幼女『ミサキ』(巨大な亀型モンスターの本体)がいた。


「ああ、今から神社に行くところなんだよ」


「そう。なら、ちょうど良かった。これを渡そうと思ってたから」


 彼女はそう言いながら、ズボンの右ポケットから直径五センチ程の銀色の亀の甲羅こうらの形をした何かを俺に手渡した。


「えーっと、これはいったい……」


「それはね、ご主人が危なくなったら発動するアイテム『主人を助ける銀の甲羅グレイトシルバーシェル』だよ」


「……へえ、便利だな。それで? これの発動条件は何なんだ?」


「これはね、ご主人の命に関わることになると発動するよ」


「……そうか。なら、できるだけ危ない目にわないようにしないといけないな」


「でも、もしもの時は全力で逃げてね? 約束だよ」


「ああ、わかった」


 俺がミサキと指切りをした後、俺はミサキの耳元でこうささやいた。


「もしも俺が夕方までに帰ってこなかったら、ミノリたちと先に次の目的地に行ってくれないか?」


「できるだけ、そうならないようにしてもらいたいな」


「俺もそうならないように祈ってる。だけど……」


「分かったよ。でも、あの子たちがご主人を見捨てるとは思えないけどね」


「まあ、そうかもな……。じゃあ、行ってくる」


「うん、いってらっしゃい」


 俺たちは、ついでにミサキに地上まで転送してもらった。(ありがたい)

 さて、今度こそ冒険の始まりだな! 俺が、はじめの第一歩を踏み出そうとしたその時……。


「ウーちゃん! 出ておいで!」


 シズクが俺の足元のかげに向かってそう叫んだため、俺はそれを中断せざるを得なかった。

 すると、俺の足元の影から『黒影を操る狼(ダークウルフ)』が出現した。

 説明しよう。このオオカミはゾンビ(カオリ)を助けた時についてきたオオカミである。

 ちなみに、絶滅した『ニホンオオカミ』の怨念おんねんから生まれた存在である。

 たいそう人間を恨んでいるらしいが、どういうわけか今はナオトの影に住んでいる。

 そして、なぜかドッペルゲンガーであるシズクと大の仲良しである。

 おいおい、まさかこれに乗って行くなんてことはないよな?

 シズク(ドッペルゲンガー)は自らがウーちゃんと呼ぶ『黒影を操る狼(ダークウルフ)』の背中にまたがると、手招きをしながら「ナオト! ルル! 早く乗って!」と、催促さいそくした。

 俺とルルは顔を見合わせると、コクリとうなずいてから、そのオオカミの背中にまたがった。(俺が一番後ろ。ルルが真ん中)


「しゅっぱーつ! 進行!」


「アオオオオオオオオオオオオオオオオン!!」


 シズクの合図で、ウーちゃんは走り始めた。

 三人が乗っているのにもかかわらず、ものすごいスピードだ。


「こ、こいつ『転○したらスライムだった件』に出てくるオオカミの身体能力を超えてるんじゃないか?」


われの力は、夜にこそ本領を発揮するが、この程度の人数など造作もない」


「へえー、そうなのか……って、お前! しゃべれるのかよおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 その声は、あたり一帯に響き渡った。

 シズク(ドッペルゲンガー)とルル(白魔女)は楽しそうに乗っていたが、俺は生きた心地がしなかった。

 こうして、徒歩で『例の神社』に向かうはずだった俺たち三人はそのオオカミのおかげで、最短でそこに向かうことができたのであった……。

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