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〇〇は『赤き雪原』で…… その2

 よし、そろそろここから出よう。


「えーっと、たしかミノリはあのへんから出ていったな」


 俺が『別次元転送装置ダンボール』から出ようとするとチエミ(体長十五センチほどの妖精)が立ちふさがった。


「ナオトさん! ここから出たらダメです!!」


「それはあれか? ミノリとの約束を破ることになるからか?」


「そうです!!」


「なあ、気づいてるか? チエミ。俺、ミノリの言う通りにするとは言ったけど、約束を守るだなんて一言も言ってないんだよ」


「え?」


「今まで色々と世話になったな。ありがとう、チエミ」


「な、なんでそんなこと言うんですか? そんなの今生こんじょうの別れみたいじゃないですか」


「まあ、そうなるかな。じゃあ、俺もう行くから」


「行かせません!! 大いなる風よ! 今こそわれにその力をお貸しください!! シャープウインド!!」


「『大罪の力を封印する鎖トリニティ・バインドチェイン』」


 俺の背中から出た十本の鎖がまゆとなり、チエミの攻撃を防いだ。その後、鎖はチエミの両目とのどを貫こうとした。


「止まれ」


「こ、怖くなんかないですよ! ですから、早くその鎖で私を貫いてください!!」


「声が震えてるぞ。それにそんなことしなくても、お前はもうその場から一歩も動けないだろ?」


「はい、その通りです。はぁ……どうして私はこんなに弱いのでしょう」


「チエミは弱くなんかないよ。俺の持ってる力が強すぎるだけだ」


 ナオトさん(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)はそう言うと異空間から出ていきました。


 *


四聖獣しせいじゅう』の一体、白虎びゃっこが住んでいる洞窟。


「お前が白虎だな。俺の名前は『本田ほんだ 直人なおと』。今すぐお前と契約したいんだが、どうすればいいかな?」


「仕方ないなー。じゃあ、私に名前を付けて」


「分かった。えーっと、じゃあ……真白ましろなんてどうだ? ほら、お前ってホワイトタイガーより黒い部分少ないからほぼ真っ白だろ? だから、真白だ」


真白ましろかー。いい名前だねー。あっ、そろそろあの人帰ってくるから早くここから離れた方がいいよ」


「そうか。分かった。じゃあ、また後でな。真白ましろ


「うん、またね。ナオト」


 あっ、そういえば鎖の力解放したままだな。うーん、まあ、この方が早く飛べるからいいや。


「……死ぬなよ、ナオト」


 ん? 今、獄立 地獄高校の出席番号十三番『橋本はしもと 龍也たつや』の声が聞こえたような気がしたな。気のせい、かな?


「帰ったぞー」


「おかえりー。ねえ、聞いて聞いて。今さっきここに」


「知ってるよ、ナオトが来たんだろ?」


「え? どうして知ってるの?」


「今さっきすれ違ったからだ」


「へえ、そうなんだー」


 あいつ、体縮んでたな。まあ、あいつのことだからまた厄介ごとに首突っ込んでるんだろうな。


 *


「ん? あれってもしかして……。おーい! ナオトー! 俺だー!」


「ん? あんた、もしかして、親父か!?」


「ああ、そうだ! お前の父親『本田ほんだ たかし』だ!! というか、お前全然成長してないなー!」


「う、うるせえ! 訳あって身長が百三十センチになってるんだよー!!」


「そうかー! まあ、頑張れよー!」


「ああ! というか、久しぶりにおふくろと会って話せよー!」


「ああ! 分かったー!!」


 い、言えなかった……。こっちの世界に新しい家族がいるってこと。まあ、今のところ帰る手段ないから別にいいか。


「えーっと、私、それ結構前から知ってるのよねー。でも、私にはナオちゃんがいるから大丈夫。あなたはそっちで幸せになって」


「あ、アユミ!? お前、いつからそこに!?」


「あなたが空中にいるナオちゃんと話し始める少し前からよ」


「そ、そうか。まあ、とにかく俺はこれからもこっちで暮らすつもりだ。だから」


「安心して。今の私にあなたの妻と娘を殺す気はないから」


「そ、そうか。なら、良かった」


 あれ? 俺、こいつに家族構成言ったっけ?


「じゃあ、またね。あ・な・た♡」


「おう、またな。アユミ」


 あー、死ぬかと思ったー。でも、まあ久しぶりに二人と話せたから良しとしよう。


 *


 モンスターチルドレン育成所……。


「え? ナオトの心臓を増やせば万事解決? あなた、何言ってるの? そんなの不可能よ」


「え? ちょ、それ、どういう意味よ!!」


「まあ、要するにナオトの体内にあるオリジナルの蛇神じゃしんの心臓じゃないとあなたたちモンスターチルドレンは元の人間に戻れないって意味よ」


「そ、そんな! なんで! どうして!!」


「ミノリ、今までありがとう。もうあなたは用済みよ。あー、そういえば、あなたのベースになった遺伝子は元々用済みのキメラのものだったわね」


「え? 何それ、どういうこと?」


「あなたに説明する必要はないわ。だって、あなたはもうすぐ死ぬのだから」


「させません! 大罪解放!!」


「ツキネ!! あんた、まさか!!」


「今まで黙っててごめんなさい。私、『暴食の姫君』なんです。そしてこの力は敵味方関係なく全てをらい尽くします。ということで、あとのことは頼みます」


「ま、待って! そんなことしたらあんたの体は!!」


「大丈夫です。私、スライムですから」


「ツキネェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!」


 ツキネ(変身型スライム)は膨張し続ける白いスライムになってしまった。それは彼女の言う通り、敵味方関係なく全てを喰らい尽くしていっ……た?


「大丈夫か? ツキネ」


「に、兄さん! どうしてここに!?」


「あー、まあ、なんとなーく俺の力が必要になるだろうなーって思ったから来たんだよ」


「そ、そうなんですか。えっと、私の大罪、封印しちゃったんですか?」


「ああ、鎖の力でばっちり封印したぞ」


「そ、そうですか。ありがとうございます。というか、恥ずかしいですね。兄さんにお姫様抱っこされるのって」


「そうなのか? 俺は別に平気だけど。なあ、ミノリ」


「な、何よ!」


「ツキネを安全な場所まで運んでくれないか?」


いやよ! あたしとの約束を破ったやつなんかの指示になんて絶対従わないわ!!」


「そうか。じゃあ、お願いしよう。お願いします、ミノリ様。ツキネさんを安全な場所まで運んでください」


「ちょ、なんで頭下げてんのよ! というか、その口調気持ち悪いからやめてよ!」


「そうか。じゃあ、頼んだぞ」


「わ、分かったわ」


 俺がツキネをミノリ(吸血鬼)に預けるとミノリは俺にこう言った。


「死んだら承知しないから」


「おう」


 さてと……。


「さぁ、思い出しなさい、ナオト。私に関する記憶を」


 彼女が指をパチンと鳴らすと、俺は彼女に関する記憶を完全に思い出した。


「そうか。そうだよな。俺のファーストキスをささげる相手はあんたしかいないよな。アイ先生」


「あなたはあのお方が生み出した『上尾崎かみおざき あい』という化け物を『上尾うえお あい』という一人の女教師にしてしまった。しかもあなたはそんな私に恋をしてしまった。そして私もあなたに恋をしてしまった。だって、私の手を握っても白くならないんですもの。そんな人が誰かのものになるくらいなら私はこの世界を滅ぼすわ」


「先生は変わらないなー。良くも悪くも高校時代の時からまったく変わってない」


「あなたは少し変わったわね。見た目だけでなく中身も。あー、そうそう、ミノリたちがここに来る前、帝龍王に五帝龍全員ピンピンしてるって報告しておいたわよ」


「五帝龍……懐かしいなー。というか、帝龍王に連絡できるのか」


「できるわよ。どこぞやの誕生石たちと違って」


「へえ、そうなのかー。そういえば誕生石って、元々帝龍王を倒すための力だったな」


「まあ、先代はあなたと違って常に弱気だったからアメシストだけは使わなかったけどね」


「らしいな。えっと、そろそろしてもいいか?」


「何を?」


「言わせるなよ」


「それくらい分かってるわよ。あー、その前にオメガ・レジェンドの行方知りたくなーい?」


「あいつか……。生きていれば多分どこかで修行してるだろうな」


「正解。まあ、もう二度とあなたと戦いたくないって言ってたけど」


「そうなのか? 残念だなー」


「……それじゃあ、そろそろ……する?」


「ああ」


 俺とアイ(白髪ショートの絶世の美幼女)はお互いの顔を見ながら歩み寄る。やっと、この時が来たんだな……。初恋の相手にファーストキスをささげる時が。

 俺とアイが抱き合い、お互いのくちびるを重ねる。その時、俺の両目から涙が出始めた。これは悲しくて泣いているのではない、嬉しくて泣いているのだ。

 初恋の人かつ最愛の人に自分のファーストキスをささげることができたのだから俺は世界一の幸せ者だ。間違いない。というか、もう死んでもいい。


「ねえ、ナオト」


「なんだ? 先生」


「二人きりの時はアイって呼んで」


「分かった。えーっと、じゃあ、呼ぶぞ。……アイ」


「うん、最高。ナオト、だーいすき♡」


「あははは、笑ってる時の顔、すっごくかわいいな」


「むうー! 私、笑ってなくてもかわいいわよ?」


「知ってるよ。で? ラスボスはいったい誰なんだ?」


「私……だったとしたらどうする?」


「秒で降参するよ」


「だろうねー。あっ、もしそれが卒業試験だったらどうする?」


「まあ、全力を出し切るだろうな。勝てる自信はないけど」


「そっか」


 良かった。やっぱりナオトはナオトのままだ。


「えっと、ラスボスは……だよ」


「そうか。ということは、そいつを倒せばアイとアユミはそいつから解放されるんだな」


「うん、そうだよ。えっと、もう準備いい?」


「いや、まだだ。おーい! ブラストー! お前の誕生石ちょっと貸してくれー!!」


「分かったー!!」


「それと玄武げんぶのミサキー! お前とお前の妹のコハルと朱雀すざくのヒバリと青龍せいりゅうのハルキと白虎びゃっこのマシロの力をあとで借りるかもしれないぞー!」


「分かったよ! ご主人!!」


「最後に! モンスターチルドレンとその他大勢の力をあとで借りるかもしれないけど、いいかー?」


『いいよー!!』


「よし、これで準備完了。いつでもいいぞ」


「そう。じゃあ、いってらっしゃい」


 彼女は俺のひたいと両頬にキスをすると、背中を押してくれた。

 さぁて、それじゃあ、やりますか!!

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