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〇〇は『赤き雪原』で最後の材料を手に入れるようです その1

 五月一日……おそらく朝……。


「……ん……朝か……」


 俺は大きな欠伸あくびをしながら体を伸ばした。猫がよくやるアレだ。さてと、朝ごはんを食べに行こうかな。そんなことを考えながら立ち上がった俺に挨拶あいさつしてきたのは白い空間だった。


「……うーんと、ここ、どこだ?」


 俺の目には自分の体の一部とどこまでも広がっている白い空間しか見えていない。窓や出入り口らしきものもないから、ここから出る手段は今のところない。


「おはよう、ナオト。体の調子はどう?」


「おはよう、ミノリ。まあ、普通だな。それよりここはいったいどこなんだ?」


 ミノリ(吸血鬼)は俺の両手を自分の両手で包み込むと、静かにこう言った。


「『別次元転送装置(ダンボール)』の中よ」


「え? そうなのか?」


「ええ、そうよ。驚いた?」


「うん、まあ。というか、広いな、ここ」


「当然よ。ここは異空間なんだから」


「異空間か。なんかSFっぽいな!」


「まあ、そうね。でも、ここは今日から牢屋になるわ」


「え? 牢屋?」


「ええ、そうよ」


「ど、どうして……どうして俺をこんなところに閉じ込めるんだ?」


「そんなの決まってるじゃない。もう二度とどこかの誰かさんがあたしたちにろくな説明もせずに外出しないようにするためよ」


「それは昨日謝っただろ?」


「謝ったら許されると思ってる時点であんたはあたしよりお子様よ」


「そ、そんなこと」


「否定なんてさせないわ! ねえ、ナオト。過去の自分の行いを思い出してみなさいよ。あんた、いつも無茶ばっかりしてるわよね? よく余計なことに首を突っ込んで痛い思いしてるわよね? 指名手配されてるクセにお人好しで面倒見が良くて優しくて甘い……。そんなあんたが傷つくところをもう見たくないのよ! だから、お願い! あたしがいいって言うまでここにいて!!」


「……それはうちにいるメンバー全員が望んでいることなのか?」


「ええ」


「……お前の言う通りにすれば、スムーズに旅を進められるのか?」


「ええ」


「つまり、俺はお荷物ってことか?」


「違うわ! あんたはあたしたちの!」


「一番大切な存在。だから、俺を一番安全な場所に閉じ込めておきたいんだな」


「ええ、そうよ」


「そうか。なら、お前の言う通りにするよ」


「え?」


「それでみんなが幸せになるのなら俺はそれで構わないよ」


「そ、そう」


「よし、この話はもう終わり! ミノリ、朝ごはん持ってきてくれ」


「え? あー、分かったわ。ちょっと待ってて」


「おう」


 彼女は意外そうな表情を浮かべながら箱から出ていった。なるほど。出口がないわけじゃないのか……。

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