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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その155

 キミコ(狐の巫女)が言っていた注意事項はあくまで起こる可能性があることだが、起こらない保証はどこにもない。

 俺は彼女にお礼を言うと二人の元へ向かった。


「マナミ! シオリ! 大丈夫か!」


「な、ナオトさん……体が熱いですー」


「ナオ兄、助けて……。私、燃えちゃう」


 注意事項その一。合体を解くと反動で体温が上がる可能性がある。


「二人とも落ち着け。えっと、とりあえず横になれ」


「ナオトさん、手を……握っていてください」


「ナオ兄、私も」


「ああ、もちろんだ。おい! 誰か氷を持ってきてくれ!」


「ナオト、私に任せて」


「シアン! お前、もしかして氷出せるのか?」


 シアン(擬人化したメスドラゴン)は首を横に振る。


「ううん、出せないよ。でも、水を氷にすることはできるよ」


「そうなのか! よし、じゃあ、今からとにかくたくさん氷を作ってくれ!」


「分かった」


 彼女は台所に向かうと水道の水で氷を作り始めた。


「二人とも何か欲しいものはないか?」


「あ、ありません」


「ないよ」


「そうなのか? 水分補給した方がいいんじゃないか?」


「だい、じょうぶ……です」


「いらない。ナオ兄が……そばにいるだけで……楽になる、から」


 俺がそばにいるだけで辛くなくなるのか。なんか出産に立ち会ってるような気分だな。


「ナオト、たくさん作ったよ。今から風魔法でそっちに送るね」


「ああ! 頼む!」


 俺がそう言うと氷のかたまりがたくさん飛んできた。よしよし、これならなんとかなりそうだな。


「二人とも氷ができたぞ。今からおでこに置いてもいいか?」


「は、はい、大丈夫、です」


「うん……いいよ」


「分かった。じゃあ、置くぞ」


 俺が二人のおでこに氷を置くとそれは一瞬で消滅してしまった。今のは蒸発か? いや、違う。今のは拒絶だ。


「こ、これは……」


 注意事項その二。合体を解くと一時的に体内の魔力が暴走して冷却を拒絶する可能性がある。


「くそ! 熱を下げたいのに二人の体はそれを拒んでいる! どうしてだ! どうしてこんなことに!」


「落ち着いてください。マスター」


「コユリ、お前何かいい方法を知っているのか? もし知っているのなら今すぐ教えてくれ」


 コユリ(本物の天使)は固有魔法で自分と俺以外の時を止めると俺の両肩に手を置いた。


「そんなの簡単ですよ。マスターの魔力を二人に注ぎ込めばいいんです」


「え? それってどういう」


「分かりませんか? マスターの血もしくは白い液体を飲ませればいいんです」


「そうすれば二人は助かるのか?」


「はい。まあ、確実に助かる保証はありませんが」


「そうか。ありがとう、コユリ」


「それは何に対してのお礼ですか?」


「二人を助けられるかもしれない方法を教えてくれたこととみんながパニックにならないように俺とお前とシアンとマナミとシオリ以外の時を止めてくれたこと。そして俺がパニックにならないようにマナミとシオリの時も止めてくれたことに対してだよ」


「マスターのそういうところ大好きです」


「俺も俺が何も言わなくても俺の期待以上のことをしてくれるお前のこと大好きだ」


「そうですか。では、私はこれで失礼します」


「ああ」


 焦るな。焦ると無駄なことをしてしまう。焦るな! 冷静になれ! 俺!! 俺は自分の両頬を叩いて雑念を消すと時が動き始めた二人を助けるために動き始めた。

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