表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

384/420

〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その153

 俺はモンスターチルドレン同士が合体できることを知ってからずっとキミコ(狐の巫女)のことを考えていた。

 彼女は自分以外の獣人型モンスターチルドレンの力(七人分)をその身に宿している。

 うちにいるマナミ(茶髪ショートの獣人ネコ)とシオリ(白髪ロングの獣人ネコ)を倒して吸収すれば完全体になれるが、同じ獣人型モンスターチルドレンであるはずのマナミとシオリが仲良くしているのを見てしまったため完全体になりたいという願望はあっても二人に危害を加える気はすっかり失せてしまった。おそらく、多分、きっと。


「なあ、キミコ。少しいいか?」


「おー、ナオトか。なんだ?」


 あれ? なんかまた人格変わってないか? まあ、いいや。


「えっと、お前はさ、その……獣人型モンスターチルドレンを七人倒してその力を吸収したんだよな?」


「倒したというのは少し違うな。彼女は力が尽きかけていた私たちを救ってくれたのだ」


「え? そうなのか?」


「ああ、そうだ」


「そうか。ということは、お前は……いや、お前たちはマナミとシオリが合体できるようになる前からモンスターチルドレン同士は合体できることを知っていたんだな?」


「まあな。しかし、私たちは今、合体していない。限りなく合体に近い状態なのかもしれないが、そうとは言い切れない。今の状態を別の言葉で表すとしたら融合、同化、共生、憑依、依存、命の共有だな」


「そうか。それでお前たちを追い詰めたのはいったい誰なんだ?」


「分からない。しかし、これだけは分かる。私たちはみな、自分に負けたのだ」


「自分に負けた?」


「ああ、そうだ。ただし、自分のようで自分ではない何かだ。例えるならそう、自分の影と戦っているような感じだ。だから、自分を知っていればどうにかなる。と言いたいところだが、常時体から闇が溢れ出ていたからモンスターチルドレンだろうと何だろうと勝つのは困難だ。正直、あんな後先考えずに体を強化し続けているような命知らずな連中にはもう二度と会いたくないな。しかし、どこか寂しそうなあの表情は今でも忘れられない。まるで誰かに倒してほしそうな目をしていた。まあ、とにかく私たちはそいつらにボコボコにされたんだ。闇に堕ちたモンスターチルドレン……闇堕ちモンスターチルドレンに」


 闇堕ちモンスターチルドレン……か。


「なあ、それってお前たちの心の闇なんじゃないか?」


「何?」


「ほら、心の闇を完全に認知できてるやつって聞いたことないだろ? だから、もしそれを何らかの方法で具現化させていたのなら自分たちのことを熟知していてもおかしくない。それにストレスは幸せを感じていても少なからず発生しているから闇が常時溢れ出ていてもおかしくないと思うぞ」


「なるほど。つまり、あいつらに勝つには」


「そいつらを受け入れるしかない」


「そうか。そうだったのか。ようやく歯に挟まっていた食べカスが取れたような気分だ。感謝する」


「いや、今のはあくまで俺の予想だから必ずしもそうだとは限らないぞ?」


「そうだな。しかし、お前のおかげで謎が少し謎ではなくなった。感謝する」


「えっと、どういたしまして」


「うむ」


 あっ、そういえばどうして獣人型モンスターチルドレンはみんな多重人格者なんだろう。気になるなー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ