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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その146

 固有武装を持っているのは今のところ大罪持ちだけ。ここにいるモンスターチルドレンはみんなナオ兄のことが好き。

 大罪持ちとそうじゃない子の違いってなんだろう。

 うーん、分からないな……。

 私がそんなことを考えているとナオ兄がやってきた。


「シオリー、何してるんだー?」


「あっ、ナオ兄。どうしたの? 服作り飽きちゃったの?」


 シオリ(白髪ロングの獣人ネコ)に悪気はないんだろうけど、少し休憩=飽きたなのか。

 うーん、モンスターチルドレン……いや、シオリのことはまだよく分からないな。まあ、そこがいいんだけど。


「いや、違うよ。ちょっと休憩してるだけだよ」


「そうなんだ。ねえ、ナオ兄」


「ん? なんだ?」


「私とキスして」


「おう……んん!?」


 俺の耳、壊れたのか!?

 というか、シオリってこんなに積極的だったっけ?


「え、えっと、それはどうしてもしなくちゃいけないのか?」


「……嫌なの?」


「いや、嫌じゃないけど」


「じゃあ、しよう」


 うーん、シオリはいつもジト目でトローンとしてるから何考えてるのかよく分からないんだよなー。

 無表情ではないけど、顔の筋肉の動きから気持ちを読み取りづらいんだよなー。


「え、えっと、その……お前は俺が初めてでいいのか?」


「うん」


「後悔しないか?」


「後悔? 初恋の相手とキスして後悔する人なんているの?」


 きょ、今日のシオリは恥ずかしいセリフをバンバン言うな。明日は雨かな?


「えっと、シオリはどうして俺とキスしたいんだ?」


「……? ナオ兄のことが大好きだからだよ」


「いや、それは嬉しいけど。何か目的があるんじゃないか? 愛が欲しいからーとか性欲処理をしてほしいからーとか」


「あっ、そっか。ナオ兄にはまだ言ってなかったね。あのね、私固有武装が欲しいの」


「固有武装……か」


 今日、ミノリ(吸血鬼)の固有武装が暴走したからなー。

 これ以上、固有武装持ちが増えるとちょっと面倒なことになるんだよなー。


「目的は分かった。それで、どうしたら『俺とキスしたい』になるんだ?」


「固有武装は所有者の強い願いや感情に反応して現れる。今のところ、大罪持ちが固有武装を持ってる。暴食だけまだ誰なのか分からないけど、だいたい見当はついてる。多分……」


「あー! それはまだ言うなー! 俺も薄々そうじゃないかなーと思ってるからー!」


「分かった。えっと、つまり固有武装を手に入れるには自分が欲しいものを強くイメージする必要があって、もしそれがなければ自分の欲望を満たせるものが必要。あと、それは多分、物じゃなくて人でもいいと思う」


「なるほど。で、シオリにとってのそれは」


「ナオ兄の初めて」


「なるほど。うん、理解はしたがマジで勘弁してくれ」


「どうして? 私がまだ幼いから?」


「いや、そうじゃなくてな」


「お礼に私の初めてをあげる。これならどう?」


 あっ、今の言い方だと誤解されるかな? うーん、まあ、いいや。


「お前さー、もう少し自分を大切にしろよ。それにそういうのは本当に好きなやつに……」


 シオリが俺に顔をぐいと近づける。

 ち、近い! 目と目でキスしそうなくらい近い!


「私の好きな人はナオ兄だよ。ナオ兄、私のどこが嫌なの?」


「え、えっと、それは……」


 誰かー、助けてくれー。

 いや、たまには自分でなんとかしよう。


「え、えっとな、俺はお前たちを元の人間に戻す薬の材料を集める旅に同行しているんだ。でな、それが終わったら俺とはお別れなんだ。分かるか?」


「私が元の人間に戻ったら、この気持ちもなくなる可能性がある。ナオ兄はそう思ってるんだね?」


「ああ、そうだ。だからさ、今俺なんかに……は、初めてを捧げたらきっと後悔すると思うんだ」


「そっかー。ナオ兄にとって、キスは儀式みたいなものなんだね」


「あ、ああ……」


 ん? キス? え? シオリが言ってた初めてってキスのことだったのか……。あー、なるほど。そっちか。


「じゃあ、今回はこれで許してあげる」


 シオリは俺の両頬とひたいと首筋と両耳に優しくキスをすると、俺をギュッと抱きしめた。


「おやすみなさい、ナオ兄」


「ああ、おやすみ。シオリ」


 その日の夜、俺はシオリと一緒に寝た。

 寝ているシオリはいつもの数倍、数十倍かわいく見えた。服作りは……まあ、ぼちぼちやろう。

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