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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その137

 四月二十六日……朝八時……。


「……おっ、朝か……」


 俺は上体を起こすと大きく背伸びをした。

 あー、よく寝たー。

 えーっと、とりあえず顔を洗おうかなー。

 俺はそんなことを考えながら大きなアクビをした。

 俺がその場で寝ぼけまなここすっていると、部屋のすみに何かがうずくまっているのを発見した。

 なんだ? あの黒いかたまりまったく見覚えがないぞ。

 あんなやつ、うちにいたかな? ま○くろくろ○けの親戚か何かかな?

 俺はそれに触る前に洗面所で顔を洗った。

 寝ぼけていたせいで幻覚を見たのかもしれないと思ったからだ。

 そういえば昨日の夜、俺のとなりで寝ていたはずのミノリ(吸血鬼)の姿がないな。

 ま、まさかな……。

 俺の嫌な予感は見事に的中した。

 杞憂きゆうであってほしかった。

 夢もしくはまぼろしであってほしかった。

 けれど、今まさに寝室で俺の帰りを待っていたかのように俺の目の前に立っているのはミノリ(吸血鬼)だ。

 あかひとみと口を閉じていても見える白いきば以外、彼女の体は黒かった。

 ミノリ(吸血鬼)の体を構成しているあれはいったいなんだ? そんなの見れば分かる。闇だ。漆黒の闇だ。

 いつもミノリ(吸血鬼)が着ている黒いゴスロリ服より黒い。見ていると吸い込まれそうな感じがする。

 背中に生えている翼はおそらくミノリの固有武装。だとしたら、この現象の原因は……。


「おい、ミノリ。昨日、どうして俺に体調が良くないことを報告しなかったんだ? 俺って、そんなに信用できないのか?」


 彼女の象徴である黒髪ツインテールは健在だが、意識はほとんどないようだ。


「はぁ……もういいよ。とりあえず外に行こう。家の中で暴れられたらツキネの仕事が増える」


 ツキネ(変身型スライム)がいなかったら壊れた物の修理やケガの治療ができない。

 お前の存在はとても大きいよ、本当に。


「……おい、ミノリ。俺の声、ちゃんと聞こえてるのか?」


「……」


 反応なしか。仕方ない、外まで連れていこう。

 俺がミノリ(吸血鬼)の手をつかむと俺の手は彼女の闇に吸い込まれてしまった。

 うわあ、これは触ったらダメなやつだな。

 まあ、すぐ再生するから別にいいんだけどな。

 俺は再生した方の手を自分の口元まで動かすと、その手の人差し指の先端を噛んで血を出した。

 その後、彼女にそれを見せた。


「ほーら、お前がいつも吸ってる俺の血だぞー」


「……!」


 おっ、反応した。吸血衝動はちゃんとあるみたいだな。


「ほーら、こっちにおいでー」


「……!」


 俺が指を振ると彼女は一歩ずつ前に進み始めた。

 よしよし、そのままそのまま……。

 俺は彼女を外まで連れ出すと、大空へと飛び立った。


「ミノリー! 何してるんだー? 早く来いよー!」


「……!」


 ミノリ(吸血鬼)はアパートの廊下にヒビが入るくらい強く踏みしめると勢いよく大空へと飛び立った。

 よし、これで俺はミノリ(吸血鬼)のターゲットになったな。

 けど、大変なのはここからだ。早くいつものミノリ(吸血鬼)に戻ってほしいなー。

 残念ながら、まだ服作りは終わりそうにない。

 だから、早く元に戻ってくれ。そして、俺にもっとレクチャーしてくれ。

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