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〇〇は『赤き雪原』に向かうそうです その121

 ミノリ(吸血鬼)の作業部屋。


「ねえ」


「んー?」


「あんた、あたしに何か隠してない?」


「別に隠し事なんかしてないぞー」


 鋭いな。いくらモンスターチルドレンでも表情から他人の思考を読み取ることはできないと思うが。


「ねえ、ナオト。本当のこと言って」


「いや、だから別に何も隠してないって」


「嘘つき。さっきからずっとそわそわしてるわよ」


「そ、そわそわなんかしてねえよ。なあ? チエミ」


 俺が俺の頭の上にいるチエミ(体長十五センチほどの妖精)にそう言うと彼女はこう言った。


「いえ、ミノリさんの言う通りです。さっきからずっとそわそわしています」


「マ、マジか。気がつかなかった」


「そりゃそうよ。あんたは嘘つくの下手なんだから」


 下手ってはっきり言われた。

 なんか落ち込むな。

 まあ、事実なんだが。


「お前に隠し事はできないな」


「当たり前よ。あんたのことはあんた以上に知ってるんだから」


 自称、俺の専門家だもんな、お前は。


「はいはい。えーっと……実は……」


 俺はミノリ(吸血鬼)に部屋に戻る際感じた嫌な気配について話した。


「なるほどね。で? それは今も感じてるの?」


「うん、まあ」


「そう……。もしかしたら不可視の結界の効力が弱まってるのかもしれないわね」


「それはあれか? ミサキが脱皮したからか?」


「まあ、そうね。歯が抜けた時、しばらく脱力感に悩まされたり、違和感を覚える時があるでしょ? あれと似たようなものよ」


「なるほど。だから、ミサキは今眠っているのか」


「まあ、誰かさんのおかげでいつもより負担は減ったでしょうけど」


「そうだな。シオリがいなかったら今頃脱皮できてなかったもんな」


「え? あ、あー、そうね」


 ん? 俺、今なんか変なこと言ったか?

 ナオト、今の誰かさんっていうのはあんたのことよ。というか、あんた以外に考えられないでしょ。


「コホン……ま、まあ、とりあえず今日は交代で見張った方がいいわね。ただし、あんたはミサキとシオリのそばにいてあげなさい。分かった?」


「わ、分かった」


 見張りやりたかったな……とか言ったら怒られそうだからやめとこ。

 その日の夜、ミノリ(吸血鬼)たちは交代で見張りをしていたそうだ。

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